第9話 罠を仕掛ける・凛子視点

 沖本先輩がポリシーを曲げてくれたおかげで、拓郎くんが企んでいる全容を掴みかけていた。沖本先輩が拓郎くんに渡していた紙もわら半紙だった、と雪さんに教えてもらったのも大きかった。

 問題はどのようにしてカンニングしていると証明するかだった。証明できなければ、不正を防ぐ方法を考えなければならない。


 罠を張ってみようと思った。

 わたしの思惑通りいけば、拓郎くんを捕らえることができる。


 中間テストがとうとう始まった。


 テストは二日あり、一日目が国語と理科。二日目が、社会と数学と英語だった。

 拓郎くんの企みを、事前に止めることができなかったのは残念だ。風紀委員の女ホームズと呼ばれている身として、情けない気持ちだった。わたしたちが何も仕掛けてこないものだから、拓郎くんたちは安心しきっているはずだ。勝ったと喜んでいるに違いない。

 解答を書き込みながら、拓郎くんをちらちらと窺ってみる。

 すらすらと答えを記入しているようだ。いつものテストでは見ることのできない拓郎くんだ。カンニングペーパーがあるわけではなさそうだった。


 ほっと吐息をついた。今のところ計画が狂うことはなさそうだ。


 冷静になって考えてみると、先ほどからちらちらと拓郎くんを見ているが、まるでわたしがカンニングしているみたいだった……。いけない、今はテストに集中しよう。


 二限目が終わり、急いで職員室に向かい、拓郎くんのテストの点数を聞いた。事前に、拓郎くんのテストだけすぐに採点してもらえるように頼んでおいたのだ。

 点数を聞き、満足な結果を得られわたしは頷いた。


 予想が当たった。あとは計画通り進めていくだけだ――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る