あたしがぜんぶ奪ってあげる(猫月ヒカリ視点)

「なんなの、なんなの、もう!! コイツらもあたしじゃダメだって言うわけ? もともとミツキがあとから加入したんでしょ? (wi○i調べ)ならあたしでもいいんじゃないの? 猫耳だし、可愛い女の子だし、……そりゃぁ、ゲームの上手さじゃ勝てないけどさぁ。攻略見ても勝てないとかあるけどさぁ……」


 怒りで考えてることが口から出ていた。

 あたしのパソコンにはライバルとライバルが所属するチームがうつっている。少し前まであたしもあの世界にいたのだが、見にきてくれる人がいなさすぎて、途中でやめた。来てくれた人も、何かしら嫌なことを言ったり冷やかしだったり。


「ミツキの何がいいのよ!! あたしのヒカリだってこんなに可愛いのに。ほら、この耳の動きとか、表情だって上手く出来てるのに」


 ちょっとこの人より始めた時期が遅かっただけなのに、それ以外はほとんど変わらない、むしろ中身が男だって言ってるアイツがモテて、中身が女の子だって公言してるあたしが全然モテないのはおかしいよっ!!!!

 飲んでいたイチゴミルクの容器を机に勢い良く叩き置く。


「っいったー」


 そして、机に手をぶつけた。

 初詣で大凶を今年は引いた。これも、そうだって言うの? 全部全部、ミツキが悪いんだ!!

 あたしは眼鏡のツルを掴み顔から外す。

 あたしはリアルだって女の子なのよ。こんな男女おとこおんなに負けないんだからぁ!

 あたしだって本気を出せば、男の子を落とすなんて造作もないはずよ。

 自慢じゃないけど、カラダには自信がある。


「手始めに、まずアイツね! 何だっけ、あの……、そう遠坂樹!!」


 きっとミツキの大ファンでかなりのマネー支援者と見た! だってアイツ、ミツキと同じ文房具使ってるし、ミツキとまったく同じキャラクターでアクリルキーホルダーを作って隠し持ってるんだもの。隠してるみたいだけど、バレバレなのよ。


「ふふ、うふふふふふふふ」


 ミツキからファンを一人残さず根こそぎ奪ってやるんだから!!

 あー、でも彼氏にするならー、あんなのじゃなくて菊谷学みたいなイケメンよね。

 今日は二人がやけに近くて、ミツキオタクに染められないか少し心配だ。あ、でもそうなってたらあたしが救ってあげればいいんだぁ!

 待ってて、あたしが魔女の呪いをといてあげるぅぅぅ!


 パソコンを落とし、いつものあたしに戻る。


「課題しなきゃ……」


 めんどくさいなぁ。なんで真面目に勉強しなきゃならないの? ミツキみたいに人気になれば仕事につかなくても楽してお金がいーっぱいもらえるのになぁ。

 あたしは見た目ほど勤勉なんかじゃない。だけど周りはそれを期待する。だからこの世界のストレスをVの世界で発散させたいのに、実際はストレスがたまる一方だった。


「明日は、忘れましたーなんて言ってみようかな」


 でも、きっと……それは出来ない。

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