1章 リーフグリード編
第10話 リーフグリード
商人と冒険者を救ってから、既に1日が経過している。
そして、お昼を過ぎた辺りで街を遠目に確認できた。
歩いておおよそ2.3時間と言ったところだろうか。
「あ、やっと見えてきましたね」
ノルザさんの言葉に俺は頷く。
とりあえずあの街で、今日は泊まることになるだろう。
しかし、平原の中にポツンと建ててある街はなんだか日本の街並みとはかけ離れていて面白いな。
「しかしあの魔法は凄いですね…、魔術師の戦闘を根底から覆すような、とんでもない魔法だと感じました」
そう話すのは中性的で大剣を持っている冒険者、ユニットだ。
ノルザさんはあれから何度目かになる感嘆と感想に流石に罪の意識が膨れ上がり、聞こえるか分からない声で、応答していた。
ノルザさんもう少し耐えて…!
しかし、プレッシャーガンがそんな評価を受けていたとは驚きだった。
確かに上級の水魔法である、アクアバーストを元に派生させているが、この世界の人が既に生み出しているものだと思っていた。
上級魔法を使える魔法使いが少ないのか、それともそんな発想が浮かばなかったのか。
「いやぁ、本当に助かりました。貴方達があそこを通らなかったら私の命がなかった訳ですから…。街に着いたらなにお礼をさせてください」
「いえ、大丈夫ですよ。見返りのために救った訳ではありませんので」
お礼だ!と思ったら、ノルザさんがその誘いを否定する。
そういう所もノルザさんらしいのだが、そういう善意は貰っておいた方がいいのではないだろうか?
「では、街まであと少し、頑張りましょう」
ノルザさんが俺達を激励し、再び歩き始める。
―――
この街、名をリーフグリードという。
街の外は、豊かな草原が広がっており、街の中にも緑豊かな街道や公園などがあり、文字通り緑を独り占めしているようなそんな街だ。
だが、光があるところに、また闇も存在する。
太陽光が差し込まない薄暗い部屋で、豪華な椅子に座った男は、酒を片手に持ちニヤリと笑う。
男は幾本目かになる酒瓶を一気に飲み干し、自分の感情を抑えきれないといった様子で呟く。
「アイツらがやられたか…。誰の仕業だろうなぁ…。くく、楽しみだ」
そう独り言を呟いた男は、持っていた酒瓶を部屋に投げ捨て、薄暗い部屋から出ていくのだった。
―――
正門の兵士達に事情を説明し、街に入った後に人通りの少ない所へやってきた。
ノルザさんは王国内外でも割と有名な人らしく、素性を隠すためにフードの着いた外套を身にまとった。
そして、商人グリッドから、「商会グリッド・ウォーロー」の特別な名刺を貰った。
まだ小さいですが…。と声を弱くして、差し出してきたグリッドだったが、何かお礼をしないと行けないと思ってくれたのだろう。
有難く貰っていくことにする。
そして、冒険者ユニットはこの街に少し滞在した後に王国に移動するそうだ。
しかし、冒険者という職業は大変だろうな…。
仲間の冒険者が、死んだとしても、翌日から働かないと食い繋げないだろう。
だが、あの冒険者ユニットはもう切り替えていた様子だった。
冒険者になるにはあれぐらいの精神力がないと続けれないのだろうな。
「ノルザさん、これからどうしますか?」
俺は思考を切り替えて、今後の予定の事をノルザさんに聞く。
すると、ノルザさんは顎に手を当てて考え始める。
真剣な表情で考えていたノルザさんのお腹から「ぐぅー…」と音が鳴った。
「あ、ははは…、ご飯にしませんか?」
恥ずかしそうにノルザさんが提案したのだった。
『犬の手食堂』という、なんとも可愛らしい名前の食堂に来た。
ここは色んな料理を提供しているが、その殆どが見たことない料理ばっかりだ。
料理が決まったので店員を呼ぶ。
「えと、
ノルザさんとフェルも各々食べたい料理を店員に伝えていく。
「えー、我はこのモモンのパフェを食べたかったのに…」
「それは期間限定のようですね。モモンは数ヶ月前までが収穫時期でしたが、もう出回っていないようですね」
ほう?モモンのパフェか。美味しそうだ。
「すみません。ですが、こちらのプリンならありますよ」
ぷ、プリン?この世界にもプリンが存在するのか!
「あ、すみません。俺もプリンお願いします」
そう言うと、店員さんは畏まりましたと言って厨房に戻っていった。
俺の予想なのだが、豚ズラと異能獅子って多分、トンズラする豚と異能だから魔法を使う猪なんじゃないか?
憶測だから、出された後に全く想像とは違うものが出されたらどうしよう。
「では、今後の動きなのですが…」
俺は、料理を待つ間に話を切り出したノルザさんと、今後の行動について、ちゃんと話し合うことにするのだった。
「あ、先生!寝ようとするな!先生もちゃんと聞いておいてよ!」
―――――――――
因みに、ノアが予想した通りの食材の料理が出てきました。
※モモンの旬ではなく、モモンの収穫時期に修正しました。
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