消滅した町 §6 街道にて

 マルサルドール市の東門より出て、主街道を道なりに進むと、やがてウンブラ河河口の艀町バージュヴィーユの西詰に至る。

 艀町バージュヴィーユまでは、物資も積み込んだ貸し切りの駅馬車で向かう。

 そこで船に乗り換えて目的地まで行くそうだ。


 ノームの爺さんは、御者と何か打ち合わせていた。

 上エルフのお嬢を囲んで『暁の雷鳴』の女子3人が談笑。

 修道騎士クレリック2人はお祈りの時間で祝詞を唱えていた。


 『暁の雷鳴』のリーダー、パブロは最近出くわしたバグベアの群れの話をしていた。

 シュナイデルとサラディオールが興味深そうに聞いている。


「それは大変難儀であったな」


「バグベアはあの巨体で素早い。不意打ち出来たのは幸いでしたね」


「ええ、逆に不意打ちされていたと考えると、本当に運が良かった」


 戦いの話ばかりだな。

 シュナイデルのワイバーン退治の話。

 サラディオールの3人でオーガ百人斬りの話。

 百人斬りってなんだよ!しかもオーガ!

 よし!話題変えさせてやる。


艀町バージュヴィーユって治安良くないよな?大丈夫か?」


「東詰には砦もあるが、西詰は詰所と城柵だけだな」

 海側に見える廃砦を眺めながら、サラディオールが答える。


「最近は良からぬ輩が住み着いているとの噂も聞く」

 と『暁の雷鳴』の凄腕キホーテン卿。


「良からぬ輩って何?」


「犯罪者の類いじゃ」


 って一斉に俺の方見るのかよ。スカウトだよ。シーフじゃないよ。

 言っとくけど俺は、別に犯罪者なんかじゃないんだからね!


「え?何?」


「あれだよ、あれ」

 とサラディオール。だから何?


 ふと気がつく。

 振り返り、艀町バージュヴィーユの方を見渡す。

 いくつもの煙が上がっている。

 火事?炊事の煙?エレメンタル災害?


「ドトンタ翁!」

 駆け寄るサラディオール。


「分かっておる!ただの火災ではない。何者かが艀町バージュヴィーユを襲撃しておる!」


 襲撃って…おいおい、どうすんだよ。

 まさか助けに行くとか言い出さないよな?


「大変!早く助けに行きましょう!」

 と上エルフのお嬢。


 まじかー。と思ってたら、他の連中もだと!?

 修道騎士クレリックの2人とキホーテン卿は当然として、俺以外全員かよ。


「じゃあ、全員賛成ね?急ぎましょう!」


 いや、俺反対したいんですけど。

 いや、このタイミングで反対とか無理?

 なにこれ?なにこれ?

 宝物探しじゃなかったの?


 8頭立ての駅馬車が速度を上げる。

 武装した集団と物資も積んでかさばる駅馬車の速度が上がる。


 そんなに急がなくてもいいんよ?

 馬たち、ゆっくり行こうぜ!

 うおおお!揺れる!跳ねる!


 艀町バージュヴィーユに着き、襲撃者が何者かが判明した。

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