消滅した町 §8 船上にて

 俺だよ、俺。ジョナサンだぜ。

 艀町バージュヴィーユを出て、今はウンブラ河を遡航してる。4日目だ。

 はしょり過ぎだって?じゃあ簡単に説明しといてやるぜ。


 あの後は東詰めの砦から蜥蜴兵の増援やら、哨戒中だった飛空騎兵隊やらが駆けつけて、戦況は好転したんだ。

 それでも丸一日潰れて出発が翌日朝に伸びてしまった。

 地元の連中にはとても感謝されたぞ。


 で、翌日、船着き場なんだけど、船が無い。

 渡し用の艀や小舟はあるんだけど、俺たちが乗る船が無かったんだ。

 そしたらな、ドトンタ翁〜ノームの爺さんな〜が持ってきてるとか言うんだよ。

 はあ?って思ったね。


 そこからがびっくりなんだが、爺さん、平底船の模型を取り出したんだ。呆けたんじゃないぞ。

 何か唱えると、模型が大きくなって本物の船になってしまったんだ。

 いわゆる魔法の品マジックアイテムってやつだ。しかも漕ぎ手も、曳航用の牛馬も、帆も必要無いんだと。

 エーテル奔流船とか言うらしい。

 それで、準備しておいた物資を、蜥蜴人の人足たちが積み込み、一同乗り込む。

 すいすいとウンブラ河を朔航していく。快適だね。


 そんな感じで1日目は、特段何も起こらなかった。


 2日目は、なんかクロコダイルの群れに囲まれた。船上からの射撃戦で何体か倒したら、あとはお約束。奴ら肉食だからな。うん。


 そして3日目は、河川敷よりゴブリン部族の矢の嵐だ。また群れだぞ。参った。

 結局、岸につけ、接近戦メーレーで処理した。

 その辺りが、旧州都遺跡らしい。お宝の匂いがするな。寄らないのかよ。寄ろうぜ。え?とっくにお宝なんて無くなってるって?まじかー。


 それで今日は船旅4日目だ。


「なあなあ、爺ちゃんよう。まだ着かないのかよ」


「半日、行程がズレておるからの。明日じゃな」


 まじかー。まだかかるのかー。いい加減、船旅飽きてきたぞ。他の連中も飽きてこないのか?


 人数いるんで常時3人交替で左右と後方をそれぞれ監視・警戒。そういう俺も見張り中なんだ。

 舵取りはドトンタ爺ちゃんとノリリンタ嬢。


 それ以外は休憩したり各々出来る事をやってる。


 パブロとサラディオールと神父さんが釣りをしてる。遊んでるんじゃない、らしい。食糧の確保なんだとさ。

 そういや一昨日のクロコダイルも食糧にしようとしてたな…正に食うか食われるかだな、おい。


 エレンディエルの姉さんは、どこか物憂げな、それでいてどこか嬉しそうな…ちょっと上手く表現出来ないな…なんだろう、ちょっと守ってあげたくなる顔持ちで進行方向を眺めてる。


「警戒せよ!2時の方角!種別、スライム!数、視認で4体!」

 キホーテン卿が叫ぶ。走る緊張。

 呑気に釣りをしていた3人も直ぐに応戦体制にうつる。


 俺の受け持ちの反対側か。つーか、スライム?ヤバくね?大群かやばいのばかりじゃん。


「色はなんなのよー」とノリリンタ。


「赤いな」「赤いですな」「赤いわね」


「フランボワーズ種かクリムゾン種か?どう思う?」

 サラディオールが釣り仲間のパブロに聞いている。


 どう見分けてるんだ。


「その2種なら火攻めが有効ですけど…」


「クリムゾン種だった場合爆発するわよー」


 まじかよー!


「弓手組!火矢を準備じゃ!」とドトンタ爺ちゃん。


「不味いわー。近づいてくるの」


 エルザ、エレンディエル、サラディオール、そしてパブロが火矢をつがえ、弓を構える。

 え?パブロ、弓も使えたの?

 新たな発見だなあ。


 射撃開始!命中!そして爆発!爆風!


 ウンブラ河の岸辺でクリムゾン・スライムが盛大に爆発した。

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