第9話 目的の場所を間違えて
「ツムギ!ちゃんと注意して見ないと!」
「見てるよ!大丈夫……」
テストも終わりそうな頃、苛立ちながらナオに返事をしているとツムギ。そんなツムギに向かって大きな石が飛んできた。気づいた時には避けきれない距離のその石を、無理矢理避けようとしてバランスを崩し、地面に落ちてしまった
「……痛い。ルト、ララ。大丈夫?」
二人に声をかけながら、ゆっくりと体を起こし座ると、元気そうなルトとララが、地面に落ちた時に出来た、ツムギのたくさんの傷を見て心配そうに体を触る。ルトとララに触られて痛む傷に、一気にテンションが下がっているとカホとナオがツムギの元にやって来た
「ツムギ、大丈夫?」
カホが声をかけると、痛みを誤魔化すようにエヘヘと笑うが、ルトとララの様子を見て、ナオがはぁ。とため息ついた
「あーもう……。ルトとララも怪我してるかもしれないから、早く保健室行きな。残りは私達がするよ」
「そうだね。ほとんどテストも終わりだし、ツムギの分の報告も私達がしておくから」
そう言うと二人の顔を見た後、今度はルトとララを見ると、心配そうにツムギを見ているルトとララを見て、
ゆっくりと立ち上がると、カホとナオを見て、またエヘヘと笑った
「……じゃあ。保健室に行ってくる。二人とも頑張ってね」
「後で保健室行くから、それまでちゃんと休むんだよ」
見えなくなっていくツムギの後ろ姿に大声で叫ぶナオ。声が聞こえたのか二人に届くように、大きく手を振って返事をして、保健室にまた歩きだしていった
「はぁ……。戻ったはいいけど、テストの点数すごく悪くなるな……」
学園に戻るなりテストの事を思い出して、トボトボと足取り重く歩くツムギ。抱きしめられているルトとツムギの肩に乗っているララが、その様子を心配そうに見つめていると、誰かがツムギに気づいて声をかけてきた
「おや。ツムギ君か」
「……はい」
突然呼ばれた声に少しうつ向きながら振り向くと、そんなツムギの表情を見て、不思議そうな顔をしているリンがいた
「テストはどうした?」
「ちょっと怪我しちゃって、保健室に……」
「校庭に、医療班はいなかったのか?」
「あっ、そうだった……。忘れてました。戻ります」
リンの言葉で、医療班の事を思い出して、来た道に振り返るツムギ。はぁ。とうつ向きながら歩くツムギの後ろ姿を見届けているリンが肩に乗っているララに気づいて声をかけてきた
「ツムギ君。レアスの子は、どんな様子だ?」
「ララですか?特に変わりはないです。ご飯もたくさん食べてるし……」
リンに見つめられ、ツムギの頬に抱きつくララ。その様子をムッとした表情でルトが見ている
「そうか。それは良かった。君のその子とも仲も良さそうだな」
ツムギの返事を聞いてクスッと笑うリン。すると、リンを探していた職員が、慌てた様子で駆け寄ってきた
「リンさん。出発の用意が出来ましたが、もう行かれますか?」
「ああ。もう行こうか。それじゃあツムギ君、早めに怪我を治してもらうんだよ」
ツムギにそう言うと、職員と共に去っていくリン。その後ろ姿を見てツムギがポツリと呟いた
「レアスを探しに行くのかな……」
その声を聞いて、ルトがララに近寄り頬を触って怒った顔をしている
「もー。二人とも、喧嘩しないでってば……」
ため息混じりにルトとララの喧嘩を止めながら、医療班のいる校庭へと歩いてくツムギ。校庭につくと、ツムギと同じくテストで怪我をした生徒が、あちらこちらと集まりはじめていた
「ここじゃなかったか……。また探すの面倒……」
その頃、レアスは一人息を切らして何やらポツリと呟いていた。よろけながらも、ゆっくりと立ち上がるその体には沢山の切り傷がついている。ふぅ。と深呼吸をしながら後ろを振り向くと、見えた光景に嬉しそうにクスッと笑った
「あと少し……。もう少ししたら、戻ってこれるからね。ララ」
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