第131話 ご褒美
触り心地は手に吸いつかないブニブニで産毛が気持ち悪い、体温は生暖かい、鳴き声はギューギューって音を出す、目は見えてるのかわからないが俺を感知して追い掛けてくる、芋虫のようなあの動きはしないで滑るように移動する。
幼虫ってこんなんだったっけ? ダンジョンやモンスターの常識がわからない。
結論、コレに愛着が湧きようがない。
最下級エリクサーとコレを俺に献上した女王蜂と取り巻きは残った三つの巣へと逃げるようにして帰っていった。残された俺は幼虫をその場にソッと置いて階段に行きそそくさと降りていったら、後ろからギューギューギューギュー五月蝿い鳴き声を喚き散らしながら幼虫が俺を追いかけてきたのは軽くないホラーだった。
たくみは のろいのアイテムを てにいれた▽
ようちゅう からは にげられない▽
アホほど身体を食い散らかされて血を大量に失った挙句、経験値は獲得出来ずにコブ付きになるとかさぁ、踏んだり蹴ったりが過ぎるんじゃないかな。
押し付けられたコレは、今は懐いているフリをして油断を誘い続けて、いつか俺の寝首を搔くンではないかという不安が拭いきれないから要らないんだけど。
そう、匠の中で長い年月かけて堆積していった自分以外の知的生命体に向く深い不信感はそうそう払拭できるものではなかった。
「いっその事、あの妖精の二の舞に......」
鬱々としていく心はそんな事を考えてしまう。
だが、そんな中でもエキドナの子達の事も浮かんできてしまっていまいち爆散に踏み切れなかった。それにあのクズ家族も同じ様な状況になったらきっと、女王蜂と同じ様な行動をして命乞いをするだろう。その時に差し出されるのは勿論、俺一択。
うーん......散々モンスター共を殺しまくってるヤツが今更とは思うんだけど、悔しいけどねぇ心情的にまだ、コイツを殺すに足りる理由がない。でも育てる気も世話をする気も無いんだよ。押し付けられただけだから義務も何もないけど一応同行はする......他の事はコイツが生きたければ勝手に生きる努力をするだろう。と言うかあんなのに育てられた俺に何かを育てるとか不可能だもの。
「あー......腕にぴったり張り付くのやめてくんね?」
「ギュゥゥゥ」
追いつかれた俺は腕に幼虫を装備してしまった。強制イベントほんと嫌い。
腕を鋭く振ってみても、どっかに吸盤でもついてるのかってくらい離れる気配がない。やっぱり呪いの装備だった。コイツあのままだと捨てられていたってわかったりしてんのかな......てか女王蜂んとこに何故戻らなかったんだよ......
「今なら帰れるから帰れよ......」
「ギュー」
頭を振って断固拒否の姿勢を見せる幼虫。心做しか腕が締め付けられている気がする。
というか、妖精は俺が握ってなかったら階段通れなかったのに何でコイツは通れたんだろう......そこが謎すぎて怖い。
最後に強引に掴んで引き剥がそうとしたが、あのクソブーツ並にヌメヌメしだして握れなかった......その癖剥がれる気配はない。詰んだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁ......」
溜め息しか出ない。
俺は全てを諦めて重くなった足を引き摺るように階段を降りていった。
◆◇原初ノ迷宮第七十六層◇◆
降りた先は洞窟タイプで懐かしの一本道フロア。
こういうのでいいんだよ、こういうので。荒みきった心が落ち着くのがわかる。
「ギュー♪」
置いていこうとしないのに気付いたのか、幼虫の機嫌が良くなったのが腹立つ。コイツが油断した時に置いて逃げよう。
出てくるモンスターは手強いんだろうけど、虫の群れなんかよりも簡単でアッサリと倒せた。やっぱり人型や四足獣タイプが正義だわ。
この階層でレベルは2上がった。
血は6ℓ増えた。
次は77という縁起のいい数字。宝箱とか無いかなぁって少しワクワクしている。
◆◇原初ノ迷宮第七十七層◇◆
降りた先はモンスターハウスを彷彿とさせるワンフロアぶち抜きの大部屋タイプだった。
これまでと違ったのは、一定間隔で宝箱が鎮座するボーナスステージだった事。降りる前にちょっと期待していた通りの77階層だったわ。
見た感じ100個くらいは宝箱があるんだけど、でもまぁこの中の大半はミミックとかだろうけど......ミミックばかりでも此処が俺にとってボーナスステージである事は変わりない。
「さて、開けていくか!!」
「ギュー?」
テンションの上がった俺に困惑してんじゃねぇよ幼虫。ミミックに食わせんぞ。
気を取り直して......今の俺には魔法袋も中位収納もある。片っ端から回収してやるぜぇ!
そう意気込んで作業する事約1時間。
大体1分に1個のペースで計60個の宝箱を
なんと55/60がミミックという鬼畜なダンジョンの計らいに涙がちょちょぎれそうです。尚、以前の経験によりミミック攻略法は確立出来ていたので、このようなハイペースでの攻略が出来た匠であった。
ミミックじゃないモノは......
1、適温の皿。乗せれば丁度いい温度になるって皿だったが、ミミック判別の際の金砕棒さんによって破損したので破棄した。
2、自動清浄付き下着。大当たり!!
3、静銀のナイフ。沈黙効果付きナイフは触手ナイフが乱心して砕かれた後に取り込まれていった。
4、ランダムスキルブック。大当たり!!
5、兎を咥えた獅子の置き物。1日1回6時間だけ置き物を中心に1m魔除けの効果がある結界を出すらしい。見た目の割に素晴らしい効果。これがあったら上で虫に集られなかったのに......
