第32話 薔薇と青薔薇

「さて、陽炎」


「は、はい」


「始めるぞ」


「どんと来いや!!!」





一日が経過


シズや暁、タスクは先に帰っていた。


「ぜぇ…ぜぇ…」


「…全くと言っていいほど…」


「い、言わなくていい」


なんと丸一日模擬戦を通しても何も成長しなかった。


「ふむ…」

(またタスクのように『死の寸前の覚醒』を試すか?……いや、効果は無いだろう)


「どうすれば…」


「……」

(能力は電気のように消費量が多いものほど強力だが、単発や少ししか発動できない…………いや、待てよ?電気…………そうか!)


「う〜ん…」


「陽炎!」


「な、何!?」


「お前、どうやって能力を使ってる!」


「普通に…こうポンと」


「…」

(やはり、こいつ……短距離転移とか言う機械で例えるとスーパーコンピュータみたいに消費量がバカほど高いものを

『直列』で使ってやがる!)


電気回路はご存知だろうか?


電気回路には2つの種類が存在する。


直列回路と並列回路である。


直列回路は電圧が強い、だが長持ちしないという欠点がある。


並列回路は直列回路に比べ電圧は強く無いが長持ちする。


ローズは短距離転移という高電圧を必要とするものを『直列』で使っていたため短距離転移してしまうと身体強化まで力を回せず弱体化してしまう。


「…」

(やっと陽炎が転移した直後なぜか攻撃が弱い理由がわかった)


「ど、どうしたんだよ」


「よし、陽炎今から能力を発動させる時の感覚を変えるぞ」


「え、そんなことできるのか?」


「例えば、今からお前は1000メートル走を走るとする」


「お、おう」


「お前ならどうする?」


「どうするって…最初は飛ばさずに一定のペースで走るが…」


「そう、そうするとスタミナは長持ちする、だが、現在お前が短距離転移を使用すると」


「すると?」


「1000メートルを最初から全力疾走で走っているのと同じ、えげつない消費量になる」


「………どゆこと?」


「短距離転移を使った直後、お前は少しの時間だが弱体化している」


「え?…まじ?」


「気づいてないかもしれないが事実、

短距離転移を使用する前と後では全然威力が違う」


「そ、そうだったのか…」


「だからこれからお前には少し特訓してもらう」


「と、特訓…」





「これを背負え」


「リュック?」


「100キログラムのリュックだ」


「重っ!?」


重いと言っているが背負って立っている。


「あそこに短距離転移しろ」


九郎は近い場所に指を指した。


「?わかった」


そしてローズは転移した。


「移動したが…って、うお!?」


ズシン…と音を立てローズが潰れた。


「う、動かねぇ!!」


「これが弱体化だ」


「こ、こうなっていたのか…」


「今から、転移しても潰れない能力の発動方法を探してもらう」


「む、無茶な!」


「さっさと起きろ、そして早く転移しろ」


「鬼ぃ!!!!」






数時間後…


「………無理っす!!!」


「何してんの?」


「そ、その声は我が嫁シズではないか!」


シズが潰れたローズを見ていた。


「そんな恰好で李徴子みたいに言われても…」


「どうだ?何か掴めたか?」


「まぁ…なんとなくだが」


「よし、そのまま続行だ」


「休憩を…」


「やらん」


「(⁠´⁠;⁠ω⁠;⁠`⁠)ソンナー」





数時間後………



「お?」


「お」


ついに転移した後の弱体化を克服することに成功した。


「やっと……やっと成功した!」


「おめでとさん、さて…」


「やっと休憩…」


「次はその能力を強化しないとな!」


「(⁠´⁠;⁠ω⁠;⁠`⁠)ソンナー」






……………数ヶ月後


タスク、シズ、暁、カイザー、ベルは

食堂でとある会話をしていた。


「…にしても遅くない?」


「そういえば何ヶ月かローズと会ってないね…」


「結構手間取ってると思うよ」


「そうかもな」


そんな会話をしていると…


「久しぶり〜」


九郎が現れた。


「九郎さん!ローズは」


「今寝てるよ」


「そ、そうですか…よかった」


「心配性だなシズは」


「で、ローズはどんな具合に成長したんですか?」


暁が気になる事を問いかけた。


「見たらビックリするぞ?」



翌日…


「模擬戦?」


「ローズとですか?」


「そ、タスク、シズ、暁の3人VS陽炎の模擬戦」


「それって…」


「大丈夫…本気でやれ」


「本気…ですか」


「でないと、力量がわからない」


九郎は模擬戦専用のブレードを3人に渡した。


「3人とも頑張れよ」


「「「はい!」」」




「お、久しぶり〜」


いつもと変わらないローズが歩いて来た


「ローズ…」


「よし、模擬戦始めようか!」

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