第39話ㅤ新しい体
「アハハッ......不安定で落ち着かないや。でもそんな事はモンスターには関係ないよね。アイツらの餌である自分が、テリトリーに入ってくるのを今か今かと待っているのが伝わってくるよ」
種族が変わった事が影響しているのか、前よりも感覚が鋭敏になっているような気がする。殺気、悪意や敵意のような目に見えないモノをハッキリと肌で感じられるようになっている。
強化された感覚は、何となくだが敵のフォルムや大きさも把握出来る。これは空間把握と併用すればもっと鮮明に判るようになるかもしれない。
ステータスチェックで確認してみるも、それらしいスキルは生えてきておらず、コレは進化した影響なんだと思うことにした。
「感覚が鋭くなるのはいい事なんだろうけど、肌で感じるソレの所為か、肌を晒しているのが苦痛になってくる......早くちゃんとした服を手に入れないと」
さっきまでズタボロになるような戦闘をしていたと思えない程に整った体調。気力も十分、早く服が欲しいという気持ちが特大のモチベーションになっている。
「これ以上装備を失うわけにはいかないよね。油断しないようにしながらサクサク進んで、ババアの店でいい物を揃えよう」
非日常な極限状態に陥ってから結構な時間が経過し、今まで抑圧されてきた欲求を司どる感情が......特に物欲が顔を出す。
スキルのせいか食欲は余り存在せず、睡眠欲もそこまで肥大化していない。
性欲は......生きるか死ぬかが続けば子孫を残そうと奮闘するはずなのだが、他人から嫌われる人生を送ってきたので、本来ならば猿になる年齢であるはずなのにあまり発達しておらず、不死血鳥を取り込んだおかげかピンチにはなるが明確に死をイメージさせる状態には殆どならない。
自分の意識の外で子孫を残そうという生物の本能がかなり薄まっていた。
ならば他にどんな欲望がこんな環境で表に出てくるのか......それは物欲。
もっといいアイテムや武器が欲しい。
休憩を快適に過ごせる物が欲しい。
その他便利になる物が欲しい。
お前らの血と経験値が欲しい。
特殊な環境と特殊な体質、そして今現在置かれている状況が合わさり、どんどん一つの欲望に......物欲に特化したモンスターが形成されていく。
「この部屋にいるモンスターは五体、その内人型は二体。どれも殺気立っていて自分の存在には気付いている......アハハッ、上等だよ」
いつも通りのメインウェポンと投擲専用になった焦げた方の棍棒を構え、こちらを待ち受けるモンスターの前に飛び出した。
「アハハハッ!!」
二体が直線上に重なっているので、あわよくば二体同時に仕留めてしまおうとした投擲を行う。
物攻を上げておいたのが功を奏し、上げる前とは比べ物にならない威力とスピードで棍棒が飛んでいく。
近い距離にいた一体は、為す術もなく棍棒にぶち当たり、肉片を撒き散らす。
遠い距離にいたもう一体は、前に居たモンスターが影になっていた所為で棍棒に反応できずに、右胸から肩にかけてを吹き飛ばされて倒れ伏した。
こちらの存在を認識していたから、もっと苦戦するかと思っていたので拍子抜け感は否めない。
──────────────────────────────
メイズリザード
レベル:97
──────────────────────────────
──────────────────────────────
メイズリザード
レベル:98
──────────────────────────────
倒したモンスターをチラ見しながらステータスチェック。
思っていたよりもレベルが高いが、それだけだった。特殊な能力を発揮するか、やろうとしていた戦法をさせていれば苦戦したかもしれない。だがこれはただの殺し合い。
油断すれば大きな代償を払う羽目になる。やはり敵と戦う時は奇襲に限る。
さて......残りは三体。種族進化した自分なら苦もなく倒せるだろう。
だが絶対に気は抜かない。死ね!
残った三体の方を向き、ステータスを見る。
──────────────────────────────
グレイトパライズラット
レベル:98
──────────────────────────────
──────────────────────────────
グレイトパライズラット
レベル:98
──────────────────────────────
──────────────────────────────
グレイトポイズンラット
レベル:98
──────────────────────────────
残りは四分の三が鼠、残りの四分の一が肉食動物のような巨大な鼠だった。
色に違いは無いが一匹は毒持ち、二匹は多分麻痺持ちと名前から推測出来る。どれくらいの状態異常攻撃を仕掛けてくるかはわからないが、遠隔攻撃と噛み付き、引っ掻きを警戒しながら戦えば完封できるだろう。
こちらが体をネズミへと向けようとしている隙を逃さず、後方に居た一匹がヂュウッと鳴くと前方に居た二匹のネズミがこちらへと襲いかかってきた。
時間差での攻撃というなかなか厭らしい戦い方をしてくるようだ。一匹がこちらへ飛びかかると、残りのもう一匹は少しだけ間を空けてこちらへ飛びかかる。
一方は上半身へ、もう一方は胴体へ。
さて、残りのもう一匹は......
はぁ......知恵があるモンスターは面倒臭い。それが状態異常持ちだと尚更だ。
最後のネズミはこちらの死角へと素早く移動し、一匹目とかち合う瞬間にこちらへと飛び込んできた。
「アハハハッ......お前ら面倒臭いなァ!!」
全ては避けられない。どう動こうとも一撃を喰らうしかない凄く面倒な攻撃を仕掛けるネズミ。
油断はしていなかった。コイツらが一枚上手だっただけ......はぁ、厄介だなぁ......どいつの攻撃を受けるのがマシな選択肢なんだろうか......
──────────────────────────────
吉持ㅤ匠
闘人
Lv:0
HP:100%
MP:100%
物攻:80
物防:1
魔攻:40
魔防:1
敏捷:80
幸運:10
残SP:2
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残57.7L
不死血鳥
状態異常耐性Lv6
拳闘Lv4
鈍器Lv6
小剣術Lv1
簡易鑑定
空間把握Lv5
投擲Lv5
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
肉食ナイフ
布のシャツ
悪魔大土蜘蛛の反物
再生獣革のブーツ→八割再生
魔鉱のブレスレット
悪夢の棍棒
焦げた悪夢の棍棒
丈夫なリュック
厚手の肩掛け鞄
鱗皮のナイフホルダー
ババァの店の会員証ㅤ残高530
魔石多数
──────────────────────────────
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます