争いの煙(6)

 村の家々は倒壊し、無残にも材木の山になっていた。


所々から黒煙が昇り、襲撃を受けてから、まだ間もない事がわかる。


倒壊した家々に沈み始めた夕陽の光が当たる。


影が伸びて、倒壊した姿を際立たせる。


空は、青空から黄昏に変わる途中だった。


夕陽に向かって、色調が段階的に変化している。


村人の多くが、倒壊した家の下敷きになり、意識が無い。


崩れた門の近くに、母子が横たわっている。


母は最後まで子供を守ったのだろう。


子供に覆い被さるように母が倒れている。


ノキルは、奥歯を噛み締める。


ノキルは、その母子を横目に、馬に乗ったまま、村を歩く。


馬の歩く、ひずめの音が、異様に響く。


息のある者を目視で探していく。


しかし、誰一人として、動く者は居ない。


この村で一番賑わう広場に着いた。


広場も材木の山と化していた。


出店も朽ちて、果物などが散乱している。


物を捨てられたように、村人が、ごろごろと倒れている。


ノキルは考えていた。


敵は少人数だ。


大勢である場合、踏み歩かれて、果物などが原型を留めているはずがない。


アルス様、お一人なのか?


確かに、剣技に長け、弓技にも長けていた。


ノキルは、アルス様から教授を頂いていた頃の記憶を思い出していた。

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