辞典
地名辞典
《大陸》
【エルム (Elm)】
作中の主な舞台となる大陸。
地域ごとに異なる民族が暮らしているものの、五百年前までは永らく異質な存在であるニームの帝国によって統一的に支配されていたため、その間に固有の文化や記憶は破壊され、ほとんど失われてしまっている。
ニーム帝国の崩壊後は複数の国が勃興するも、エルム教(バルサム教とも)の信仰を軸とした共通の文化圏を形成し、価値観も比較的共有された状態で現在に至る。
巡礼の慣習があることから各国とも街道整備に力を入れており、主要な道として大陸北部を横断する北部大街道、南部を横断する南部大街道、大聖堂(ケンプフェリア、アンテミス、ファーン)と主要都市を結ぶ環状の巡教大街道の三道が大陸の信仰と陸路の通商を支えている。
【ニゲラ (Nigella)】
エルムの東隣の大陸。
大陸間は北部は山脈に、南部は海峡によって隔てられている。
エルムより歴史は古く、国ごとに民族や文化、宗教も異なるなど、多様性を保持したまま発展を遂げているが、それだけに国や民族間の衝突も絶えず、エルムより国の興亡が激しい。
〜エルム大陸〜
《カンファー王国》
【カンファー (Camphor)】
エルム北東部に位置する王国。
首都はエキナセア。
山地と平原の国。気候は南端の荒野を除き、総じて冷涼である。
東部・北部は山がちで牧畜(主に牧羊)が主産業。また東端のピレスラム山脈からは良質な石材が産出し、大陸各所の王宮や聖堂などに使われる。
西部に行くほど平原が広がり、豊かな穀倉地帯となっている。
リツェアと接する南の辺境地域には荒野もあるが、生命に乏しい苛烈な土地のため、公的には住民はいないとされる。
国土は狭く人口も多くはないが、ニゲラ大陸に隣接しており、エルムの大動脈たる北部大街道と大陸間通商路とを繋いでいるため、大陸内外との交易が行われる経済強国として発展を遂げている。
住民の外見は薄茶色の髪に緑瞳が主流。
【ソーン (Thorn)】
カンファー西部の州。伯爵領。
長年リリー家の本拠が置かれていた。豊かな穀倉地帯にある。
【フレーズ (Fraisier)】
カンファー南西部の州。伯爵領。
リリー家の現在の本拠地とされる。
ソーンの隣の州であり、かつてはソーン伯が領主を兼任していた。
【グネモン (Gnemon)】
カンファー東部の州。侯爵領。
カーラント家の本拠地。
水害が多く発展の遅れた地域であったが、誰も見向きもしない土地であることを逆手に取ったカーラント家により整備・掌握され、侯爵領となった。
【デーツ (Date)】
カンファー南東部の州。伯爵領。
カーラント家の支配地で、グネモン州の南隣に位置し、代々グネモン侯の惣領が領有する。
【マスティック (Mastic)】
カンファー北東部の州。伯爵領。
カーラント家の支配域の最北端に位置する。
現グネモン侯ヘムロックの出身地。
【エキナセア (Echinacea)】
カンファーの王都。
王国のほぼ中央に位置し、北部大街道の東の起点。
ディルの出身地。
【アキレア (Achillea)】
カンファー東部の城塞都市。
税関が設けられている王家直轄地。
代々リリー家の貴族が城代を務めており、リリーの領地同然であったが、周辺地域が
【リンデン (Linden)】
カンファー東南部の城塞都市。
カーラント家の主導で開設された新しい税関を擁する王家直轄地。実質カーラントの支配下にある。
河川に面しており、大陸内への移動には水路が主に用いられる(この時代、陸路より水路の方が流通面では有利)。
【ピレスラム (Pyrethrum)】
エルム大陸とニゲラ大陸を隔てる山脈。
両大陸を繋ぐ交易路が貫いている。
《エレカンペイン王国》
【エレカンペイン (Elecampane)】
エルム北部に広大な版図を持つ大陸最古の王国。
首都はラウウォルフィア。
北の雄と称され、王家は聖者バルサムと繋がりが深く、また総本山ケンプフェリア大聖堂を擁するため、宗教的にも一目置かれる存在である。
主に森林と平原と凍土で構成され、湖沼地帯や火山も存在する。
北辺は海と接しているが、荒れた極寒の海を渡る者はなく、ほとんど版図として認識されていない。
大陸第二の国土を誇るものの、人口は中部以南に集中しており、不毛地帯が多い。
森林資源の狐、兎、狼などの上質な毛皮が大陸全域で珍重されており、各国王族が纏うマントに使われる白
冬場は雪に閉ざされるため、街道近くなど夏の間に行商から羊毛を手に入れやすい地域では織物や刺繍の技術が発達しており、これらは諸外国からの評価も高く、重要な輸出品目となっている。
ただし国民の大半が従事する耕作に関しては、寒冷地のためたびたび凶作に見舞われ、また土地自体も総じて
毛皮や手工芸品の輸出は到底不作を補える規模ではなく、国としての経済は長らく停滞気味で、財政も慢性的に傾きがちであった。