気を取り直して残りも開けていこうか。こういいモノが出るなると俄然やる気が満ちてくる。
もう少し殺り方......いやガワの壊し方を工夫して中のモノを壊さないようにしないと、皿みたいなどうでもいいモノじゃなかった時に悔やんでも悔やみきれないからね。
まだ宝箱は60以上あるから何が出るか楽しみだ。ざっくりと100とか言ったけどもっとあったわ。
ところで、腕に張り付いた幼虫が時折りビクンビクンしてるけど何してんのお前? 邪魔するなら潔く死んでくれ。
◆◆◆◆◆
「おっしゃ! これでラストォ!!!」
「ギュー♪」
『レベルが5あがりました』
あれから合計75個の宝箱を
何はともあれ終わりは終わり。ヨシ! さて、内訳はミミックは70、135個あった宝箱の内125個がミミックだった。まぁこのクソ意地の悪いダンジョンの割に当たりが合計で10個もあったのが驚き。当たりが1個か2個だけ、若しくは全スカも覚悟していたもん。
「嗚呼......ダンジョン攻略している感が凄い......」
心地よい疲れ、目の前にはお宝、血も結構復活。77もの階層を進んできて初めてゲームでよくあるダンジョンみたいになって正直めちゃくちゃ楽しめた。
上の階層での地獄との対比がエグい。多分この階層に辿り着かせない為のアレなんだろうね。死ね。
「ふぅ......どんなのが出たかなぁ」
思い出した嫌なモノを振り払うようにお宝チェックを始めた。
6、祭壇に捧げる呪物。俺に強呪耐性が無かったらこれで苦しんでた気がする手にビリビリとクる黒い箱。多分下の方でコレを使う機会があるキーアイテムだと思う。
7、破邪の矢。持った俺の手から煙が出る矢。聖女の遺骨で作った鏃と世界樹から作ったシャフト、神鳥の羽根を使った霊験あらたかな品。弓はないから多分投げて使えって事だと思う。俺みたいモンに効果はバツグンだろう。
8、ホームダブの翼。ポイント設定した場所へ帰れる使い切りタイプの帰還アイテム。コレで外に出れるじゃんって思ったら俺が住んでた場所やらはポイントに出てこず、クソ鎧の住処や10階層毎の安全地帯しか出てこなかった。燃やしてやろうかと思ったけど一応貴重っぽいしクソ鎧のトコへの特急券だったから残しておいた。
9、ウンディーネの遺骸。河童の木乃伊にしか見えないけどコレを穴を掘って投げこめば枯れない泉が出来るらしい。
10、再生獣希少種革のスラックス。消滅しない限り再生して元通りになる濃紺のスラックス。これで俺の下半身は磐石になった。この階層一嬉しいお宝で見た瞬間思わず叫んでしまった。
「......これでわざわざ戦闘前にパンイチやマッパにならないでも戦える。素晴らしい......素晴らしい......」
再生ブーツ、清潔下着、再生スラックスを履くと色んな感情が溢れてきて止まらず、涙が頬を伝った。幼虫がギョッとしていたけど仕方ないんだよコレは。しかも履き心地まで良い。神アイテム。
「やったぜ!! アハハハハハハハッ!!!」
全力で喜びを表して恥も外聞もなくはしゃいで回った。冷静になって死にたくなったけど悔いは無い。
「よし!! おい幼虫!! お祝いしようぜ!!」
俺から漏れ出ていた混沌を啜ってビクンビクンしていたのが発覚した幼虫とお祝いする事にした。とりあえず気分がいいから色々な事に目をつぶってしばらくお前と居てやるよ!!
というわけで取り出したるは最下級エリクサー!!
俺がコレを必要になって使うなんて事は今後一切無いと思うし、ローヤルゼリーと花蜜だから不味くは無いと思うからこの機会に飲んでしまえって事でドーン!!
「ギュ......ギューウ......」
ビクビクしながらも喜んでるっぽい幼虫。
いやー、今日は近年稀にみるいい日だな!!!
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吉持ㅤ匠
人化悪魔
職業:暴狂血
Lv:28→35
HP:100%
MP:100%
物攻:300
物防:1
魔攻:200
魔防:60
敏捷:250
幸運:30
残SP:62→83
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残427.8L
不死血鳥
部位魔化
魔法操作
血流操作
漏れ出す混沌
上位隠蔽
中位鑑定
中位収納
中位修復
空間認識
殺戮
状態異常耐性Lv10
壊拳術Lv4
鈍器(統)Lv8
上級棒術Lv4
小剣術Lv7
投擲Lv8
歩法Lv8
崩打
強呪耐性Lv5
石化耐性Lv4
病気耐性Lv4
熱傷耐性Lv8
耐圧Lv3
解体・解剖
回避Lv10
溶解耐性Lv6
洗濯Lv3
アウナスの呪縛
装備:
壊骨砕神
悪魔骨のヌンチャク
肉触手ナイフ
貫通寸鉄
火山鼠革ローブ
再生獣希少種革のスラックス
再生獣革のブーツ
貫突虫のガントレット
聖銀の手甲
鋼鉄虫のグリーブ
魔鉱のブレスレット
剛腕鬼の金棒
圧縮鋼の短槍
迷宮鋼の棘針×2
魔法袋・小
ババアの加護ㅤ残高17000
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通知確認していなかったので気付くの遅れました大変申し訳ございません。
@abm111様、何度もギフトありがとうございます。嬉しくて嬉しくて、本当に励みになります。頑張ります。読んでくれる皆様、コメ、☆、♡をくれている皆様も本当にありがとうございます。
クソほど暑いですが皆様、体調にお気を付けてお過ごしください。キンッキンに冷えたビール飲んでっから平気とかほざいて倒れた人もいますので水分と冷房はケチらないようにしてください。
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