147.攻略の終わり

 僕達は五階層にやってきた。


 想像していた場所と違い五階は砂漠だった。


「暑そうなのに全然暑くないね」


「ダンジョンだからね~、水の中の階層もあって歩けるらしいよ?」


「うん! アーライム帝国にあるラファエルのダンジョンの奥にあるみたいね」


「あれって東帝国にあったのね! いつか行ってみたい」


「その時は案内するよ!」


「私も行きたいです!」


「うん! 皆で行こう!」


 そんな話しをしながら、僕達は一旦ウリエルのダンジョンの攻略を辞めた。


 理由としては、あまりにも学園を離れ過ぎてるのも良くないと思ったからだ。


 セレナお姉ちゃんは生徒会長だから、そろそろ学園に戻らないといけないらしくて、今回の攻略はここまでになった。




 ◇




 アカバネ島の屋敷に戻ると、屋敷で働くようになったメイド長のリーナさんが待っていてくれた。


「クロウ様、お帰りなさいませ」


「ただいまー」


「クロウ様、帰って早々申し訳ありませんが、一つご相談がございます」


「ん? どうしたの?」


「はい、屋敷のメイドを増やしても宜しいですか?」


「屋敷のメイド??」


「はい、これ程広い屋敷です。これからクロウ様のお客様やご家族様も増える事でしょう。そのときに下働きのメイドが少ないと不便をおかけしてしまうかも知れませんから……」


「うん! 分かった! その件はリーナさんに任せてもいい?」


「はいっ、必ずや優秀なメイドを雇います」


「あはは、まぁ僕としてはリーナさんが優秀だから、優秀さよりも元気で一生懸命な人がいいな」


 それを聞いたリーナさんが嬉しそうに笑ってくれた。


「ダグラスさんに相談してくれれば、きっと力になってくれると思うよ!」


「かしこまりました。ダグラス様にご相談させていただきます」


 これで僕の屋敷にもメイドさんが増えるかも知れない。


 今までは商会の従業員達が代わる代わる屋敷の掃除等対応してくれていたけど、屋敷専属のメイドが増えるのもいいのかも知れない。



 リーナさんとそんなやり取りをしている間に、セレナお姉ちゃん達は全員何処かに出かけて行った。


 最近ちょくちょく出掛けているけど、どうしたんだろう?




 ◇




 次の日。


 セレナお姉ちゃんとリサは学園に行ったので、僕とディアナはナターシャお姉ちゃんの所にお邪魔した。


「クロウくん! いらっしゃい!」


 ナターシャお姉ちゃんは、今度のアカバネ祭で発表予定の『アカコレ』用の衣装準備に忙しかった。


 更に『テンツァー踊る者』の皆さんとの演目の練習と忙しい毎日を送っていた。


「ナターシャ姉ちゃん、その服って――まさか――」


 何やら派手な男性用服を僕に見せてきた。


「勿論、クロウくん用だよ!」


 やっぱり――。



 それからナターシャお姉ちゃんに誘われるまま何着もの服に着替えさせられた。


 一緒に来たディアナも一緒に着替えさせられた。


 楽しそうなナターシャお姉ちゃんとディアナの笑顔が見れたから、まあ、いいか!




 ◇




 ナターシャお姉ちゃんから解放された僕はディアナの提案でエドイルラ街の孤児院に遊びに来た。


 多くの子供達が遊んでいたけど、僕達の目的地は一階の厨房だ。


 厨房ではシャル姉ちゃんと数人のお姉ちゃん達が食事を作っている。


「ディアナちゃん! クロウくん!」


 僕達を見かけたシャル姉ちゃんが嬉しそうに笑う。


「今日も手伝いに来たよー」


 そして僕とディアナは料理の準備を手伝った。


 料理は出来ないので、というか今まで料理って、した事なかったね。


 色々皿を準備したり、食材を運んだり手伝った。


 意外とシャル姉ちゃんの料理は上手だ。



 アカバネ商会を経由して孤児院に食材を提供しているので、シスターアングレラからは一緒に昼食を取っても良いと事前に許可を取っていた。


 何回目かの孤児院で昼食だった。


 相変わらずシャル姉ちゃんの料理は美味しかった。




 ◇




 孤児院で昼食を取り、島に戻った僕に珍しいお客様が待っていた。


「オーナー! お久しぶりです!」


「やあ、アヤノさん。最近は新聞隊で頑張ってくれてありがとう!」


 珍しくアヤノさんが面会に来ていた。


 最近は『アカバネ新聞』のために王国内から隣国にも幅広く歩き回ってくれていた。


 危ない時もあるかも知れないから、アヤノさんにはソフィアの分体を付けている。


「実は本日お願いがありまして……」


「珍しいですね! 何でも言ってくださいね!」


 アヤノさんの顔が少し赤くなった。


「えっ……と、その…………」


 もじもじしているアヤノさん。


「旅館を……今日貸し切りで貸して……頂けないでしょうか!!」


 旅館!?


「え? 旅館? 今日は使う人誰もいないのでいいですよ~」


「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!! オーナー!!」


 アヤノさんから物凄く感謝された。


 しかし旅館を貸し切って何するんだろう?




 そんな事を思っていた僕は――


 次の日、まさかの出来事が待ち受けていようとは全く思っていなかった。

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