第1話…エピソード14…最初の戦い

★中央アジアの人々のことわざ

もし君が神にのみ希望を託すなら、その希望から得られるものは僅かだ。

★不逞な企み……アジア第一と賞されたフセインの后シェケル・ハトゥンに一目

惚れしたアドリアンは密かにシェケルをフセインから奪おうと計画を立てた。

どうせならフセインを殺してクニャ・ウルゲンチ城毎獲ってしまうのが得策だ。

 ただ今直接ぶつかっても勝算が持てない。良くても5分5分だ。そうだ。

カレーズの竪穴から水路に入り、城の井戸に侵入しよう。

これなら出来るかも知れないな。駄目で元々だ。一度試みて見よう。

城の中に井戸は必ずある。


(1365年4月のある一日)午前7時……バルチャリケントの春営地

 3月末から4月の始めに掛けて家畜が一斉に出産した。

アウルの人々特に牧夫達は目の回るような忙しさであった。


 それが終わると馬の剪毛とラクダの剪毛が始まる。1ヶ月位続く。

ラクダの毛は

1)頭の頂、首、肩の下、ふたこぶラクダのこぶからの長い毛(シュダ)。

これは最も強い糸、ラシャ、袋物、投げ縄などの材料となるものである。

2)背中と脇腹からの毛である(ジャバギ)。

これは荷物をのせたりしたために、フェルトのようにつまっており、

外套や毛皮の材料となった。

3)以上の部分以外の毛(トゥエジュン)で、

ほとんど牧地に自然に落ちてしまうものである。


 バイの人々はこれを集めて、袋物や長衣のためのラシャの材料にした。

馬の毛もラクダの毛も交易の商品になる。

狼が家畜の子供を狙うため子供は別の囲いの中に入れている。


 アドリアンと妻達・弟妹達及び従兄弟・従姉妹たちの出番である。

狼退治は重要な仕事であった。狼退治を兼ねて春営地から冬営地を巡回した。

アドリアンは思い出してウルゲンチまで足を伸ばす事にした。


 途中ユルタを張り宿営しつつ、ウルゲンチに向かった。

31名の宿営の為にユルタを31戸設営した。

アドリアンは久し振りにライサ、スネジャーナ、ファイーナ、

フョークラの4人と共寝して、全員が満足し、昼迄眠り込む有様であった。


 朝昼兼用の食事時はアドリアンの周りに女共が犇めき合い、

ベタベタとアドリアンにくっつき口移しでアドリアンに食べさせた。

漸くウルゲンチに着いたアドリアンはフサインにお目通りを願った。


 王妃達に話を聞いていたフサインは大歓迎してくれた。

以前に一度会った事を話すとフサインは直ぐに思い出し、

「今でもサクサウルの木を植えているのか」 と聞いて来た。

今でもサクサウルを切った分の3倍を植林しております。

イェンドやヤギケントではサクサウルの木が以前の10倍に

増えております。


 フサインは感心して王妃や王女に改めて紹介してくれた。

アドリアンはこの日の為に残しておいた中国土産を2人にプレゼントした。

絹織物・麝香・ルビー・ダイヤモンド・真珠・大黄等の香辛料等である。

フサインには金のインゴットを100枚寄進した。

フサインと王妃・王女は大喜びした。


 贈り物の御礼に宴会を楽しんで貰おう。

豪華な宮殿料理と酒が提供された。


 アドリアンにはある考えがあった。

シェケル・ハトゥンを我が物にしてしまおうと思ったのである。

シェケルに近づき、もう一度プロポーズした。シェケルは動揺した。

別室に誘い、口説きに口説いて、少し2人は仲良くなった。

元々シェケルにはその気があったので最終的にはアドリアンを受け入れた。

再会を約束させて身支度をした。ハンや王女は宴会に興じている。

弟妹達も頑張って2人のために時間を稼いでくれている。

王女とハンの所に挨拶に行き、ご馳走の御礼を述べて退散した。


 ウルゲンチ城に諜報員を10名忍ばせた。

報告は冬営地に常駐しているテムジンにするよう命令した。

諜報員には危険手当込みで年俸金のインゴット20枚を支給した。


 キジルクム砂漠に自生しているホンオニク、黄ニクジュヨウ、

