2.

 蒸気スチーム・機関エンジン都市・シティ

 蒸気の力が全てを支配する都市まち

 半径三百キロメートル、高さ百メートルの円形の台地。上面の面積は二十八万平方キロメートルを超える。

 その台地上面は、都市構造物……鉄・真鍮・石・ガラス・煉瓦をもとに造られた建物の群れと石畳の街路で隙間なく覆われている。

 世界にたった三つだけ残された都市の名は〈エンジンナム〉〈エンジントン〉そして〈エンジンバラ〉

 張り巡らされたパイプを高温・高圧の蒸気が伝い、部屋を温め、シリンダーに流れ込み、昼夜を問わずピストンを押し下げ、クランクを介して歯車を回す。

 回転する力は、物体を動かし、伸ばし、押し潰し、物体は形を変え部品になり、部品は組み立てられ商品になり、蒸気を吐く機械仕掛けの馬車で運ばれ、店先に並ぶ。

 商品は買われ、使われ、やがて壊れ、ゴミとなり、回収され、坩堝るつぼで溶かされて、再び原料となる。

『都市』という巨大な一個の構造体の、機械仕掛けの、生命活動。

 人間も、その一部に過ぎない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る