第24話 夏祭り 後編
「真知子と話してて時間使ってしまったな、ちょっと急がんと花火始まってしまうわ」
「真知子も元気そうだったわね」
「そやな、いつも元気なイメージあるけど」
ゾロゾロ歩いている波に乗って歩き出す。
みんな目的は一緒で花火が見えるところまで歩いている。
この流れに乗っていれば問題なくたどり着く事が出来るだろう。
日が暮れて花火が空を照らす時間がどんどんと迫ってくる。
人の多さと屋台から溢れる熱気、目的地に近づくにつれてなかなか進まない苛立ちが夏の暑さを加速させていく。
「全然進まへんやん、間に合うんかな」
「どうかしら...」
茉桜の頬にスゥっと汗が流れ落ちる。
いつもならそんな姿を見て、キレイだとか艶かしいと思うかもしれない。
だが今はそんな事を考える余裕が無かった。
苛立ちは次第に申し訳ないという気持ちに変わってくる。
あー、アカンなー。茉桜にいいとこでキレイな花火見せてあげたかったんやけど、この感じやと間に合わへんなー。
「こっちに行きましょう」
茉桜と繋いでいた手に引っ張られる。
茉桜が歩いて行くのは神社から少しそれた、道...とは言えないよな場所をスマホのライトで照らしながら登って行く。
「危なくない?」
「たぶん大丈夫よ。花火が上がる場所とこの道の方向から考えたらきっと見れるわよ」
「ほんまかいな。まあ...あそこにいるよりはいいか。暑くてしんどかったし」
少し木の枝をかき分けて進むと開けた場所に出た。
下を見るとかなりの人が集まっていた。
ドンッ。
花火が打ち上がった。
「おお!」
「間に合ったわね」
「うん!」
「ふふ」
茉桜と一緒に花火を見る事が出来た嬉しい気持ちから繋いでいる手に力が入る。
さっきまで自分のせいで残念な夏祭りデートになってしまうかと思っていたけど、茉桜のおかげでキレイな花火を見る事が出来たし、見せる事が出来た。
ドン、ドンと音を立てて存在を主張している。体の中にまで伝わってくる音。
夜に咲く花火はとてもキレイだ。
隣を見ると大好きな彼女が空を見上げている。こんな事を思うのはクサいかもしれないが本当にキレイだ。
次々と打ち上がり最後は盛大に咲き乱れる花火。
終わるとともに今度は拍手が鳴り響く。
ここに集まったみんなも花火に感動したようだ。
「すごかったな!めっちゃキレイやった!」
「ふふ、そうね。感動しちゃったわ」
「茉桜もキレイやった」
「ありがとう叶彩」
ドキドキして茉桜と見つめ合う。
茉桜の腰に手を当てて抱き寄せる。
キスしたいと思ってしまってから行動は早かった。
まだまだ下に人がいるが下からは絶対に見えない角度だ。
チュッと音を鳴らして茉桜の唇の柔らかさを感じる。
「茉桜、好きやで」
「私もよ、叶彩」
夏祭りで二人で見た花火はキレイだったが、さの中で見た茉桜の横顔が一番キレイと思ってしまった。
来年もこの場所で見る事を約束して来た道を引き返して行った。
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