迷ニクジュヨウや蓬ヨモギを収穫し、春季収穫時期の

コウバクニクジュヨウを全て収穫した。

収穫していないサクサウルの木の根本に2ヶ所「深さ60cmと100cm」

コウバクニクジュヨウの種を植え付けておいた。


 3年後、4年後収穫の物である。収穫した物は根本を一部残しておくと

また3年、4年後に収穫できる。

 手作業で収穫する場合には、1回の収穫で生重量60kgの収穫が見込まれる。

労働者1人あたりが1日2回作業を行い15日間従事すると、

60kg/回/人×2回/日×15日=1,800kg「生重量」の収量が見込まれる。


★乾燥・蒸熱/湯通し・乾燥・スライス・パッケージング

【加工プロセスの概要】

 収穫したニクジュヨウはまず乾燥させ、

それを蒸熱もしくは湯通しした後さらに乾燥させる。

乾燥工程の結果、水分が抜けるため、

乾燥量は生重量の1/5から1/7にまで減少する。

乾燥させたニクジュヨウをスライスし、パックしてから出荷する。

これらの工程に資機材は不要である。


 乾燥は軒先などの自然乾燥でも対応でき、簡単な指導を行えば、

農家でも対応することができる。

諸作業を終えてテムジン管理の砦の地下倉庫に格納した。

砦に深さ100mの井戸を掘り、横穴を40本掘った。

その内の1本に更に分岐させて複雑な迷路のような竪穴を

縦横に張り巡らせた。その内の何本かに倉庫を沢山作った。

金のインゴットを全部保管した。

 別の倉庫にはニクジュヨウの乾燥パックを保管し、

冬季用の食料も沢山保管してある。

銃火器用の黒色火薬も別途保管している。


 サマルカンド攻略用のトンネルも横穴から引くつもりだ。


(6月のある一日)午前7時……バルチャリケントの春営地

 サマルカンドのラシードから早馬が来た。

「中国に交易に行った部隊が帰って来た。

金塊100トンの5倍500トン分の塩引手形えんいんてがたを取りに来てくれ。」

と云う連絡だ。

 夏営地への移動はカサル、カチウン、ベルグタイの3人に任せた。

戦闘奴隷5,000名と騎馬を5,000頭購入した。

3人を千戸長に任命した。

軍政費用として金のインゴット30枚渡した。

年俸を金のインゴット10枚ずつ支給した。

兵隊達にも金のインゴット2枚ずつ支給した。


 交易に行かせるスブタイ、クビライの2人も千戸長に任命した。

同様に年俸を金のインゴット10枚ずつ支給した。

 スブタイとクビライに命じてサマルカンド→西安→サマルカンド

へと交易に向かわせた。


 スブタイとクビライは

2,000名の騎馬隊を引き連れて、サマルカンドに向かった。

サマルカンドで2万名の戦闘奴隷と2万頭の騎馬を購入した。

金塊500トン分の塩引手形えんいんてがたを積んで中国に向かった。

 スブタイとクビライは天山北路を通り1月で西安に到着した。

絹織物・麝香・ルビー・ダイヤモンド・真珠・大黄等の香辛料・紙・

武具・武器・銃器・黒色火薬を購入した。

詰めるだけの食料を買い込んでサマルカンドに向かった。

無事に到着し、全部売却した。


 金塊5,000トン分の塩引手形えんいんてがたを得た。

ラクダを1万頭、戦闘奴隷8,000名、

騎馬を8,000頭と食料を買えるだけ買い込んだ。

スブタイたちは騎馬隊3万名、ラクダ1万頭でテムジンの所に戻った。


 金塊4,500トンを地下倉庫に格納した。買い込んだ戦闘奴隷を再編成した。

戦闘に特化できる者、工兵、建設作業員、牧夫、調理人、鍛冶屋、

交易商人に分けたのである。戦闘員2万名、工兵2,000名、牧夫2,000名、

調理人500名、鍛冶屋400名、建設作業員5,000名、

交易商人100名となった。


 此処には調理人100名、鍛冶屋100名、建設作業員5,000名を残した。

アドリアン様に言われた通り、外壁の設置とブハラまでのトンネル建設を命令した。


★留守部隊のアドリアン

(6月中旬のある一日)午前7時……バルチャリケントの春営地

