第5話 成長期① 由来
8歳でもらえたプレゼントは明らかに手抜きだった為、覚えている。
「え?これだけ?」って母さんに聞いてしまったくらいだ。
その分ビデオレタ―を何回も見たので覚えている。
再生ボタンポチッとな
「おーっすカガミ!久しぶり!8歳の誕生日おめでとう!そろそろ自分の名前の由来とか学校で宿題に出る頃かな?」
隣で一緒に見てる母さんが「久しぶりって言ってるけど7歳の後すぐ8歳の撮影したんだよ(笑)」って言ってきた。
「ここまで大きくなって貰ってパパは嬉しいよ!今回のプレゼントはコチラ!ダァーラン!!
【釣りホタル】でーす!
これはこうして袋から出してパキッと折るとーあら不思議!
なんと光るのです!効果時間は3時間だけど、だんだん暗くなっていくから2時間しか信用しないでね♪ここに3個あるから夜にでも使ってください!おもしろいぞー!お菓子の戸棚の奥に張り付けてます。」
父さんは袋から出してビデオレター用に試しに折った【釣りホタル】を部屋の明かりを消してからビデオカメラの焦点が合わなくなるまで近寄せて自慢げに光らせた。
ぼんやりした黄緑色の光だけが映った画像の中で父さんが話し出す
「釣りホタルが消える前にその明かりで何かできるか考えてごらん。
ボーっとしてたらゆっくり消えていく釣りホタルは消えたことすらも気付かないから、限られた時間で、カガミ
小さい時父さんがよく言っていた言葉だった。釣りホタル折ったらいいのかな?
真面目な口調で、たまには親っぽい事言うんだね、と思っていたら
「しまった1本使ったからあと2本しかないや!ママ電気つけて電気!」
って騒いでる。
「母さん。父さんってバ」「素敵な人よ!」と食い気味に否定された。
「あ、そうだ!名前の由来だったねカガミは、【人の
ん??半分?もしやここから重要な所か?と思い集中して見ていた僕。
「残りの半分はパパの好きな お面ライダーで出てくる主人公が
だから
「サブキャラかいっ!!」
ベロ出しウィンクで笑ってる30代のオッサンを見て少し怒りを感じたけど、その後も真面目な顔に戻って言ってたんだ。
「でもこのカガミってやつが父さんは主人公よりも好きだよ。頑張って、努力して、報われなくても手を伸ばして
主人公は才能に恵まれてたけど、ほんとに強くてカッコいい奴はパパの中ではカガミだったんだ。」
10歳になると父さんから貰ったゲームは、ほぼクリアしていた。プロゲーマーと言う職業がある事を教えてもらって竜二からは
「カガミは上手いから絶対向いてるよ!」って言われて嬉しかったけど、
「2Dドット絵で賞金が出るようなゲームは無いよ」って竜二の兄ちゃんに言われて肩を落とした。
でも竜二は遊ぶ度に勧めてきた。僕が強いのか竜二が弱いのかはわかっちゃいるんだけど、何度も挑んでくる竜二のメンタルもすごいと思ったよ。
勝負がついてるのに何度も挑んでくる竜二にちょっと違うゲームがしたくなってイライラして聞いてみたんだ、
「何で勝てないのに僕と勝負するの?諦め悪いよね。」
僕は言った後に(あ、酷いこと言ったか)と焦ったが、
「
って不思議そうに問い返されて、釣りホタルに似たふわっとした黄緑色の瞳がこっちを見つめた時、竜二は全然怒ってなかった。
正直ビックリしたんだ。僕は悪いこと言ったなっていう思いは瞬時に蒸発して
、【こいつカッコいい!】と心から思った、【人の鑑】って竜二の事じゃん。
その後もその先もいかなるゲームにおいても、竜二が僕に対戦で勝つことはなく、かわいそうに思った僕によって作業系や共闘ゲームを中心に楽しむ事となる。
竜二の小学校の校区は隣で母さんに連絡してもらって平日もちょくちょく遊びに行っていたが、かなりの豪邸だった。竜二の2歳年上の兄ちゃん
その名も【竜一】もたまに遊んでくれてゲームばっかりしてるを僕たちを羨ましそう見ながら一緒におしゃべりをしていた。
家庭教師が来ると笑顔がなくなって竜二の部屋から出ていくんだけど、中学受験をするみたいでそれを聞いた時、何だかモヤモヤする気持ちになって
「竜二は受験するの?」って聞いてみた
「んーたぶんカガミと一緒じゃないかな?同じ中学だよね?」
「え?マジ!?中学一緒なんだ!!なんで??」
「やだって、カガミの校区とこっちの校区隣だし、中学はお互いの小学校の合併だよ。」
とあたかも常識のように言ってきたから
「へー!!竜二ってやっぱすげー!」って返すとそんなことないよって感じで軽く手を振って
照れながら 話を続ける
「高校もずっと一緒が良いなー あ、でも高校受験前に世界が終わってるかもしれないけど。」
って言われて何のゲームの話だよ!と頭めがけてチョップを一発突っ込んだ。
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