第4話 発見
そこには比較的大きい家があって綺麗に整備されている所であった。
だが、そもそも案内所にそんな情報があるのかとキッドパーティー全員が半信半疑になっていたが、少女に用事を済ませるように言われたので中に入って受付の人に聞いてみた。
予想通り僕達が求めていた答えは返ってこなかった。ここにはそんな物はないと言われてしまったのである。これでまた振り出しに戻ってしまったのである。
みんなでこれからどうしようか迷っている所にさっきの少女がやって来た。
結果はどうだったかを聞かれたが誰も答えなかった。代わりに僕が少女に素直に言った。
「実は財宝の在り処が記されている装置がここにあるはずだったんだ」
当てが外れてガッカリしていると少女は当たり前だと言わんばかりに言ってきた。
「だって、その場所は私しか知らないもん」
この場にいる隊全員が沈黙した。そしてその沈黙を破るように少女は話す。
「でもこれには問題があって場所が分かっていてもダメなんだよ」
この時は少女の言っている事がよくわからなかった。
「自己紹介が遅れたけど、私はミミア・フリピス。ミミアでいいわ。よろしく」
急過ぎる展開と全く事情が掴めずにまたもや全員が沈黙する。
「モタモタしてないで早くついてきて」
そう言ってショットガンを背負いながら歩いて行った。
完全に独走してしまっているミミアに不信感を抱くキッドパーティー一同。
イグナが僕の方にやってきて耳元で囁く。
「アイツ何がしたいかよく分からないから聞いてこい」
なぜ、こういう時だけ僕なのか疑問に思ったので、ここは新入りのバルグにやらせようとするとゼバス自ら少女の方へ向かっていくのが見えた。少女の近くまで来るとスピードを落とした。
話しかけるのかと思いきや、ただ靴ひもを結び直すだけであった。
勝手に期待してしまった。僕は仕方なしミミアに聞くことにした。
「ねー、どこに行って何をするのか知りたいのだけど教えてくれるかな?」
少女は足を止めて僕の方を見た。
「何をとぼけているの? 何をするのか一番あなた達が知っているでしょ 場所は私が案内してあげるからそれまで黙ってついて来れないの?」
これを聞いて僕は少しイラッとするのであった。とても反抗的な少女であることは理解した。歩み始めたと思うとまた止まった。
「あと、言い忘れていたけどここら辺は人の声に敏感だから」
そう言うと周りの茂みからたくさんのオオカミが出てきた。僕はオオカミに襲われそうになり驚いて倒れてしまった。しばらくして目を開けると傷一つなく代わりにショットガンの銃声で耳が痛くなった。だが、そのおかげでオオカミは逃げていき脅威は去っていった。
ホッとして一息つくと少女はまた歩き始めた。意地悪ではあるが悪い人ではないとおもった。
長い間歩き続けると森が濃いところまで来た。そしていきなり少女の歩みが止まった。
「ここだよ。 あの大きな木の下にある」
指を指した方に幹が太い大木があり、根元が遠くからでもはっきりと見える程の大きさであった。そして、周りの木がその大木を取り囲むように広がっていた。
この大木の根元は切ってはいけないらしく幾つも分岐している根をかき分けながら取り出すしかない。
ミミアは昔、誰かが黒い箱のような物を埋めている所を見たらしい。
全員で採掘作業を始める。作業は難航し、木の根がたくさん絡まってよく下を確認することができない。作業を開始してから五時間ほど経ちみんなが疲れ切って休憩をはさんでいる時であった。バルグと僕が交代して僕が木の真下を掘っていると固いものに当たる音がした。もしやと思い、手で周辺の土を払って持ち上げると肩幅ぐらいの大きな箱が出てきた。
「やったぞ~! 見つけた! みんな見てくれ!」
あまりの嬉しさにみんなに見せようと駆け上がろうとするが、地面が滑ってしまい地上に戻れなくなってしまった。僕は焦って助けを呼んだ。
「誰か助けてくれ~、登れなくなった!」