 アドリアンは夏営地イマキヤに急いで出発した。途中で何者かに襲われた。

1万名程度の集団だが無謀な奴らだ。全員ひっ捕らえて尋問した。

シバン系の集団だった。丁度良い時に襲われた。

トイ・ホイージャとトクタミシュを殺してしまおう。


 暗殺部隊を差し向けどさくさに紛れて2人を殺した。

別の部隊がトクタミシュの妻妾達を助けに行った。

「俺達もシバン系の集団に襲われたんだ。何とか逃げてきた」

と騙してトクタミシュの妻妾達を助けた。


 捕えたシバン系の集団を更に尋問した。

「どういう目的で襲撃したのだ。理由を言え」

「間違えた」 としか言わない。

「誰と間違えたのだ」 「オロス派の奴らだと思った」

「何だと!トグリ・テムルの命令なのか?只では済まんぞ。俺はアドリアンだ」


 尋問の途中でトグリ・テムルから連絡があり

「勘違いした。許してやってくれ」 と云う。

連中を捕らえてスグナクまで急行した。


 トグリ・テムルの息子を連れてハンに面会した。

「息子を許してくれ。助けてやってくれ」

「オルダバザール、イマキヤ、マンギシュラクとヤンギケント及びカラガンダ炭田、

ルドニー鉄鉱山とバルチャリケントを俺に寄越せ。そうしたら助けてやろう」

トグリ・テムルは約束した。


 ヤギケントに城を築き、各営地に戦闘員2万名と騎馬2万頭を配置した後

シバン系の王子達とトグリ・テムルの息子を釈放した。

助けた妻妾達は皆妻にした。喜んでいた。


 もう一度スブタイたちに金塊5,000トン分の塩引手形えんいんてがた

を積んで中国に向かわせ、金塊5万トン分の塩引手形えんいんてがたを得た。


(10月のある一日)朝7時……ヤンギケント城

 妻達11人が出産した。男子6人、女子5人である。

エカチェリーナ……ヴェロニーカ女

ラガド……アキム男

イヴァンナ……アレクサンドル男

ライサ……アフクセンチー男

スネジャーナ……アガフォン男

ファイーナ……アダム男

フョークラ……アズレト男

ラドミラ……アデリーナ女

ルフィナ……マイヤ女

タマーラ……エカチェリーナ女

ソフィヤ……レイラ女

以上の様に名付けた。


 両親と叔父達が成果を得て帰って来た。

銃火器の現物を手に入れて来てくれた。銃装備の歩兵と砲兵である。

アドリアンは改良に取り掛かった。

機関砲は1ヶ月に5台作成できる。両親をジェンドの軍政長官に任命した。

騎馬弓兵2万名と騎馬槍兵1,000名を駐屯させた。

軍政資金として金塊10kgを支給した。


 叔父夫婦2組をマンギシュラクの軍政長官に任命した。

騎馬弓兵2万名と騎馬槍兵1,000名を駐屯させた。

軍政資金として金塊10kgを支給した。


 オルダバザールはジェベ、イマキヤはムカリを軍政長官に任命した。

騎馬弓兵2万名と騎馬槍兵1,000名を駐屯させた。

軍政資金として金塊10kgを支給した。


 ジェルメをバイの代理人に任命した。

騎馬弓兵2万名と騎馬槍兵1,000名を率いさせ、

軍政資金・アウル維持費用として金塊10kgを支給した。


 アドリアンは夜伽の順番を年齢順と決めて実行した。

妻達は2度目の妊娠をした。それぞれ子供を乳母に預けた。


 ラドヴィガ40歳、ウスティーニャ24歳を紹介した。新しい妻だ。

仲良くしてやってくれ。ラドヴィガを伽に呼んだ。

大歓迎して、手を押し抱かんばかりにして迎えた。

ラドヴィガもこの歓迎ぶりに悪い気はしなかった。


 アドリアンは薬酒と滋養強壮エキス入りの蜂蜜酒を勧めた。

ラドヴィガと仲良くしたアドリアンはラドヴィガを帰して

ウスティーナを次に呼んだ。


 ウスティーナ24歳、頭が切れて、運動神経抜群の筋肉女子だ。

身長185cm、体重80kg、B120cm、W70cm、H125cm豊満で固太り、

姿形は均整の取れた素晴らしい美女である。

特製エキス入りワインを飲みながら、豪華な夜食を食べた。

ウスティーナに色々聞いた。

 意外なことにウスティーナは無口で清楚な女性だった。

