入学編

91.新しい事業

――前書き――――――――――――――――――――――――――――――――

ここから新しい入学編でございます。

諸事情により歳が少し飛んだりしますがその先の物語を楽しんで頂けたら、

幸いでございます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 今年からアカバネ商会は一つ大きな事業をする事になった。


 それは『手紙』の事業が順調に進んだ事により、次なる挑戦『新聞』だった。


 しかし『新聞』はただ運ぶ物と違い、情報を発信する必要がある。


 なので王都内全土を走り回りつつ、情報を直ぐにモノと出来る人材が必要だった。


 そんな人材がそうそういるはずも……あった。


 いや、居た。


 それがダグラスさん専属護衛役のアヤノさんだ。


 実はアヤノさんの職能『上級忍者』はこういう諜報に一番適した能力を持っている。


 その索敵能力だけでなく、強さもあり、一人で王都内全土を歩き回るには持って来いの人物だった。


 ダグラスさんの推薦もあり、警備隊も充実した事でダグラスさんが動く時は代わりにアレウスさんが護衛になる事になった。


 そしてアヤノさんを始め、アヤノさんの情報をまとめて『記事』をまとめる事に秀でている従業員さん三名で『新聞隊』が出来た。


 常にアヤノさんから送られる情報を他三名の隊員が記事にまとめて『新聞』にしてソフィアちゃんの分体で『複製』して直ぐにアカバネ商会に並ぶ事となった。


 通常の『新聞』より1/100の値段で売り出される事となった。



 創刊号は短いがただで配る事になり、その内容は――。


 『エクシア家、長女セレナディア様の職能開花により、『剣聖』となられる。』と大きく見出しで、細かい内容等が書かれた創刊号が王都内全土に配られる事となった。


 ちなみに、新聞の最上部にはナターシャお姉ちゃんを模している『プラチナエンジェル』もしっかり印字されている。


 その『プラチナエンジェル』印を描く技術を使い、創刊号にはセレナお姉ちゃんが美しく描かれていた。


 これが、アルテナ世界で初の実写絵が描かれ載った新聞の発売である。


 今までの新聞は複製が出来ないので全て手書きなので絵など描けるはずもなかった。


 うちは絵描きさんが一生懸命に描いてくれれば一瞬で複製出来るので大した手間ではないからだ。


 ナターシャお姉ちゃんの『プラチナエンジェル』印を描いてくれた絵描きさんも以前から正従業員となり、好きな絵を好きなだけ描ける今の環境に涙を流しながら感謝していたと聞いた。


 今回セレナお姉ちゃんの誕生日会でその美しさを絵描いたのがそのまま新聞に使われた形だ。


 勿論セレナお姉ちゃんには許可を得ている。




 ◇




 セレナお姉ちゃんの誕生日後、デイお兄ちゃんが学園へ旅立った。


 ライお兄ちゃんの時と違って、デイお兄ちゃんはアカバネ商会を経由して一瞬で王都へ行った。


 ライお兄ちゃんと同じ学園に入って、『兄弟剣士』と有名になった。


 実はこの有名になるにも一つ大きな事があった。


 まずライお兄ちゃんだ。


 僕の補助魔法で既に『上級剣士』と渡り合える程のステータスと稽古経験を積んだお兄ちゃんに相手になる同級生がいなかった。


 同級生に二人もいるという『中級槍士』と『中級戦士』。


 どっちも『中級剣士』と同等の職能だ。


 その彼らを入学してから常に二人まとめてボッコボコにしたそうだ。


 最初は穏やかにしていたのに、「エクシア家の役立たずクロウティアの兄は腰抜けだな!」と煽られた瞬間、お兄ちゃんブチギレたそうだ。


 ライお兄ちゃん……僕なんかのために怒ってくれるなんてありがとう。


 それでただの下級の『剣士』のはずのライお兄ちゃんは実は『上級剣士』なのに職能を隠していると噂される程だった。


 他人の職能を調べる方法なんてないからね。



 それから今年入学したデイお兄ちゃん。


 初日に似た絡みで相手をボッコボコしたそうだ。


 しかも、かなり質の悪いやり方でボッコボコにしたそうだ。


 何と相手に一切攻撃をせず、ひたすら攻撃を避け続けて相手の足を引っかけて転ばせたりと一時間もの間遊んであげたそうだ。


 相手はボロボロになり泣きながら最後は多くの観客の前で土下座して謝ったそうだ。


 デイお兄ちゃんも凄くイケメンさんなのに怒ると怖いものだ……。


 僕も怒らせないようにしなければ……。




 デイお兄ちゃんが入学してすぐに王家からエクシア家に婚約の打診があった。


 どうやら第三王子のアルフレット・グランセイル様とセレナお姉ちゃんのお見合いをしてくれないかとの打診だったようだ。


 因みに、これを受けたら二人の結婚が最早確定するのと同じ意味を持ったらしい。


 お父さんはまさかの「婚姻は本人に全て任せていますので、エクシア家としての婚約申し送りは全て断らせて頂いてますので、お帰りください」ときっぱり返した。


 お父さん良くやった!


 しかしお姉ちゃんの結婚相手が王族だし、寧ろ喜ぶべきだったのかな?


 そんな僕を見て、お姉ちゃんから「私はクロウが結婚するまで結婚しないわ」って言われた。


 嬉しい反面、どうなのだろうと思う反面だった。



 だって、僕なんかと結婚してくれる女性なんて居るはずもないのに、お姉ちゃん一生結婚出来ないよ? と返したら物凄く笑われた。解せぬ。



 でも笑顔のうちのお姉ちゃん、うん、世界一可愛いよ。

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