新しくない?
『戦争って新しくない?』
SNSに投稿されたその一言が全ての始まりだった。これを投稿したのは、所謂インフルエンサーと呼ばれている女子高校生だ。彼女の投稿は瞬く間に日本中に拡散された。この波に乗ろうとする学生達。様々な武器のプラモデルにデコレーションを加えてSNSに投稿を始めた。その銃可愛いね、花とのコントラストがエモい、など武器のプラモデルに対するコメントが相次ぐ。
ニュースではいち早くこれが取り上げられた。若者に対し、止めるよう声掛けを始めたが、そのそもニュースを見ている若者は少数であり、効果は全くなかった。
学生達の承認欲求はこれだけでは満たされなかったようだ。3Dプリンターで本物の銃と同様のものを作り出す者や、どこのルートで仕入れたのか不明であるが本物の銃を手にする者まで現れた。これには警察も重い腰を上げて調査に乗り出した。しかし、日本は先進国の中でダントツにIT化が進んでいない国と言われている。それを象徴するように、SNSの投稿から学生達を検挙するのに時間がかかった。その間にも若者の戦争への意識は高まってゆく。ついには武器を持ち寄ってオフ会をする者も現れた。武器を見せ合うオフ会は次第に腕前を競うものとなり、死傷者が出てしまった。
これは日本国内では留まらず、国外にも若者の戦争への意識が高まってしまった。華々しい装飾を施した銃や手榴弾が町を襲う。若者だけでなく多くの人の命を奪っていった。そんな中、一人の大学生がSNSに投稿した。
『これってデスゲームとどう違うんだ?』
確かに。言われてみれば。この投稿に多くの若者がコメントを残し、武器を手に取るのを止めた。しかし、既に国と国、ひいては世界中での戦争へと発展してしまった今、もう戦争を止めることはできなかった。
こうして第三次世界大戦はSNSから始まり、とある国が落とした核爆弾によって地球は粉々になり放射能をまき散らして消滅した。
……なんてね。
男は喫茶店でスマートフォンに映された記事を読みながら、物騒な妄想に耽っていた。記事の内容は、今若者の間で流行となっているモノクロ写真について。取材を受けた女子高校生が『モノクロ写真って新しいなって思って』と話していたそうだ。いや、モノクロ写真は新しくないぞ。むしろ古いのでは?流行りものに疎い男は頭の中でそう突っ込んでしまった。古いものが時間を経て新しいものとして再び受け入れられていく。いつかは、自分が妄想したようなおかしなことが起こるかもしれない。男はそんなことを思いながらコーヒーを口にした。すると、隣の席に座っていた女子高校生の会話が耳に入ってきた。
「戦争って新しくない?」
えっ。
Fin.
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