2-62. 稀有な出会い
どれくらいの時間が過ぎたのか、のぞみには分からなかった。
真っ黒な空間に意識だけが浮かび、薄々と自分の存在を感じはじめる。のぞみは、自分が膝を抱え、宙に泳いでいることを認識した。
夢の中にいるような、未知の空間にいるような。天地がどちらにあるのかもよく分からないその場所で、のぞみは自分の体が光っていることを知る。体はふわふわとして、身軽な心地だった。
(私、死んじゃった?……ううん、ちゃんと息してる。心臓の音も聞こえるし、源気(グラムグラカ)もよく体を巡ってるし、まだ生きているはず……)
のぞみは頭を上げてみる。目を開けても、そこはやっぱり、真っ暗闇の中だった。
(ここ……どこ?夢、それとも、『天眼』で見た宇宙?いや、その能力はまだ回復していないのかな?)
のぞみは宙を泳ぐように、手足を伸ばす。
(ここで寝てちゃダメ!誰かが創った空間に吸い取られてるのかも。出る方法を探さないと)
遠くから、鈴の揺れる音が聞こえた。
鋭く、軽いその音は、一定のリズムで鳴っている。のぞみはその音が、生家の祭典でよく聞かれたことを思い出す。
意識を研ぎ澄まし、のぞみは首をあちこちに向けて音の発する方を探す。すると、少し遠いところに、一点の明かりがともった。その光は、静かな水面に一滴の雫が落ちたときのように波立つ。光の波は伝播していき、その光の当たったところから、真っ白な花が咲いていく。真っ黒だった空間に無数の花が咲き広がり、やがて、オセロの石が裏返されるように、白い花の面積の方が広くなった。
空間に風が吹いているのか、花びらが吹き寄せられる。
のぞみは手を伸ばした。
しかし、花びらは掴めず、光はのぞみの掌を貫通していく。
奇妙な現象を感じながらも、のぞみはその空間に馴染んでいる気配を探っていた。
(
花弁は一箇所に集められていく。並の源使いよりも強い存在に気付き、のぞみは体ごとそちらを振りあおいだ。
(そこにいるのは、誰?)
集まった花びらは、次第に女性の姿へと形を変えていった。
女性は艶々とした長い髪を揺らし、
揺れる前髪は長く、のぞみからはその女性の目ははっきりと見えない。髪の色も皮ふの色も判別が付かず、ただ、その女性の体が光っていることだけが分かる。のぞみの質問にも答えず、ただ、口元にわずかな笑みを浮かべた気がした。
思念体や悪霊、ハイレベルな聖霊なのだろうか。これまで経験のない存在だとのぞみは思ったが、意識に流れこんでくる思念は妙に馴染み深く、まるで母親に抱きしめられているような、安心できる感覚だった。
女性がある方角を指差した。のぞみがそちらを見ると、宙空に『
複数の円は、記憶の断片のように様々な映像を映していく。のぞみはそこに、2年A組のクラスメイトたちや、ルビスの課題を攻略中の自分たちの姿、強化合宿中の出来事など、同級生に関わる映像を見つけていく。
さらに、多くの映像に映る人物が、のぞみにある事実を明らかにさせた。のぞみは切ない気持ちになり、それでもまだ納得できないこともあった。
(やっぱりそういうことが。でも、どうして彼女は……)
のぞみは見せられているものが何なのか、まだ整理が付かないままだった。だが、目の前の女性の示す能力と、その存在自体に、尋常ではないほどの驚きを覚えた。
のぞみがその女性の方を見る。女性の目元がチラリと見えた。彼女は何か喋っているようだが、その声は聞こえない。ただ、意識に直接流れこんでくる思念が聞こえてきた。
(き、お、つ、け、て、く、だ、さ、い、の、ぞ、み、さん)
のぞみはその女性の正体が気になって、意識を高めて何とか伝えようとする。
(教えてください。あなたは一体誰ですか?)
のぞみはその女性をじっと見つめ、女性ものぞみに微笑みを見せた。
そしてのぞみは女性に手を伸ばした。その瞬間、女性はまた花びらとなり、散ってしまった。びっくりしたのぞみは、それで目が覚めた。
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