血と降格と抗えないつがい

かにゃん まみ

第一章 高貴な遺伝子

1

 俺は子供の頃から自分が人類の種族の最高位であるアルファであることを誇り高く思っていた。

 

 2〇〇〇年、人類は人間の設計図であるDNAの解読を未知だった部分を含め、ほぼ完了させていた。

 

 この世界には様々な人種が存在する。男と女という性別があり、昔は女という生き物が子どもを産んでいた。

 それらは今も続いているが、現在は子を産むものが女性に限ったことではなくなっている。

 大きく分けると3種の人種が産まれた。

 

 一つ目は遺伝子的に最も優れた能力を持つアルファという種。


 二つ目は普通の能力を持つベータという種。


 そして三つ目は人類の滅亡を防ぐべく繁殖に特化したオメガという種だ。


 何故人類がこのような形の種に枝分かれしてしまったのか。

 かつての人類はDNAを解読したことにより、人間の設計図を簡単に作れると奢った。


 そして性別やクローン人間の増産という神の領域を冒涜し、核の量産や、他の惑星に進出し、第二の太陽まで作ろうとした。

 しかし、それらの愚かな行いが自分たちに破滅という形で返ってきたとも言われている。


 遠くの宇宙へ旅立って帰って来たものは、宇宙線により体になんらかの異常をきたしたのか、原因不明の病に侵され、それらはウイルスのように世界中に広がった。

 それを引き金に各地で暴動が起き、結果すべてのものが破壊された。

 しかし、壊されたDNAはそれでも種の存続をかけ、人類を絶やさないために、人知を超えた自らの進化を遂げたのだ。


 アルファは生まれながらにあらゆることの能力が高い。それは知性だったり、運動能力にも及ぶ。

 それは遺伝子でわかったことであるが、その飛びぬけた能力を持つアルファに自分がなれた事を誇りに思うし、心から生まれてきてよかったと思っている。

 

 アルファ、ベータ、オメガが平等だと市民運動の平和団体が叫んでみたところで、やはりアルファの血はどの種よりも優れている。

 その証拠にアルファ以外の人種は誰もが尊敬と畏怖の混ざった眼差しで俺たちを見ている。

 

 憧れ、羨むような視線が俺はたまらなく嬉しく誉れ高かった。

 それと同時にオメガのやつらが酷く惨めに感じた。



 それにしても今日はやけに暑く感じる日だ。

 俺はそれほど汗をかかない体質だったのに、最近度々体が火照り汗が首元を伝う。

 最近こうした気温の変化を感じるようになってきた。

 いや、正確に言うと一年ほど前からだろうか……。

 

 俺たちの住む地域は空調も制御できるように透明なドーム型の建物に収まっているはずなのに。調整装置が壊れているのか。

 芝生の公園の木の陰で寝転びながら俺、羅姫アヤト(らひめ あやと)は時折タオルで汗を拭いながら抜けるような青さの雲一つない空を仰ぎ見ていた。

 

 隣で、同じように樹に背中を預けて涼んでいた宝田琉(たからだ りゅう)は澄ました顔でデジタルの本を眺めている。時折前髪をかきあげながら長く綺麗な指は迷うことなく画面に触れ、次のページを閲覧している。

 ふと画面から目を離すと切れ長の瞳が俺を見下ろした。

 

「どうした、体調でも悪いのか?」

「……いや」


 俺は汗を拭くために外した一番上のシャツのボタンを留めると、乱れた服装を整えた。

 タオルを折りたたみ、もっていたカバンの小さなポケットに綺麗にしまう。

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