第19話
ビビアンはここのところ毎日、ライオスの執務室で公務の手伝いをしている。
それ以外にも貴族令嬢としてのマナーやダンスの教育を隔日で行っていた。
「ビビアン、ちょっと休憩しようか?」
ライオスが自分の仕事に一区切り付けたところでビビアンに声を掛ける。
「あ、はい。じゃあお茶入れますね」
「ビビアン...」
「あ、そうでした...」
長年染み付いたクセというのは中々抜けない。使用人以下の扱いを受けていた日々は、ビビアンの貴族としての尊厳を著しく損ねていたのだ。
「ビビアン、今度お茶会に参加してみないか?」
「えっ!? わ、私がですか!?」
「あぁ、これからはそういった社交の場にも慣れて行かないといけない。嫌みの一つや二つ、軽く受け流せるようにならないとな。その度にカウンターが発動していたら大変だろ?」
「あぅぅ...た、確かに...」
想像したのだろう。ビビアンの顔が真っ赤に染まった。
「俺としては嫌みには嫌みで返すような、進化したカウンターを見てみたいけどな。今だと嫌みに対して暴言を返すだろうから」
「ど、努力します...」
「まずは俺の妹が主宰するお茶会に出てみるか」
「妹...あ、マチルダ様ですか?」
「そうだ。覚えてるだろ?」
「はい、とても良くして頂きました」
マチルダとはライオスと同腹の第2王女のことである。一つ年下の彼女も当然ながらビビアンと幼馴染みという関係である。
「アイツもビビアンに会えなくなって寂しがっていたぞ?」
「そうだったんですね...なんだか申し訳なかったです...」
母親が儚くなってからは、王宮に足を運ぶことがなくなったビビアンにとっても懐かしい、そして寂しい思い出でもある。
「あれ? マチルダ様も留学していませんでしたか?」
「あぁ、海を渡った東国に留学しているんだが、もうすぐ帰って来る予定なんだ。ビビアンに会えると聞いてとても喜んでいたぞ?」
「そうなんですね...私もお会いしたいです...」
「帰って来たら留学の報告も兼ねたお茶会を開く予定なんだ。参加してみるか?」
「はい! お願いします!」
「あぁ、良い返事だ」
ライオスが満足気に頷いたところで、
「ライオス殿下、ご休憩中に失礼致します」
ライオスの執事が声を掛けた。そしてなにやら耳打ちする。
「来たか。案外遅かったな」
ライオスは不適に笑って立ち上がった。
「ビビアン、ちょっと客が来たんで休憩は終わりだ」
「あ、はい。分かりました。私もご一緒した方がよろしいですか?」
「いや、必要ない。寧ろ会わない方が良い」
「はぁ..分かりました」
ビビアンは良く分からないながらも取り敢えず頷いた。
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