可愛すぎです俺の彼女
「お世話になります」
「やあ、マキちゃん。いらっしゃい。いつもナミと仲良くしてくれてありがとう」
父さんがマキちゃんに応対する。母さんはまだ仕事中だ。
彼女は家にあがると分厚いコートを脱ぐ。豊満なお胸がぐわーっと俺の視界を攻撃してきた。
薄いピンクのタートルネックセーター。紺色のデニムショートスカート。黒のタイツ。
髪はゆるっと巻いているのか、束ねている下の方がくるりんとなっていた。
うわ、俺の彼女可愛すぎる。
「樹君もよろしくお願いします」
「あ、ひゃぃ」
どこからこんな声が出たんだと言わんばかりに俺はあわてふためいてしまった。
見とれすぎた。
「ひゃぃだって、お兄。くひひ」
笑いすぎだ、ナミ。まじ勘弁してくれ。可愛いんだよ! 見ろ、お前の服装との違いを!!
だるーんな白黒縞々セーターで手のひらまで隠れて、黒のホットパンツ、これまた白黒の縞々ニーハイソックス。ウサギじゃなくてパンダかシマウマだろ!
いや、まあ可愛いといえば可愛いが。
「お風呂とかすませてきちゃった?」
「あ、はい」
「なら、もうぱじゃまでしちゃおうよー」
「えぇ!?」
女の子二人は部屋に向かいながらそんな会話を交わしていた。
「樹……」
「なんだ、父さん」
「信じている。信じているが、なくて、どうしても必要な時ははやめに言え。部屋にあるからな」
いや、何がだよ。知りたくねーよ。親のそんな事情。サイズだって、フィットしたら嫌だよ、色々とアレで!
「さて、晩御飯の準備に戻るか」
父さんはそう言って台所へと戻っていった。
いや、ホント、知りたくなかった。というか、そこは親としてだな! 言うことが違うだろー!!
余計に意識しちゃうだろっ!!
ただでさえ、俺のコレクションがいなくなってツラいところにっ!!
「はぁ、とりあえず俺も風呂いこ……」
念入りになんて……、しとくか……。
爪も切っておこう。
◇
はぁー、さっぱりした。風呂で煩悩も流してきたぜ。今の俺は無敵。
「ご飯にしましょうー」
母さんがいつもの癖で呼んでいる。どうやら帰ってきてるみたいだ。父さんの笑い声が聞こえた。「僕が呼ぶのに」なんて、仲良さげだ。
何年目になるんだっけ。長い間ずっと仲良くいられるのは正直、尊敬する。
食卓の上にはサラダとビーフシチューが並んでいた。
「やった、俺肉多めがいい!!」
よほど俺は嬉しそうになったのだろう。皆がふふふと笑ってくる。席についていたマキちゃんも嬉しそうに笑っている。だいぶ子供っぽかったか……。気をつけなきゃだな。カッコいい俺を目指すんだった。
でも、ビーフシチューのこの肉のホロホロ具合が俺は大好きなんだ。
笑われようとも、俺はたくさん食べたいっ!!
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