第11話 平和な休日?

 目覚ましの音で目が覚めると茉桜は先に起きていた。


「叶彩、おはよう」


「おはよう。早起きやね」


「私もほとんど同じタイミングで目が覚めたのよ。もっと叶彩の寝顔を見ていたかったのだけれど、残念」


「見んなよー」と言いながら抱きしめる。


「朝起きたら好きな人が目の前にいるのって幸せね」


「そうやな」


 嬉しそうに笑う茉桜を見て一緒になって嬉しくなる。


 昨日はいっぱい恥ずかしい姿を見られてしまった。


 ケンカもして仲直りして、なんか長かった様な気がするな。でも、幸せな一日やった。


「今日は茉桜の家に行くんやったよな?」


「そうだけど、疲れてない?大丈夫?昨日あんなにかわいくなってたけど」


「っ!全然大丈夫やし!」


「ふふ、ならいいのだけど。今日はゆっくりしましょう」


「そやな」


「服、着ないの?」


 忘れてた!


 慌てて服を着替えた。


 茉桜はクスクスと笑いながらパジャマを脱ぎ、服を着た。


 朝ご飯ができたみたいで、リビングに呼ぶお母さんの声が聞こえた。


 二人でご飯を食べ終え、準備をして「行ってきます」と言い家を出る。




 茉桜の家に着き、部屋に入るとベッドにダイブする。


「最近暑なってきたなー」


「これからどんどん暑くなりそうね」


「ほんまになー、でもウチ結構夏好きやねん。祭りとか海とかイベント盛りだくさんや!」


「ふふ、夏になったらいろんな所に遊びに行きたいわね」


「そやな!いっぱい遊ぼな!」


 今から夏が楽しみになってしまう。


 彼女と過ごす初めての夏休み。夏祭りや海、プール、何をしてもいつもより楽しい気がする。


 昨日いろいろあった事とは真逆に今日は平和でゆったりと過ごせている。


 そんな時だった。


 ピンポーンとインターホンが鳴った。


「ちょっと待ってて」


「行ってらっしゃい」


 茉桜が部屋を出て玄関に向かった。


 部屋に微かに聞こえてくる声、聞き覚えがある。ケンカになった日に聞いた声だ。


 ドタドタと階段を駆け上がり、あの時の女の子が勢いよくドアを開けて部屋に入って来た。


「ちょっと!付き合ってるって本当!?」


「なんやいきなり!ビックリするやんけ!」


 後に続いて茉桜もやってきた。


「勝手に入らないでよ」


「茉桜は黙ってて」


「本当に付き合ってるの?仮とかじゃなくて?」


「付き合ってんで」


「なんでよ!」


「なんでよってなんやねん!ウチは茉桜の事好きやし、茉桜もウチの事好きって言ってくれてんねや。付き合ってもいいやろ!」


 好きって言われたからだろうか、茉桜が嬉しそうにしている。


「そうゆう事なの。もう気が済んだでしょ?帰ってくれるかしら?」


 全然意味が分からへん。いきなりなんなんや。勢いよく部屋に入ってきたと思ったら付き合ってんのか聞かれて、そうやって答えるとなんか涙目になってるし。


「私だって茉桜の事好きだったのよ!」


「え?」


 茉桜もビックリしている。


「夏休みまで付き合ってその間に惚れさせる?意味分かんないわよ!どうすればいいかなんて相談受けて私も焦ったのよ!何とか阻止してその隙に私を好きになってもらう予定だったの!わざわざアンタがいる日にまで顔を出してケンカさせたのに!」


 うわー、めっちゃ喋るやん。正直全然頭に入ってこうへんけど、なんかムカつく。


「うるさいわ!茉桜はウチの彼女や手出すな!」


 茉桜をこっちに呼び抱き寄せる。


 ポッと顔を赤らめる茉桜。


 よし、いつも茉桜にはいろいろされてるけど今日のウチはかっこいい所を見せられる。いつもかわいいかわいい言われてるけど、これはチャンスや。


「勝負しなさい」


「え?」


「勝負しなさいよ!」


「なんやねん、勝負って」


「負けるのが怖いの?」


「よーし、そこまで言うなら勝負する!返り討ちにしたるわ!何で勝負する?ウチはスポーツ全般得意や」


 苦い顔をしながら勝負の内容を女の子。

 体を使う系なら勝てないと考えているのだろう。それに勝手に家に上がり込んで怒鳴り込んでまともな思考が出来ていない女の子。


 これだ!っと言わんばかりに棚に置いてあったトランプに目をつける。


「それで勝負よ!」


「トランプで勝負すんの?」


「は?ビビってるの?」


「誰がや、全然ビビってへんし。ウチが圧倒的に勝つわ!」


「ババ抜きで勝負よ」


「私もやるわ」


「ちょっと!ズルいわよ!」


「ズルじゃないわよ、彼女の味方をするのは当たり前じゃない」


 フッと笑って勝ち誇った顔を女の子にプレゼントしてあげる。


「ぐぬぬ」


 納得していない顔をしているが、ババ抜き勝負が始まった。


 一回目はウチの勝ち、二番は名前を知らない女の子、ビリは茉桜。


 納得いかないと騒ぎ出したので、三回勝った方が勝ちという勝負になった。


 二回目は女の子の勝ち、二番はウチ、ビリは茉桜。


 三回目はウチの勝ち、二番は女の子、ビリは茉桜。


 四回目、ウチの勝ち、二番は女の子、ビリは茉桜。


 んー?