しかし先王の時代に南部で染毛や皮革の加工に不可欠な
だが鉱床の場所が王家の所領内ではなく他の貴族の領内であったため、所有権を巡って内政に大きな火種を抱えることとなり、結果、現在に至るまで政治的に不安定な状態が続いている。
住民の大半が金髪で、瞳の色は青や緑が主流であるものの、少数派だが灰色や紫も見られる。
【ラヴィッジ (Lovage)】
エレカンペイン東部の州。伯爵領。
王家の所領であり、傍系王族が領主に封ぜられることが多い。比較的豊かな穀倉地帯。
ヴィーの出身地。
【ウォータークレス (Watercress)】
エレカンペイン北部、やや東寄りに位置する州。公爵領。
王家が所有し、伝統的に第二位王位継承者が領主に封ぜられる。
ほとんどが荒れ地で極端に作物の収量が少なく、更には目立った産業もないため、この州の領主となることは一族から「貧乏
第二位王位継承者に与えられるという決まり事には無論、政治的な意味がある。
【ラウウォルフィア (Rauvolfia)】
エレカンペインの王都。
王国内の比較的東寄りに位置する。
近接する聖都ケンプフェリアとは北部大街道と巡教大街道が重なる形で結ばれており、行き来も盛ん。
西側で北部大街道と巡教大街道がそれぞれの行く手に向かって分かれている。
【ケンプフェリア (Kaempferia)】
エレカンペインの都市。王都ラウウォルフィアの東隣に位置する。
聖者バルサムの廟を擁する大聖堂が存在するエルム教の本拠地で、聖都と称される。
教会領であり、ケンプフェリア大主教が治める。
東からの北部大街道と、南からの巡教大街道が合流して西のラウウォルフィアに向かって伸びており、雪の無い季節には多くの巡礼者が訪れる。
【リエール (Lierre)】
エレカンペイン南部の城塞都市。
ラングワート家の支配地。
ケンプフェリアからリツェア帝国に向かって伸びる巡教大街道に接する上、市内を大河が流れており、陸路と水路が交わる要衝地でもある。
《リツェア帝国》
【リツェア (Litsea)】
エルム中央から南部にかけてを支配する大陸最大の帝国。
五つの大公国と皇帝直轄領から成る。首都はカレンデュラ。
大陸の華と謳われるエルム唯一の帝国。
歴史の古さこそエレカンペインに及ばないものの、圧倒的な版図と経済規模を誇り、皇帝はエルムの盟主的な存在である。
大公国領内の都市アンテミスには三大聖堂のうちのひとつ、アンテミス大聖堂があり、年間を通して多くの巡礼者が訪れる。
内陸である北部は乾燥気味の気候で、特にカンファー王国との境には荒野が横たわる一方、南部は海洋性の温暖な気候に恵まれている。
南に外洋が広がっており、他の沿岸諸国との海路による交易が盛んである。
住人は北部は金や茶の髪色の人種も混じるが、南部はほとんどが黒髪。瞳の色は暗緑色や茶色など(エルム大陸の人種はいずれも起源は同一らしく、顔立ちや骨格の差はあまり見られない)。
【カレンデュラ (Calendula)】
リツェアの帝都。
国土の中央やや南寄りに位置する。巡教大街道と南部大街道が交わる交通の要衝。
【アンテミス (Anthemis)】
リツェア北西部にある都市。
アンテミス大聖堂を擁する教会領。カレンデュラと巡教大街道で結ばれている。
《ランタナ王国》
【ランタナ (Lantana)】
エルム東南部の王国。
リツェア帝国の南東に位置し、大聖堂とは独立した唯一の大学が存在する(大聖堂付きの大学は基本、聖職者の教育が主眼であり、世俗向けではない)。
大陸各地から留学生を迎えており、その中には各国王族なども含まれる。現フレーズ卿ローゼルの遊学先もこの大学であった。
南部大街道の東の起点。
《タラゴン王国》
【タラゴン (Tarragon)】
エルム北西部の王国。エレカンペイン王国の西側の隣国。
大主教座のひとつ、ファーン大聖堂が存在し、エレカンペイン、リツェア同様、多くの巡礼者が訪れる。
金鉱を抱え、また大陸西端ゆえ海に面しており、交易も盛んな経済大国。
【ファーン (Fern)】
タラゴン東部の都市。
ファーン大聖堂を擁する教会領。
~ニゲラ大陸~
《ジヌラ聖教国》
【ジヌラ (Gynura)】
ニゲラ大陸北西部の国。
政教一体の支配体制を敷く。
エルムのカンファー王国と小規模ながら交易を行っていた。
エフェドラの侵攻を受けており、存続が危ぶまれている。
《エフェドラ帝国》
【エフェドラ (Ephedra)】
ニゲラ大陸中央に興った新興国。
西に版図を拡げつつある。侵略・併呑した地の統治に長けており、その勢いは数十年間衰えを見せず、ニゲラのみならずエルム側の主要国からも危険視されている。
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