第6話 専用重量ブーツ

「ここが靴屋さんか。お邪魔しまーす」


「あ、いらっしゃいませー!」


 ルーミアがメモを何度も確認して間違いないと店に入ると、ルーミアとさほど変わらない歳と思える少女が元気な声で出迎えてくれた。


「今日はどんな御用でしょうか?」


「えっと、作ってもらいたい靴があってきました」


「オーダーメイドってことですね。どのような靴になるのか詳しく聞かせてください」


 そう言われてルーミアは自身が着想したブーツの要望を答えていった。


 まず第一に頑丈。

 ルーミアの強化された脚力についてこられる耐久性。

 踏み込みの際にかかる力などもこれまでの比ではないため、なるべく耐久性能の高いブーツを所望している。


 そして第二に重量と殺傷力。

 まずブーツに求められる性能ではないがルーミアはこれらの性能を望む。


 蹴りの威力を高めるために重さはどうしても必要だ。

 強化された身体能力だけでも十分な火力は出せるのかもしれないが、そこに重さが加わればさらに強くなる。


 そして三つ目に魔法の親和性。

 ルーミアはゴリゴリの武闘派スタイルを目指しているがその本職は白魔導師だ。

 支援魔法を得意とする彼女が使えるが、これまで使ってこなかった魔法、付与エンチャント

 武器などに属性を付与できる魔法だ。


 本来なら武器や防具に魔力を込めるだけで発動できるように付与エンチャントの術式を組み込むのがセオリーだが、自前で発動できるルーミアは魔法の親和性だけ兼ねてもらえれば十分だった。


「どうですか? 作成は可能なのでしょうか?」


「えっと、まずお聞きしたいのですが……重くというのはどのくらいですかね? それによって頑丈の度合いも変わってくるので……」


「そうですね。あなたが履いた時に重たくて一歩も動けないくらいでしょうか?」


「そんなにですか!?」


 己に施した通常強化の強化率から考えて、同じくらいの背丈、筋力と思われる目の前の少女が持ち上げれないくらいの重量がちょうどいいと勘で答えたルーミア。

 靴というのは履いて歩くためにあるもので、その重量で歩けなくするためのものではない。


「あなたそれで歩けるんですか?」


「問題ありません。パワーには自信があります」


「……そうですか。ではこの魔法の親和性というのは……? 何か発動させたい術式があるのなら組み込むことができますが……」


「あ、それは大丈夫です。私白魔導師なので、必要に応じて自分で支援します」


「は? 白魔導師? あなたが?」


「はい、紛れもなく」


「はあ、頭が痛いです」


「回復魔法をかけましょうか?」


「そうじゃありません」


 このオーダーメイドの内容だけ見ればどう考えても白魔導師とは結び付かない。

 ただでさえめちゃくちゃなオーダーで戸惑っているのに、さらなる追撃で混乱に拍車をかけられ少女は頭を抱えた。


「おー、どうした? お客さんか?」


「お父さん! ちょっとこれを確認して」


 そこに少女の父が姿を現したことで、話はさらに進むことになった。

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