「茉桜...よわ」


「私もビックリしてる、茉桜って結構強そうなイメージあったし」


「やんな、ウチも思った」


真知子まちこ、とりあえず今日は帰ってくれるかしら」


 この女の子の名前、真知子っていうんや。


「なんでよ、まだ負けを認めてないのに!」


「いいから帰りなさい」


 あれ、もしかして怒ってる?


「はい」と小さく言ってそそくさと帰って行く真知子。


 なんやったんや。これで諦めてくれたらいいんやけど。


 玄関まで見送った茉桜は部屋に戻ってきた。


「さ、勝負の続きをしましょう?」


「なんの勝負?」


「ババ抜きよ」


「いや、茉桜は絶対ウチに勝てへんと思う。あんなにやったのにずっとビリやったやん」と笑いながら言った。


 茉桜は笑顔のままだった。


 むしろそれが怖かった。


「なら違う勝負をしましょうか。叶彩、そこに立ってくれる?」


「ん」


「私に何をされても座ってはダメよ?ずっと立っていられたら叶彩の勝ち、座ってしまったら私の勝ち、いい?」


「いいけど、制限時間作ろ。十分にしよ」


「いいわよ決まりね」


 運動が得意なウチは足腰にも自信がある、これなら負けへん。


 勝負が始まった。


 茉桜は後ろに回った。何をするかと思ったら服を脱がそうとしてきた。


「何してんの!」


「何をされても座ってはダメって勝負よ」と言いながら服を脱がし始める。


「降参する?」


「しーひん!」


 どんどん服を脱がされていく。


 あっという間に下着のみの姿となった。


 ちょっと待って、恥ずかしい。なんでこんな事になってんの。


「少し足を開いて」


「いや」


「仕方ないわね」


 茉桜はどこからかバイブを取り出してきた。


 カチッと何かスイッチを入れる音がする。ブブブブと振動する音が聞こえてきたと思ったらまたカチッと音がして振動音が止まる。


 足を開いてというセリフからのバイブ、これから何をされるのか容易に想像が出来た。


 まだ二分くらいしか経っていない。


 茉桜は目の前に膝をつきパンツ越しに顔を埋めてきた。


 吐息がかかる。


「綺麗な体ね」


 下から上目遣いで見てくる。こうゆう時はいつも見下ろされる事が多かったから見上げられるのは新鮮だ。


「...ありがと」


 また顔を埋められる。微かに触られている感覚がある。でも茉桜の両手はお尻に回っている。もしかしたら舌を使っている、舐めている...そう考えると一気に熱いものが込み上げてくる。どんどん感じてしまい、感覚が鋭くなっていく。


「んっ、んっ」


 自然と声が溢れる。


「ふふ、またかわいくなってきたわね。真知子が来た時はかっこよく私を庇ってくれたのにね」


 そういうとスイッチをいれ振動音がなりだした。


「あと五分くらいね、頑張って耐えてね、叶彩」


 手に持ったバイブがパンツ越しに当てられる。


「んんっ...!あっ、ダメ、これ...やばいっ!」


 パンツ越しとはいえ、濡れて張り付いた所にダイレクトに刺激が届いてくる。


 あまりの快感に膝が曲がり座りそうになる。


 前屈みになり、茉桜の肩に手をつく。


「あと三分くらいかしら。叶彩は感じやすく濡れやすいヘンタイさんだからすぐに勝負がつきそうな」


「っ...!そんっ、な...事ない、もん」


 そう言った茉桜はカチッとスイッチを動かした。止めたのかと思ったが全然違い、さっきまでの振動が急に速くなった。


「んぅっ...!あぁ、んっ、ん、んんっ!」


 その振動に耐えられずペタンと座ってしまった。


「ふふ、私の勝ちね」


 正直それどころじゃない、この行き場のない感覚をどうにかしたい。


「茉桜ぉ」と言いながら抱き寄せる。


「ちゃんとおねだりしなさい」


「...もっと、してください」


「どこに何をしてほしいの?」


 足を広げて「ここを気持ちよくしてください」と言い、アピールした。


「いい子ね、ご褒美よ」


 さっきの早い振動が切なく刺激を欲しがっていた所に喜びを与える。そのまま茉桜はキスをしてきた。


「ん、んぅ」ぴちゃぴちゃと音を鳴らしながら。


 大好きなキス、強い刺激。


 何かが込み上げてくる。


「んぁぁっ...!」


 ビクッビクッと体を反らし、ウチの中の切ないマグマの様に熱い何かが弾けた。


「ふふ、これからはご主人様をバカにしたりしてはダメよ?」


「...はーい」


「返事はワンでしょ?」


 何言ってんねん、そこまではやらへんぞ。ウチにだってプライドってもんがあるんや、かっこいいで通ってるウチがかわいい彼女にイジられてワンとか言うわけないやろうが!


「返事は?かわいく言ってみて?」とSっ気のある顔で言ってくる。


 くぅ、かわいい。それになんかゾクゾクするし、もしかしてウチ、喜んでる?ワンって言った後に褒められるのを、よしよしされるのを期待してんの?


「ワ、ワン」


「ふふ、いい子ね。よしよし」よく出来ましたとペットを褒めるかのように頭を撫でてくる。


 結局言われるがまま、されるがままになってしまう。


「ウチってMなんかな?」


「え?今更何を言っているのかしら。こんなにも私にかわいがられて喜んでるのに」


「そんな言い方せんでも...」


「ふふ、興奮したのかしら?」


「っ!...してへんし!」


「はいはい。そうゆう事にしておいてあげるわ」


 少し抱き合って休憩し、ご飯を一緒に作ったり、映画を見たり、ゴロゴロして休日を過ごした。

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