なんで、あたし……(鵜川アヤミ視点)
「どうしよう……」
なんであたし上手く出来ないの?
ミツキからファンを全部奪ってやるって思ってるのに……。思ってるのに、なんであたしの胸はこんなにドキドキしてるのよー!?
なに、遠坂ってあんなにかっこよかったっけ?
もっとこうふにゃふにゃっとしたどっちかといえば可愛い男子とか小動物系とかそんなのじゃなかったっけ!?
◇
朝、さっそくめんどくさいけどコンタクトレンズをいれて、怒られない程度にうっすら化粧をして、髪にアイロンをあてる。やっばい、めんどくさい。いつものめがねスタイルがやっぱ気楽だわ。でもそれじゃあ女子力皆無だから、頑張るしかないよね。
あたしは超頑張った。ミツキに勝つため。ミツキに悔しがらせるため。うっわ、あたし頑張ればやっぱり可愛いんだよね。毎日これはめんどくさいけど。
狙うはミツキファンの一人、遠坂樹。ぜったい彼女いない歴イコール年齢だからいちころよね!
鏡の前であたしはポーズをする。この胸を強調するポーズ、ぜったいヤバいよねー。
あー、でもどうせならもっとカッコいい男がいいなー。あ、でもミツキファンにいい男がいたら逆に凹むし!! 危ない危ない。うん、いないいない。ぜったいにいない!!
でも……、巻き上げていつもより短いスカートが気になる。少し戻そうかな。
「あやみ! いつまで洗面所占領してるの!?」
「……もう終わる!!」
はぁー、勢いつけなきゃ。ミツキに勝つんでしょ!
あたしはそのまま外に出た。いつもより視線が刺さってくるみたいであたしはずっとスカートのすそをひっぱりながら通学した。
「鵜川?」
「そうですよ」
「あ、あぁ、すまん。これが女子の分だ。それと――」
今日はちょうど遠坂と一緒に日直。話しかけるのにはうってつけ。そう思ってたのに、ついつい先に職員室に持っていくものを取りに来てしまった。まだ遠坂は登校してきていなかった。
日直なら三十分くらい前にきなさいよ!!
先生もどこみてるのよ。先生のためにしてきたわけじゃないんだから。
「遠坂君がきたら取りに行くように言っておきます」
あたしはそう言って職員室を出た。
「あやみ、可愛いぃ」
「どうしたのぉ、それ」
「なになにぃ、何に目覚めたのー」
あたしの姿がそんなに面白いのか……。教室で質問責めされうんざりしているところにターゲットが登校してきた。
さぁ、行かなきゃ。
「あ、わかったぁ。今日の日直の相手にぃ、あやみ、アタックするつもりでしょぉ」
「は? そんなわけないでしょ」
「えーだってぇ、あやみっちさっきからちらちら入口見てたしぃ、入ってきた時に目が光ったよぉ」
それはたんに、ターゲットが――。
「――違うよ。先生にあとで取りに行かせますって言ってるから遠坂君に言わないとって」
「えー、まじめぇ。なら誰狙いなのぉ」
「だから!」
あー、もう、席に着いちゃったじゃない。もう、邪魔しないでよ。って、なんでそこに菊谷君までいるの!? 菊谷君の前で遠坂に迫るなんて出きるわけないよぉぉ!! それに隣にいるライバルそっくりな女、マリヤ! あー、もう仲良さそうに話して!
最初は本人かと思ったけど、ミツキの中身は男らしいし、違うっぽい。でも、思い出してイライラする!
「あやみぃ? 目、こわいよぉー」
「え?!」
そう言われ顔をぷるぷるふった。そうだ、日直の仕事と言ってふたりっきりになれば。
って、あぁ!!
遠坂が立ち上がって教室から出ていく。
慌ててあたしも立ち上がる。
「あーやっぱり、あやみってば」
「違うったら!」
もう、ふたりっきりになれない。話しかけるだけでこんなに言われるなんてぇ!!
それにしても、遠坂。あたしを無視して行くなんて、いい度胸してるわね!
少しは声かけて行きなさいよ! あたしの分は終わってる? とか聞くとかさぁ!
文句の一つでも言おうかとしたけど、遠坂は勢い良く職員室に行ってしまった。
「あやみぃ?」
もう、あとで絶対文句言ってやるんだから!!
ふらふらしながら帰ってきた遠坂は段ボールを二つ持っていた。あれ、そんなのあたし頼まれてなかったけど。
「うわ、あやみっち、忘れてたの? 遠坂君ふらふらじゃん」
「し、知らない! 先生が忘れてたんじゃないの?」
「お礼言わないとだねぇ」
なんだか行ってこいと言ってるみたいに聞こえる。今なら変じゃないよね。よし!
「あ、遠坂君。……ありがとう」
◇
結局今日は遠坂に何も出来なかった。
ぜったい、明日こそは!!
「すごく可愛いよ、鵜川さん」
頭の中で遠坂が言った台詞がぽんと浮かぶ。だからえいっと消した。なのにまた浮かぶ。
もー、なんなのよー!!
アイツはライバルミツキから奪うファンなのよ! そうよ、ただそれだけ……。
「すごく可愛いよ、鵜川さん」
あーーーーーーー、もーーーーーーーーーう!!
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