第11話……エピソード9……インド征伐

モンスーン……注①

1385年8月上旬月曜日午前9時…マジャパヒト

 アネックが25人の子供を連れてやって来た。ヘレネーの子アルビーナ女13歳、同じくアドルフ2世男12歳。この2人は皇女、皇子である。アドルフの部隊に入れた。

 エルダの子はアーキル男、アネックの子はアイダ女、ダーニャの子はタグリード女である。イマン、ラドミラ、ラーニャ、アガタ、シャイマー、キーア、ラガド、メリカ、トゥルンベク・カナム、イヴァンナ、スネジャーナ、ライサ、タマーラ、ファイーナ、フョークラ、ルフィナ、ソフィア、アンジェリーナ、ヌール、ナーディヤの子供は順にカイス男、ズカー女、スハー女、ガニー男、カラム男、ガーニム男、スアード女、ズィーナ女、ズバイダ女、カーミル男、ガーリー男、ガーリブ男、カーリム男、バーナ女、ハウラ女、バスマ女、ハフサ女、ハラー女、カターダ男、カマール男、カミール男である。

23人全員14歳になり、もう一人前だ。ビアンカの部隊に編入して鍛えてもらうことにした。男11名は戦闘員、女12名は兵站要員だ。子供達を全員幹部候補生にした。アドルフも頼もしく感じていた。皇子、皇女は別格で最初から幹部だ。正夫人の子と側室の子は区別しないと統制が乱れる。

 インド攻略に際して雨季「6月から9月」は避けないと大雨や洪水に苦しめられて引き返す羽目になりかねない。現にトゥグルク朝は2度もベンガル朝を陥落寸前にまで追い込みながら大雨と洪水に妨げられ結局は和平に応じている。アドルフはマラッカ港に向かい、マラッカで10月まで待機することにした。

1385年8月中旬月曜日午前9時…マラッカ宮殿

アドルフはビアンカに「アユタヤ朝のラーマーティボーディー2世33歳と皇女アルビーナ13歳との婚姻話をまとめて来い」と命じた。

 ビアンカは話を上手くまとめ、ついでにアユタヤから大量の米と中国からの絹織物や陶磁器、麝香、綿布、ビーズを輸入し、蘇木、金剛子「数珠の原料となる木の実」、白檀香、丁字、ナツメグ、ニクズク、メース、胡椒、鋼、亀甲、タイマイなどを物々交換で輸出した。

 皇女アルビーナ13歳はおびただしい数の引き出物や多額の持参金を持ってアユタヤに出発した。この結婚でアドルフ帝国はアユタヤにも影響力を持つようになった。

 ビアンカは輸入した大量の米と中国からの絹織物や陶磁器、麝香、綿布、ビーズなどと残った蘇木、金剛子「数珠の原料となる木の実」、白檀香、丁字、ナツメグ、ニクズク、メース、胡椒、鋼、亀甲、タイマイをすべてマニラのアネックのところに送り、ガレオン船貿易を行わせた。

 この貿易にはアドルフ2世も行かせた。用心のためにアネックを一緒について行かせた。交易の勉強のためには長い航海が望ましい。マラッカ宮殿に居るだけで濡れ手で粟の大儲けが出来るが、それでは本人のためにならない。大儲けをするためには苦労をすることが必要なのだ。

 自分で考えてやるのが一番良いが、2世、3世の身では難しい。まあ2世に生まれたのも本人の運命だ。配られた5枚の手札は上等過ぎる手札だ。最初からエース3枚、キングが2枚ある。上手く活用できるかどうかは本人次第である。

 その間はアドルフが息子、娘たちの肉体訓練を行った。身体の節々が痛いようだが、何事も鍛錬が大事だ。アドルフ2世と比べると手札は悪いが、良いところもある。自分で考えることが出来る点だ。これを上手く活かせば帝王になることも帝王の正妻になることも可能だろう。

1385年10月上旬日曜日午前9時…マラッカ宮殿

アドルフは満を持して、ガレオン船500隻、10万名の兵士、食料・資材、輜重資材を積み込んでベンガル王国へと向かった。

1385年10月下旬日曜日午前9時…ナラヨンゴンジ港

 マラッカ港から約2週間で首都のあるナラヨンゴンジ港に到着した。季節的に熱しやすく冷めやすい大陸の気温は下がりだしている。それに比べ海は熱しにくく冷めにくい。だからインド洋の気温は大陸に比べると高くなっている。海の暖かい空気は上に上がり、海の気圧は大陸に比べて低くなる。大陸に高気圧がとどまり、海に低気圧がとどまるわけだ。

 この場合は大陸側から海側に乾燥した空気が流れる。北東から南西に風が吹くのだ。夏は逆に海側から大陸側に湿った空気が流れて大雨になり、洪水が多発するというわけだ。

 いずれにしても好条件でアドルフ軍はエクダーラーの要塞に籠城しているベンガル軍に向かって進軍し、1週間で要塞に到着した。大砲や機関砲を撃ち込み、要塞は粉々になった。国王シカンダル・シャー以下男系子孫を処刑し、妻妾たちと降伏した部下たちを捕虜にした。

今回はここまでにいたしましょう。

次回をお楽しみに。

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注① ……モンスーン

各地の季節風

 北半球が秋に入ったころから、ユーラシア大陸中央部にシベリア高気圧が発達し始める。この高気圧からは乾燥した冷たい北東季節風が吹き出す。インド・ネパール・バングラデシュなどの南アジアでは、11月前後から5月頃までこの北東季節風による乾燥した気候が続く。

 しかし、夏になるとシベリア高気圧が弱まり、西アジアに気圧が低い地域ができ、南インド洋やオーストラリア付近からこの低気圧に向かって南西季節風「インドモンスーン」が吹き出す。6月になると、インド南西部からこの季節風が強まり始め、次第に北東へ広がってゆく。これに伴い、インド南西部から長い雨季が始まる。雨季は9月まで続き、この地域の年間降水量の4分の3以上がこの時期に降る。そのため、10億人を超える南アジアの人口を支える農業や生活は雨季の雨に依存しており、この時期の少雨は食料不足や飢餓などの深刻な問題を引き起こす要因となる。しかしいっぽうで、長雨により各地で毎年のように洪水が起き、大きな被害を出している。

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