大きな声で叫ぶが誰からも応答がない。聞こえるのは空洞で反響して返ってくる自分の声だけだった。完全に閉じ込められてしまった。僕は外から気づいてくれるのを待つことにした。しばらく待っていると外から隊長の声が聞こえてきた。
「まだ頑張るのか〜?」
僕はすぐに助けて欲しい事を言って救援を待った。すると上からロープが降りてきてロープを使って登るように言われた。
がんばって登ろうとするが上に行けば行くほど足が根に絡まって身動きがとれなくなる。
困って立ち止まっていると上からミミアの声が聞こえてきた。
「外側から登っていかないと上手く登れないよ」
言われた通りに端の方までいき、そこから上がるとやっと外に出ることができた。
登り切るとそこにはミミアがいた。
「出られてよかったね」
せっかく見つけた宝の箱と一緒に白骨になるのは嫌だったのでそういう意味では良かったと思うし、何よりも的確なアドバイスで助けられたのも事実である。だから、なんとなく嬉しく思った。
後ろからキッドパーティーのみんながやって来て、手に持っている箱を見るなり騒ぎ出して一気にうるさくなった。なので、ミミアに聞こえるように小さな声で言った
「助けてくれてありがとう」
一言お礼を言うとそんなことは気にしないかのように例の黒い箱を開けろと言ってきた。急かされた僕は黒い箱を開けようとするがなかなか開かない。
箱の前には留め具のような物がついていた。
どうやら鍵がかかっているようだ。
全員で力ずくで開けようとするがビクともせず、バールのようなものでこじ開けようと試みたが、入れる隙間が全くなく役に立たなかった。
やっと見つけた鍵の手がかりに鍵がついているという二重のセキュリティーで手こずっていると不意にミミアのつけているネックレスのクリスタルが揺らめいているのが気になった。最初はただ揺れているだけだと思っていたが、その揺れが不自然で明らかに物理法則に反する揺れ方であった。
これは僕の勝手な推測なのだがこのクリスタルを揺らした方がいいような気がした。
ミミアにネックレスを揺らさせるがいくらやっても何も起こらなかった。
それに対してミミアが怒ると僕はまた考えてしまった。
すると自分の胸ポケットからチクタクと微かな音で動いているのが耳に入った。
ポケットから出すと今まで止まっていた懐中時計が動いていた。
少しだけ遅いように感じる秒針は何かを意味していると解釈した僕はじっくりと眺めてみた。端の方に映るミミアのネックレスの飾りの揺れが秒針と合った時だけ黒い箱からガリガリと砂と金属が擦れる音がした。
気になって耳を近づけると確かにクリスタルの揺れと同調して歯車のような物が動いているのが音で分かった。
ミミアに懐中時計と秒針に合わせてクリスタルを揺らさせると今度は順調に歯車が回った。
しばらく待つと中からカチッと音がなり、ロックが外れたように思えた。
ゆっくりと蓋を開けてみると見事に開いた。
「おー、ホントに開いたぞ。 こんな奇跡的すぎるだろ」
周りから称賛され、無事に中のコアのパーツをゲットすることができた。
早速、ゲットしたパーツをトリエントスコープに組み合わせてみるがパーツが合っていなかった。
それはそのはず、なぜならこのトリエントスコープ自体適当に作ったものだから。急いで入るようにウェーブに作り直させた。できるまでの間は近くの喫茶店で休憩することにした。
箱が見つかってから開けるまで有り得ないレベルで偶然が重なった事に自分自身が一番驚いている。
数時間ゆっくりしていると急いで作り直させたトリエントスコープは見事にコアの部分が入るようになっていた。見た目はすごく手造り感溢れる感じであるが、そこは仕方がない。
やっと完成した宝の場所を写す投影機トリエントスコープ
実際に起動させて見るとそこに映し出されたのは誰の部屋か分からないような風景だった。
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