矜持

「<子供を産む機械>。


こんなことを言うと発狂する人はいるでしょうね。現に、そういう騒動が以前あった。


だけど私は、その発言を是認はしないけど、人間は決して<機械>じゃないことは分かってるけど、間違ってることは分かった上で敢えて使う。『自分じゃ子供を育てられもしないクセにセックスをやめられない奴は、<子供を産む機械>になってくれ』ってね。


これは、実際に子供を産む女性にだけ言ってるんじゃない。男性に対しても言ってるの。女性だけじゃ子供は生めないからね。


女を、自分の精液を吐き出す為の便所のようにしか思ってない男なんか、ただの、<子種を作る機械>みたいなもんだとしか私は思わない。


やりたいならやりたいだけすればいい。そんな奴の人格とか知ったことじゃない。精子だけあれば、お前の人間性も、セックスのことしか考えられない頭も要らない。


可能なら、家畜として飼ってやりたいとさえ思ってる。


私はね。日本という風土が好きなの。この風土を守る為にこそ、子供が欲しいの。


どんな綺麗事を並べようがオカルト染みた超常現象を盾に取ろうが、人間がいない国は国として成立しないのよ。このまま少子化が進めば、いずれ外国人移民を受け入れないと成立しないようになるでしょうね。


私はできればそれを防ぎたい。


別に、外国人を排斥したい訳じゃないの。私は決して民族主義者でも純血主義者でもない。だけど、日本の風土がなぜ今の形で成り立ってるのかが理解できない人間に任せるのが嫌なのよ。


生まれてくる子が日本人でも日本人じゃなくてもそれは構わない。どんな子供でも私は受け入れる。そして、日本の風土というものを形成する人間として育てるだけ。


外国人にいくら理解できなくても、『察しと思いやり』を捨てないことこそが日本人としての矜持だと私は思ってる。


どんなDNAを持ってようがそんなことは知ったことじゃない。DNAでどういう人間に育つかが決まるとかいうトンデモ科学を妄信する人間の戯言なんて聞かない。私はただ、日本人としての矜持をもった人間を育てたいだけ。


ねえ、京香? あんたはこんな私を狂ってると思う? 思うならそれでも構わないわ。私を告発し、糾弾すればいい。それがあんたの答えなら、私はそれを否定しない。


ただ、その時は、あんたなりの方法で、この子のような子を救ってあげて。この葵のような子が『生まれてきて良かった』って思えるようにしてあげて。それができるなら、私はもう何も言わないわ」


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