信じる心と信じない心が戦う僕(菊谷学視点)

 は……?

 僕が家に帰りついたのはだいぶ時間がたってからだった。ふらふらとまわりまわって帰ったようだ。

 そして、うろうろしている間に、ミツキちゃんがゲリラ配信していたというのだ。

 マリヤさんがミツキちゃんではない? と考えてるうちに、そんなバカな!!

 僕は録画がないか必死にさがした。ファン友を数人当たってなんとか見ることが出来た。ありがとう、友よ!!


「わー、いつも通りのミツキちゃんだー(歓喜)」


 うん、なぜか少し照れが入ってる気がするけれど可愛い。

 それにしても、マリヤさんじゃないのかなぁ。

 ぜったいそうだと思ったのに、あのキーホルダーは遠坂のだっていうし。

 くそっ、ややこしいことしやがって!!

 ミツキちゃんファンだから、お揃いのキーホルダーを作ったんだな。僕もその発想が出来ていれば、今頃ミツキちゃんとお揃いに出来たのにっ!!

 とりあえず、本配信が始まるまでに色々済ませておかないと。

 僕は勉強に取りかかる。せっかく生配信で見られる貴重な日だ。

 普段はけっこう部活なんかで見れなかったりするからなぁ。

 学生だけど、ミツキちゃんは部活に入ってないのかな? それとも文化部なのかな? 帰宅部?

 っと、妄想にふけってる場合じゃなかった。

 僕は鉛筆を走らせる。


 ◇


「う……? え?」


 彼女を映し出す機械を握りしめた。生配信中、ミツキちゃんが突然自分は男だと言った。僕の頭の中は完全にストップする。

 男? 男? 男!?

 何で急にこんな事をミツキちゃんは言い出したんだ?

 どういうことなんだぁぁぁぁ!!??

 まわりの空気も固まってる。そりゃそうだ、こんな事ってないよっ! と叫びたい。

 僕は目をつぶって考える。ミツキちゃんが男……。

 否ぁっ!!

 リアルを見るまではミツキちゃんはミツキちゃんだ!

 そう、かの有名なシュレティンガー猫だ。

 性別、ミツキちゃん! そう、それだ! 僕は、僕はミツキちゃんがすきなんだ! この熱い気持ち伝えるぞぉぉぉぉ!

 コメントを書き込むためキーボードを呼び出す。その時、コメント欄が動いた。


『突然の告白驚きました。だけどミツキちゃんはミツキちゃんです! これからも応援します』


 のぉぉぉぉぉッ! だれぞかに先を越されたぁぁぁぁぁぁぁ!!

 コイツより印象に残るコメントを残さなければ!! 何か、何かないかっ!

 僕はその時、それしか頭に浮かばなかった。

 そして書いたコメントに返事はもらえなかった……。

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