地獄に足を引きずり込まれる俺
「こんにちは」
「……こんにちは」
マキちゃんはとても普通にやってきた。どうやら、
女子二人は斜め向かいのソファーに座り、ゲーム機をすっと構える。ナミは、俺によく似た髪質の髪をいつもはツインテにしているのに、今日はふわりとおろしている。服はゆるくティーシャツと短パン、あとニーハイソックス。マキちゃんは、シュシュでまとめたポニーテール、シャツドレスでしゅっとしたクールな印象だ。はっきり言おう。女神が二人いる。スタイルがいい、顔もいい、二人組。アイドルユニットとかすればモテるに違いない。
一人は妹なので、残念ながら可愛い以上の感情は
もう一人の女神は……。
「お兄、はじめるよー?」
「あ、すまん。まだ読み込み中だ」
「はやくぅー」
ぼけっと見とれていたら、すでに彼女達は
「すぐ入る」
昨日のうちに用意しておいた装備で、待機ルームに入ると、イカツイおっさんキャラとちびっこで可愛いウサギ耳をつけた女の子キャラがそこにいた。
イカツイおっさんの方は、ヤバい位に鍛えられた筋肉と装備だった……。
「え、ヤバい、お兄、めちゃくちゃ可愛いじゃん」
「うるさい……、ゲームで男キャラを長時間ずっと見てたいと思うか?」
「あ、わかる。どうせなら可愛いキャラがいいよねー。私、そう思ってめちゃくちゃ可愛くしたんだー!」
「…………」
この会話から、
「さぁ、行きましょう」
マキちゃんがそう言うと、イカツイおっさんが動き出した。
そういえば、キャラクター名、真樹だった。ナミはななみん。二人ともそのまんまじゃないか。いや、人の事はあまり言えないか。
「お兄、回復薬ちょーだい!」
「あめ玉でも食ってろ」
ナミの準備してなさに
「おい、やめろ」
「ふぁい、あめ美味しいです」
ロップイヤーの耳をつけたハンターらしからぬ、このちびっこハンターはあめ玉を美味しそうにころころ口の中で転がしながら、答える。このあざと可愛いキャラクターを使えるのは、やはり完全な女子でないと恥ずかしいと思ってしまうあたり、まだ、俺はなりきれていないのだろう。よし、よく観察して、パーフェクトミツキへの進化の生け贄になってもらおう。
しかし、あれだな。
リアルでは、あんなにも可愛い女の子のマキちゃんが、
「大丈夫?」
そう言って格好良く、ナミに襲いかかってきた蚊型のモンスターを打ち落とす。彼女の操るおっさんの武器はガンソード。
基本は銃で、剣先が付いているからそこで突き切りなどにも使える遠距離近距離両用。
俺は日本刀の大剣。
ナミは、二刀流短剣。何故、彼女が一番下手なのに、一番近距離型の装備なのか……。聞かなくてもわかる。答えは可愛いからだ。
「ナミ、やはりお前は後ろから攻撃出来る弓とか銃の遠距離武器に……」
「一回使ってみたんだけどさ、全弾外れるかマキにヒットするかだったんだよね」
どんなミスり方だよ!
そんなんだから、マキちゃんが遠距離近距離兼用武器なのか。
「しっ、ボスがきます!」
可愛い声のおっさんが武器を構える。そうだ、集中しないとだ。この一回で終わらせて、俺は部屋に舞い戻るつもりだから。
プテラノドン型の怪鳥モンスターが空から急降下してくる。
今回は俺より、マキちゃんが主体の攻撃になるな。そう思ったときには終わっていた。
「…………え?」
「………ごめん」
てへぺろをしているナミと、次の用意という感じでカチャカチャゲーム機ボタンを押すマキちゃん。
いったい、何が起こった?
「すでに
「なん……だと……」
マキちゃんは、いつもの事だといわんばかりに笑っている。
二人をチラチラと見ている間に、ナミはいつの間にかやられていたらしい。いや、いやいやいや!?
「ボスにつくまでいけたのは久し振りでしたね。ナミ、もう少しです」
「うん、頑張る!」
どんなマゾプレイですか――。
もしかしなくても、この二人、というかナミがいるとそれだけでCランク初心者クエストすら、トリプルSランク上級者クエストに変化してしまうのではないだろうか。
俺は、これから繰り返される
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