第25話 息子たちにばれました

「聞き捨てなりませんね。私のお客様に対してそのような言葉遣いは許しません」



 ベーカー侯爵夫人は女を睨みつけながら、

「イライジャ、アレクシス。ありがとう、あなた達のおかげで最悪の事態は免れているようね」



「ベーカー侯爵夫人、この女のせいで私の人生は滅茶苦茶になったんです。こんな所で男を侍らせて遊んでるなんて許せません」



「あの、失礼ですがお名前をお聞きしても宜しいかしら?」



「エイダ・ピーターソン。ギルバートの妻よ」



「さっさと出てお行きなさい、あなたを招待した覚えはありませんよ。


どなたと一緒に来られたのかしら?」



 女性の一団の中で一人、青褪めて両手で口を覆っている人がいた。


「ダーシー・ロビンソン、今日はもうお帰りなさい。お友達は選ばなくてはなりませんよ」


 ダーシーは頭を下げ、

「申し訳あり「ダーシー、謝ることなんてないわ。こんな女を受け入れている方がおかしいのよ」」




「この場ではっきりさせておきましょう。あなたが離婚した事とアメリアは一切関係ありません」


 ベーカー侯爵夫人が明言した。


「あなたの不義を理由に離婚したラッセル伯爵は、アメリアのノルマンディーレースを狙っていたの。


その程度のことも知らず私のサロンで騒ぎを起こすなど、今後お付き合いされる方はよくよくお考えになることですね」



 ベーカー侯爵夫人は社交界の重鎮の一人。彼女に睨まれた#エイダ__ギルバートの元妻__#とダーシーは真っ青になっている。



「ベーカー侯爵夫人、どうかお許しください」


 ダーシーは必死で頭を下げたが、礼節にうるさいベーカー侯爵夫人は聞く耳を持たない。


「皆さん、興が削がれてしまったわ。食堂に参りましょう」




「ご迷惑をおかけしました」


 ベーカー侯爵夫人に頭を下げ帰ろうとするアメリアに、


「気にすることはありません。あなたに落ち度がないことは知っていますからね」



「アメリア、ギルバート・ラッセル伯爵って昔の婚約者でしょう?

それが今更どうしてあなたに関わるの?」


 ソフィーはアメリアに話しかけたがベーカー侯爵夫人がそれに答えた。


「ソフィーは思ったより疎いのね。

今、ノルマンディーレースは異常なほどの人気でね。

ラッセル伯爵は財政難の穴埋めに、アメリアの作るノルマンディーレースを狙って求婚していたの。


多分その為にピーターソンと離婚したのでしょう。子爵家にかなり強引な事をしてたみたいだから」



「「「アメリアが、求婚されてた?」」」



「ベーカー侯爵夫人、それはもう解決済みの話なのでどうか「俺達聞いてないぞ、お前はなんで言わなかったんだ!」」



 イライジャ達が気色ばんでいる。


「本当に終わったことなので、お話しするような事は何もありませんの」



「撃退」(したのはどうやったの?)





 突っ込んで聞いて来たジョシュアに、アメリアは溜息をついた。


「ジョシュア・・こういう時は喋らなくても良いわ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る