勿論荒々しいとは思っていなかったが、もっと良く喋る男勝りな女と思っていた。

何とも言えず所作が女性らしくて、アドリアンの好みのタイプだった。

2人は仲良くしてから朝までぐっすり眠った。


 アドリアンは秋営地を出発したムカリの部隊をヤンギケントの駐屯部隊とした。

自らは騎馬弓兵2万名と騎馬槍兵2,000名及び工兵2,000名、兵糧馬車隊5,000名、

ラクダ1万頭に金塊5万トン分の塩引手形を積み込んでサマルカンドから

天山北路を通って西安に向かった。


 途中で秋季収穫のニクジュヨウを収穫し、

来季の種をサクサウルの木の根本に2ヶ所寄生させた。


 西安でニクジュヨウを売却し、絹織物・麝香・ルビー・ダイヤモンド・真珠・

大黄等の香辛料・黒色火薬・小麦・米・味噌等を購入した。

西安に広い敷地を購入し、邸宅を建設した。

現地の役人に賄賂を渡し、交易のための根拠地として許可して貰った。

ボロクルを責任者とした。騎馬槍兵1,000名及び工兵1,000名を駐屯させた。


 サマルカンドに帰還するともう冬が来ていた。金塊50万トンの手形を得た。


(1366年の冬正月)午前10時……ヤギケント城

 鉄砲鍛冶職人の養成に力を入れた。これからは銃火器の時代だ。

一度手形を金塊40万トンと10万トン分の手形に交換した。

ヤギケント城の地下井戸の横穴倉庫に金塊40万トンを格納した。


 もう一度金塊10万トン分の手形を持ち、西安に行った。

サマルカンドで売却し、金塊100万トンを得た。大部分は倉庫に埋めた。


(1366年の冬2月)午前10時……ヤンギケント城

 林夫人、李桂児、李桂姐が出産した。

順に林明明、李太郎、李一郎と命名した。

林明明は李桂児、李桂姐が面倒を見る。


 ウスティーナを親衛隊長に抜擢した。

妻達と弟妹達の部隊「騎馬槍兵5,000名」を総括する重責を担って貰う。

アドリアンはカラ・キシ(非ジンギスカン)が支配する王朝ホラズムの

スーフィー朝に対して宣戦布告した。


 速やかに降伏してジョチ裔のアドリアンに城を明け渡せ。

フサインはせせら笑って断って来た。


 アドリアンはテムジンと共同で城を包囲した。


★城外のカナートの竪穴から水路に侵入し、城内の井戸から上手く侵入できた。★

 以前に侵入させた諜報員に指示して王妃と王女2人及び女官達を外に避難させた。

一気に雪崩込み降伏する者は助け部下にし、逆らう者は皆殺しにした。

フサインとユスフ及び男系子孫を全員処刑し、妻妾達は王妃と王女2人を妻にした。


 シェケル・ハトゥン30歳、トゥグディ・ベグ16歳、

ソユン・ベグ14歳の3人を新しい側室にした。残りは側女にした。

シェケルはジョチ・ウルスのウズベグ・ハンの娘であり、

アジア第一の美女である。


 キャトとヒヴァも降伏した。ヤンギケントにスブタイとクビライを駐屯させた。

アドリアンはクフナ・ウルゲンチ城に駐屯した。

キャトにはボフミルを城主として駐屯させた。

ヒヴァにはカルタンを城主として駐屯させた。

スブタイ、クビライ、ボフミル、カルタンには軍政資金として

それぞれ金塊100kgを支給した。


 アドリアンはアドリアン・ハン国を樹立し、

クリルタイを開きハンたる事を宣言した。

コンギラト部族は全員アドリアンに従った。


 新しい妻シェケルがアドリアンの王子タギタイを産んだ。


★アドリアン16歳、女たちの出産予定

エカチェリーナ……8月

ラガド……8月

イヴァンナ……8月

ライサ……8月

スネジャーナ……8月

ファイーナ……8月

フョークラ……8月

ラドミラ……8月

ルフィナ……8月

タマーラ……8月

ソフィヤ……8月

ラドヴィガ40歳、ウスティーニャ24歳……9月

シェケル・ハトゥン30歳、トゥグディ・ベグ16歳、

ソユン・ベグ14歳……12月

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