第12話 雪先輩からの判決・拓郎視点
納得がいかない納得がいかないと、ずっと不満に思っていたが、やはりおれが正しかった。
不満が晴れる出来事が起こったのだ。神様は公平にジャッジしてくれているのだ!
首謀者ということでおれは風紀委員室に呼ばれ、処置を告げられることとなった。
雪先輩からため息交じりに軽く説教されたところで、おれは凛子もゲームを持ってきていたことを告げ口してやった。
「ええっ!」
雪先輩は目を丸くした。
「先輩はいなかったんで知らないでしょうけど、マジですよ……」
「ほんとなの凛子ちゃん?」
慌てて凛子を見た。
「だって証明するためですし……警察はスピード違反を捕まえるために法定速度を越えますし……」
「なにを言ってるの」
雪先輩は眉をひそめた。凛子の大好きな警察論も通じなかった。
「でも郷田先輩の許可ももらったんですよ?」
「え! 郷田くんも知ってたの!? 本当なの郷田くん」
郷田先輩は顔を向けると、首を捻った。
「……何のことだ?」
絶妙の間と絶妙のとぼけ顔であった。体が大きいだけかと思ったが、意外と演技派らしい。
「そんな、許可くれたじゃないですか郷田先輩!」
「南、知ってると思うが、俺は体を鍛えることを考えている時は周りが見えなくなるんだ。その時に言ったんじゃないか? うん、きっとそうだろうな」
「酷い……」
凛子は呟いた。おれも同感だった。雪先輩に怒られるのが怖いため、後輩を見捨てるとは……。
雪先輩は咳払いし、おれと凛子は注目した。さながら雪先輩は裁判長であった。
「処置を発表します! 双方共に一週間の没収を義務づけます!」
「ええ~」
おれと凛子は声を揃え不満を漏らした。
「横暴や!」
「そんな権利、雪さんにないじゃないですか……」
ぶーぶーとブーイングを起こした。共通の敵ができ凛子と共闘していた。昨日どころではなく、数秒前の敵は友なのである。
「わかった。良くわかったよ……」
「本当ですか?」
「うん。そんなに没収が嫌なら、替わりに郷田くんと一週間の筋トレ合宿なんてどう?」
おれと凛子は顔を見合わせ、頷き合った。答えは決まっている。
「没収で!!」
またしても声を揃え言った。そんなに嫌か……と郷田先輩は落ち込んでいた。
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