Vの世界で理想の美少女やってたら、幼なじみに見られた……俺。
花月夜れん
見られた俺と見た幼なじみの話
あれを見られた俺
あの日、なぜ俺は鍵をかけなかったんだろう。かけていれば、こんなことにならなかったのに…………。
「さぁ、今日もチームけもラブのゲーム部、配信はっじまるよー☆」
「よろしくにゃーん!」
ちなみに、にゃーんって言った猫耳美少女アバターが俺、
◇
「お
下の階から妹、
まったく、この時間は邪魔するなよって言ってあるはずなのに、いったい何の用だ。ふぅ、だが、この部屋は今鍵がかけてある。入れるもんなら入ってみろ!! そう心で叫びつつ、俺は妹の声を無視して、目の前に意識を戻す。いまは集中しなきゃ駄目なところだった。
「あ、ありがとうございます! そう、そうなんですよー!わかってくれますか。ミツキ、嬉しいにゃぁん!」
ゲームの画面には女の子キャラクターでモンスターと戦う場面が映っている。人気のゲーム「めっちゃモンスターハンティング」
これをプレイしながら、動画配信している。これまた美少女猫耳アバターで。そう、これ中身、俺。告白すること50回。ことごとく、女の子っぽい、可愛いからごめんとフラれ続け、女子と付き合ったことがない俺はついに可愛い理想の美少女を作り出し、自分がその中に収まった。かわいく理想通りに動かすことが出来るのは俺だけだ! って、何やってるんだろう、俺。
まあ、そうこう動かして、配信していると人気が出て、今じゃフォロワーがうはうはうなぎ登り状態だ。男性アカウントが多いが、女性アカウントもかなり多い。両性からモテモテ。何故、これがリアルじゃないんだ? あ、いや、リアルで男にはモテなくてもいいのだが。うん、絶対にな。
「あ、今日も来てくれたんですねー! ありがとうございますにゃ!」
ゲームをこなしつつ、美少女になりきり配信もだいぶこなれた物になってきた。
「やったぁぁぁぁ!」
最後の一撃を与え、上手に狩れましたー、と喜んでいた時だった。
「樹君?」
聞いた覚えのある声がして、後ろへ振り返るとそこには、理想とは違うけれど、妹と同い年の美少女幼なじみが立っていた。
あ、俺の人生終わった? あれ、俺鍵かけてなかった? どうやって入ってきたんですか? あ、かけ忘れ? なにやってんだ、俺ーーーー!!
いつから見られていたのだろう。パソコンの画面には、可愛いケモミミ女子のアバター。女子みたいに話す俺。もし聞かれていたら、いわゆるおネエ言葉を使う系男子と思われてもおかしくない……。
いや、まだだ、これが配信画面だとしらなければ
「マキちゃん、これは……」
「樹君、配信やってるんだ」
がっでむ!! 配信画面と知っているだと!
まあ、今時の女子ならわかってしまうか……? く、こうなったら、…………いや、どうすりゃいいんだ!?
「マキちゃん、……」
手を彼女の方へ伸ばす。後ろからミツキを心配する声がするが今はそれどころじゃない。
「ごめんなさい!!」
パッとマキちゃんが動き出して、扉をしめ、階段をおりていく音がした。明日から俺は、家族や知り合いからネカマのレッテルをはられる日々を送ることになるのか――。
「終わった……、俺の人生……」
彼女が逃げたばかりの扉を、しっかりとしめて鍵をかけ、俺は画面に話しかける。
配信も、今日で終わりかな……。
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