第45話 足

「ということで古市。脱げ」

「……へっ」

「先輩。言葉が足りません。それは単にお巡りさん呼ぶ必要が起こるだけです。むしろ呼びましょうか?」

「—――確かに」


ふざけていたわけではないが。ちょっと言葉が足りなかったらしい。古市からは何を言っているんですか?という視線と。吉野からは氷のような視線を受けた俺だった。仕方ないだろ。こういう場面でどうしたらいいのかとかちょっと考えつつだったからそんな言葉足らずになったんだよ。


「……古市。その引きずってる足の靴下を脱げ。でいいか?」

「……大丈夫ですよ。大袈裟ですよ」

「なら確認だ。脱がすぞ?」

「先輩。私がします。先輩がすると逮捕ですよ」

「…………悔しいがなんか何も言えん」


まあ脱がす脱がす。とか俺は言っているが――実際どうしたらいいんだよ。状態だったので吉野ナイスである。


「えっ、夜空ちゃん」

「古市さん。嫌がると。他の物脱がしちゃうかもですよね」


そんなことを吉野は言いながら古市の前にしゃがんだ。


「……吉野。お前の方が犯罪の香りプンプンしてるぞ」

「なっ……そ、そんなことは――」


とか言っていると。古市は大人しく自分でまず靴を脱いで……その後。靴下を脱いだ。って古市が自分で下から……俺と吉野が馬鹿なやりとりをしていただけになったじゃないか。


「って……何したんだよ。これ」

「腫れてる」


言い方は……ちょっと問題あるかもしれないが。まあ古市の足は綺麗なんだよ。うん。いつかの体育館でなんか余計な物のとともに見た気がする……ってまあ足は普段から見えてるか。ってこんなこと言わなくていいよな。


とりあえずだ。


綺麗な足のはずの古市なんだが……なんか足首あたりが紫色というか。なんか正常ではない色をしていた。


「……」

「ほら、なにがあった。古市。朝は何ともなかったんじゃないか?」

「……古市さん?」

「……その……あはは」


と、古市は何をしたのか話し出した。


……。

……。

……。


「—―つまり。大浴場に行った時に床が濡れているのに気が付かないで滑ったと」

「……うん。ドジりました。幸い誰も知っている人は居なかったかた……他のお客さん?にはちょっと見られましたが。まあセーフです」

「どこがセーフだよ。こんな色してて」

「そっか。だから大浴場に古市さん行ったはずだったのに身体が暖かくなってなかったんだ」

「吉野はどこで判断してるんだか……」

「だって……もしかしたら先輩に見られたくない何かがあって部屋出てったのかなー。って」

「その可能性は全く浮かんでなかったが。もしそれだった場合。今吉野がバラしたと」

「なっ」

「吉野は時々自爆するからな」

「もう、って古市さんこれ痛いよね?」

「ちょっとだよ。ちょっと。靴擦れみたいな」

「いやいや普通に変な色だし。これ先生らに見せに行くのがいいだろう」

「大丈夫ですよ。ゆっくりなら移動も大丈夫ですから」

「いや、もしかしてがあるからな」

「うん。私も無理はしない方がいいと思う」


俺と吉野が言うと……古市は下を向いた。


「ってかまあ集合場所のどこだっけ駅前の駐車場か。そこまでまだ結構あるんだよな」

「うん。結構歩くと思う」


そう言いながら吉野が冊子で場所の確認をしている。


俺たちは自由時間は長いからということで、はじめは駐車場とは真逆の方向に歩いてぶらぶらしていたからな。集合場所までがかなり今の場所からだと遠いんだよな。


「……ごめん」


と、俺と吉野が現在地確認をしていると……完全に古市の元気がなくなってしまった。まあこのままここに居ると……なので。


「吉野。コンビニってこの辺あるか?」

「えっ?あっ。そっか」


と、吉野は俺が言ったことで何かピンと来たのか、スマホで検索を開始。


「先輩。少し歩いたところに。駐車場方面ではないですけど」

「よし。じゃまずそっち行くか。って古市。乗るか?」

「へっ?」

「いや、古市を運んだ方が早い気がしてな」

「いや……それは……恥ずかしいというか――」

「でもとりあえずコンビニで包帯かなんか買って固定して駐車場に行って先生にパスだろ。多分こんなところに居ても先生は通らないだろうし。こっちから向かった方が早いだろ」

「う、うぅ……」

「ほら。乗る」

「……じゃ……葛先輩。すみませんが……あ、あと……そのスカートなので――」

「はいはい、気を付けてやるから大人しく乗れ」

「……」


古市の前に俺はしゃがむ。


「吉野」

「は、はい」

「なんで吉野もフリーズしてるんだよ」

「……そ、それは先輩が……優しいから?」

「……吉野の俺に対する評価って――っていいから早く行こう。時間が経てば人も増えて目立つぞ?」


ということで俺は古市を背中に乗せて――まずはコンビニへと向かった。


まあコンビニに入る時に店員から変な視線があったが……まあイートインのコーナーがあったのでそこにまず古市と吉野を。そして俺は店内で……包帯やらやらを探して……購入。そしてイートインコーナーへ戻った。


「吉野。大丈夫そうか?」

「う。うん。前にちょっとやったことあるから」


と、こういう時に経験者がいると助かる。たまたま吉野が固定をできる。と言っていたので……まあ一応スマホで確認しつつだが。

包帯でくるくる……って吉野なかなかやるじゃん。うん。


「どう……かな?大丈夫?古市さん」

「うん。ちょっと楽になったかな」

「まあホントは安静にして冷やせとかだろうが。まあちょっと固定だけしてとりあえず駐車場まで行くぞ」

「葛先輩……ごめんなさい。夜空ちゃんも」

「いいからほら。また乗る」

「あっ、先輩」

「うん?なんだ吉野?」

「荷物持ちます」

「あ、悪い」

「古市さんのも」

「ありがとう。夜空ちゃん」


俺たちはコンビニを出発。まあこの応急処置がどれくらい効果があったかは知らないが……まあ固定してないよりは古市も楽とか言っていたのでまあよしだろう。


それから俺たちはしばらく歩き続けて――。


「吉野。これで道あってるか?」

「た、多分」

「多分とかやめてくれよ」

「そこを曲がったら……だと思う」


と、まあ地図を見ている奴が……ちょっと、だったが――。

まあ吉野が一番俺たちの中では手があいているからな。吉野先頭で俺たちは何とか駐車場。集合場所へとやって来たのだった。

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