97.学園アルテミス
グランセイル王国の王都にある学園アルテミス。
大きさも大陸二番目に大きい学園だ。
一番は帝都にある学園で、それに次いで大きい学園となっている。
学園は多く四つに分かれている。
一つ目は職能無しのための『ノービス』校舎。
人数が一番多いので、広さも他の校舎より五倍は大きかった。
しかしノービス校舎の学生はノービスクラスと言われ、その先ある校舎には立ち入る事が許されなかった。
二つ目は戦闘の職能を持った者のための『ナイト』校舎。
ノービスクラスの次いで多いクラスで、多くの戦闘系の職能を持った者達の校舎だ。
三つ目は生産の職能を持った者のための『アルケミスト』校舎。
こちらもナイトクラス同様、生産系の職能を持った者達の校舎だ。
四つ目は『ロード』校舎。
こちらは全ての職能でも取り分け『上級』以上の者達のための校舎だ。
人数が圧倒的に少ないものの設備や与えられる研究室は最高ランクのモノとなっている。
そしてロード校舎には他三クラスの生徒及び、全職員の立ち入りも禁止されている。
これは王国から昔から上級以上の職能を持った生徒を最大限に優遇しているからだ。
『ロード』クラスはそもそも授業自体も存在しない。
彼らは学園で最高の持て成しで自由に過ごす事が出来る。
ナイトクラスやアルケミストクラス、はたまたノービスクラスの授業に参加するも良し、見学も良し、自由に研究するも良し、教員が余っている場合のみ専属の授業を受ける事も可能だ。
現在ロードクラス限定で上級職能を持った二人が教員をしているが、彼らは教員以外の国の職も受け持っているという。
現在生徒はセレナお姉ちゃんのみだ。
上級職能って中々生まれなくて大陸でも十年に数人生まれるかどうからしい。
何故か下級剣士のはずのお兄ちゃん達が上級剣士や中級剣士達にも勝ったせいで、お兄ちゃん達を異例の途中編入させようとしたけど、二人とも辞退して伝説となっているそうだ。
◇
僕は学園アルテミスの制服を身にまとっていた。
「クロウ様、とてもお似合いですよ」
そう言ってくれたのは、他でもないディアナだった。
ディアナは僕の従士として、学園で行動を共にする事になった。
彼女もまた学園アルテミスの制服を着ていた。
膝まであるスカートに、清楚感ある制服に彼女の美しさも相まってとても似合っていた。
「ディアナも凄く似合ってるよ」
そう言うとディアナが少し照れた。
うん、とても可愛い。
「では入学式に参りましょう」
そうして僕とディアナは一緒に学園に向かうのだった。
アカバネ商会から馬車で学園へやってきた。
周りには歩きの生徒達もたくさんいた。
僕のように貴族家から数十人が馬車で登校していた。
初めて学園門を通り抜けた。
こんなに緊張する事なんて初めてかというくらい緊張している。
制服中には冷や汗をかいてしまった。
そんな前に物凄い人だかりが出来ていた。
そしてその中から一人、僕に目掛けて一瞬で走って来た。
「クロウティア!!!」
そう言った彼女は僕に抱き着いた。
「うん、久しぶりお姉ちゃん」
「本当に大きくなったわね、一年見ない間にこんなに大きくなって」
ここ一年で身長も伸び、今ではセレナお姉ちゃんより少し大きくなっていた。
「セレナディア様、お久しぶりです」
「うん! ディアナちゃんも久しぶり! いつもクロウをありがとうね」
「いえいえ」
ディアナも一年ぶりにお姉ちゃんに会って嬉しそうだ。
それから周りの目を気にしながら、お姉ちゃんに先導されて新入生入学式場へ向った。
これから新入生挨拶をしてからそれぞれ試験を受け、今日中にクラス分けにされるらしい。
「それじゃクロウ、ちゃんと試験受けるんだよ? 『ロード』クラスになれば一緒にいられると思うから」
「え! それは頑張らないと!」
そんな話をしながらお姉ちゃんは新入生挨拶のため、いなくなり僕達は案内された会場で待っていた。
数十分後、入学式が始まり、校長先生のありがたい言葉を聞き、校舎やクラスの説明を聞いた。
「それでは、現生徒会長のセレナディア・エクシア様より挨拶がございます」の声がしてセレナお姉ちゃんが登壇した。
遠くから見ると、セレナお姉ちゃんの美しさをより感じる事が出来た。
気がつけばお姉ちゃんはあんな遠いところへ行ってしまったのだとちょっぴり寂しく思えた。
「新入生の皆様、現生徒会長を務めておりますセレナディア・エクシアと申します、皆様も今日から三年間この学園で素晴らしい学業を学べる事でしょう。
しかし、全て良い事ばかりではありません。自分より高みにいる者、自分とは違う身分の者、色んな環境が今までと異なるでしょう。
ですが、我々は学生であり、ここで多くを学べます。その先に明るい未来が待っている事でしょう、どうか他人と自分を比べる事に気を取られず、自分だけの高みを目指し日々学んで頂けたらと願っています、以上生徒会長セレナディアでした」
そんなお姉ちゃんの挨拶に大きな拍手が起こった。
中には涙ぐんでる生徒さんもいた。
王国内唯一の『剣聖』セレナディア・エクシア。
お姉ちゃんは既に国を背負っているように見えた。
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