第6話 マネージャーになる!

 今の2年生で、二軍にいる部員は、僕以外全員辞めてしまった。いつも2人くらいは最後まで二軍に残っているものなのに。確かに、1年に優秀な部員が多かったという事もある。だが、僕1人残して行くなんて・・・。

 そうしてそれが、僕がマネージャーになる事を決心させた。どうしても、ここで部活を辞める気にはなれなかった。辞めて受験勉強だなんて、そんな心の準備は全く出来ていない。まだまだ野球に携わっていたかった。甲子園に行きたかった。たとえ自分が試合に出られなくても。

 僕は監督に言って、マネージャーに転身した。


 もう、女子二人の事などは無視。マネージャーとなるからには、徹底的にやることにした。

 まず、部員の管理だ。1人1人の調子を見て、気になる事があれば、管理簿に記入しておくことにした。

 今までは二軍の練習場所にいた僕だが、これからは主に一軍の練習場所にいる事になった。それまでは口も利いたことのなかった主将の角谷をはじめ、一軍のみんなとも言葉を交わすようになった。

 最初は、

「マネージャー、これお願い。」

などと言われていたのが、だんだんと、

「瀬那、これやっておいて。」

と、名前を呼んでもらえるようになった。そして、僕にも下の名前で呼んでいいと言ってくれた人がいたので、それからはみんなを下の名前で呼ぶ事にした。角谷にも、

「正継、そろそろ次のメニューの時間だよ。」

なんて、話しかけたりするようになったのだ。

 これはすごい変化だ。しかも、部活以外の教室や廊下でも、一軍のやつらと雑談を交わすようになったのだ。道男に、

「瀬那、出世したな。」

と言われるほど。決して出世したわけではないけれど。


 しかし、相変わらず戸田は僕を「マネージャー」としか呼ばない。教室では話しかけられた事もない。

 最近では、他校の女子までもが戸田を見に来ていたりする。そりゃあ、ちょとかっこいいだろうけれど、あんな無愛想なやつ、どこがいいんだか。

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