第9話 危険な街デート
その朝…バルトルトはやはり真っ黒なローブに全身を包み警戒心剥き出しで、私はこの前服を買いそびれたのでまたもやバルトルトの服を買い、男みたいな格好をするしかなかったというか背が高くて若干顔だって凛々しくてもはや男そのもの…。幸いに胸はあるが上からローブを被ったらもう完璧に男だった。
「こ、こんなの…デートじゃなぁあああいっ!」
「うるせえなぁ!さっさと行くぞ!遠いんだよ!」
とまた彼は死霊の馬車を呼び出してそれに乗った。
「やっぱり…デートじゃない…」
と私は泣いた。
終始街に着くまでぐちぐち言いまくりイライラしてくるバルトルトはもはや無言になったし!!
でも一言
「街は危険な所だからな!人も多いし絶対に逸れるなよ!」
と言っていた。
「何度も聞きましたよ!しつこいんだから!」
と膨れた。デートなのに喧嘩から始まっておる!やはりデートじゃない!!
まぁ、本来の目的は仕事を探すことだけど。
そして昼を回った頃、賑やかな街に着いた。
「わぁ!!凄い!!子供の頃こういうとこ来て以来かな?まだ妹が貰われてくる前に数度だけ…、護衛とかあの頃はいたけど…」
賑やかな人通りで本当に逸れそう。そう思っていると手首をがしっとバルトルトが掴んだ!!
「逸れたら俺でも見つけるのは困難だ!」
と言う。
「おのぉ、デートなんだから…手は繋いだ方がいいんじゃありません?ほら」
と恋人達の様子を見せる。ベタベタとくっ付いて腕をからませる者達や恋人繋ぎでがっしりと繋ぎ合う人がゴロゴロいる。
「………」
バルトルトは考え込み普通の繋ぎ方をした。
「これでいいんだろ!?」
ちっ!と舌打ちまでしたわ。そんなに嫌なのかしら?
ちょっと悲しくなるわ。私のが少し背も高いし今は男に見られるから周りの目がなんかざわついた。まずい。
「バルトルトさん、やっぱり無理に繋がなくてもいいですよ。変な風に思われちゃう」
「はぁ!?そんなのどうでもいいだろう?勝手に思わせとけ!行くぞ!」
とグイグイ引っ張られた。彼はなるべく人と顔を合わせずフードをやはり深く被る。体温は緊張してるのか少し熱い。
ヤバイ…。本当に人が嫌いという事を少しは考慮するべきだった。
路地裏で怪しい薬を売ってる人を見かけた。彼のいう通り危険なのかも。裏道ではダラリと酒の瓶を持ち寝転がって、変な薬を飲んで笑っておかしくなってる人もいて青ざめる。
「あまり見るな、ほら…市場だぞ」
と指差した方は賑やかだった。
「あまり金がないが欲しいものがあるなら手に入れといた方がいいぞ。街に来るのは稀だからな」
とバルトルトが言い、見て回る。
新鮮な果物や野菜もあったけど、服屋もあり綺麗な真新しいワンピーススカートを見た。平民の間で流行っているものか、似たようなものを着た女の子達がはしゃぎながら甘いものを持って食べ歩きをしていた。
いいなー!女の子ーー!
「お前服が…欲しいのか?あまり金が…今ないぞ?」
「えっっ!?いや…それならいいですよ!行きましょう!」
と引っ張りその隣の店はアクセサリーなどを売っている屋台だ。
その中を除いているとバルトルトの瞳みたいに澄んだ蒼の石のついた髪留めが売っていた。ジッとそれを眺めていたが高いかも。
他のカップルがそれを見て
「あら、これいいわね!」
「そうかい?買ってあげようか?」
と鼻の下を伸ばした男が手を伸ばした。
あらら、買われちゃう。仕方ないかと思ってたら素早くバルトルトがそれを取りさっさと代金を支払い私に放り投げた。
「はっ!早いもの勝ちだ!」
と言い、カップル達が唖然として
「せ、性格わるーー!!」
と女の方が叫んでいた!
「あーあ、…バルトルトさんいいんですか?」
「なんだよ?それが欲しかったんだろ?おかげでもう昼飯代くらいしかないぞ?」
「それなら無理しなくてもいいのに」
「……ふん、デートって何か女に買ってやるもんなんだろ?知らんが周りの男は皆女に何かしら買ってやってたから」
と人のを見て学んだらしい。
「ふふふ、ありがとうございます、では大切にしますね!まぁ、こんな男みたいな格好じゃ付けてもダメだけど!」
と笑うと何かしゅんとしていた。気を遣わせたかしら?
お昼を食べようと屋台で串焼きを買い食べ歩く。午後からは仕事探しだ。
「ふふふ美味しい」
と頬張ると
「どこが…。お前の料理のが美味しい!」
と言ったので不覚にもドキッとしたわ。
「まぁそんな世辞ばかり言って!」
「別に世辞でもないがな…」
と言うのでやっぱり嬉しい。
へへへと照れ笑いするとバルトルトも横を向いた。
*
余計な事をしただろうか?
ヨハンナがアクセサリーを欲しそうに見ていたので他の奴らが手に取る前にささっとそれを取りさっさと買った。高くてほとんど金は残らなかったがヨハンナが嬉しそうにすると俺もなんか安心した。
心がほわほわした。
それから串焼きを食べているとこれが美味いとヨハンナが言い出すから
「どこが…。お前の料理のが美味しい!」
と本心を言ったら少し驚いて世辞を言ったのかと言われたので否定すると照れてヨハンナが笑った。
それにちょっと心がドキリと動いた気がした。
ヨハンナの笑顔はやはり安心する。他の女とは何か違う。背が高くて女らしくないからと思っていたけど…。
いつか女の服をちゃんとプレゼントしたらこいつ喜んでまた笑ってくれるかもしれない…。
そう思ったら…仕事を探さなきゃな…と思った。
仕事の斡旋所に行き、掲示板に貼られてる依頼内容を眺めていく。ヨハンナが
「すみません、ちょっとあの、お手洗い行ってきます!」
と俺の手を離しトイレへ向かっていったのでその間に仕事を探しておく。
ひとつようやく、ネクロマンサー用の依頼を発見し、それを受付に持って行き前払い料をほんの少し貰えた。
椅子に座りヨハンナを待っているが中々トイレから出てこない。まさか串焼きで腹でも下したのか?と心配したが一向に来ない。
変だな?
………。
俺はまさかと思い、その辺の女に仕方なく声をかけた。
「おい、俺の連れの男みたいに背の高くて男みたいな格好をした女がトイレに入ってから戻らないんだが、ちょっと見てきてくれないか?と尋ねたら
「はぁー!?何で私が!?」
と文句を言う。
「頼む!」
と言うと接近して顔が見えたのかいきなり態度が変わった!
「あら!!いい男!!わかった!ちょっと待ってて!お兄さん!」
とルンルンしながら確認に行って戻ってきた。
「中には誰もいなかったよ?間違えて男の方に入ったのかな?」
と言うから俺は一応男の方を見に行ったが誰もいなかった!!
は?
どこ行った?まさか、俺から逃げ出したのか?嫌になって?いや、ヨハンナはそんな薄情じゃないはずだし、そんな女でもない!
人攫い…。
嫌なモノが頭を支配して俺はヨハンナを探して外に出て裏路地から手が伸びたことに一瞬遅れ思い切り腹を殴られて気絶した。
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