NEXCL 再世女神の超神譚Ⅱ セブンコードワールド
daidroid
第1因果世界 アントリューズ・オブ・リファーナム
旅の始まりは災いの如く
変異黄泉世界での戦いから1年の歳月が経った。
アリシア・アイは20歳となっていた。
思い返せば、まだ5年しか経っていないのだ。
ただの5年とは思えない程に濃密な時間を過ごした。
兵士になって、獣と戦い、神と戦い、神になってしまい、悪魔を倒し、記憶を失って騎士団長になり、娘もできたり、魔王と呼ばれ崇められ、最近になって双子の子供も息子、娘にした……と羅列すると他人から見ればきっと「何を言っているんだ?」と言えるような波乱万丈な人生に違いない。
5年前の自分はこんな人生になる等考えてもいなかっただろう。
5年前の自分は介護士で一生を終えるとばかり思っていたが、人生とは本当に分からないモノだ。
今の自分は「世界最強の剣士」とか「全ての剣の最果て」とか呼ばれるほどの剣士になっていた。
或いは「宇宙最強の生物」とも呼ばれている。
地獄にいても偶に次元の歪み等で現世に降臨した際に暴れて、何故かそう呼ばれるようになっていた。
そんなアリシアは今日も"戦神の蒼剣具"と”来の蒼陽”を携え、地獄で戦っている。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
地獄や他世界を揺らす程の咆哮が空間に木霊する。
空間は悲鳴を上げ、揺れる。
目の前には1200億光年を超える程の巨大な龍がいた。
漆黒の鱗を持ち、その姿は東洋の龍だ。
個人的には某伝説の緑色の長い蛇の様なボケモンの親戚に思える風貌だと思う。
そのものから放たれる敵意をアリシアは全身で受ける。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
巨龍は口を大きく開け、迸る程のエネルギーが奔流のように流れ出る。
アリシアはこの龍”ヘル・セイリュウ”と勝手に名付け、この技を”ブラスト・ノヴァ”とそれっぽい名前をつけている。
そもそも、地獄にはアリシア以外に基本、誰もいないので何を名付けようと自分の勝手と思っている。
そんな事はさておき、”ブラスト・ノヴァ”は極大魔術に類するいわば、WN圧縮砲であり、シンプルでかつ強力な技だ。
”ヘル・セイリュウ”ほどの相手ならその威力や射程、範囲等は規格外であり、その光線の直径は15兆光年、射程は地獄である2次元から3次元まで貫通可能であり、空間上の理論限界まで到達可能、威力は138億光年の銀河を1000億回ほど吹き飛ばす程度となっている。
ここまで来ると仮に光速で移動できても避けられない。
転移して逃げる手もあるが、高濃度のWNの干渉で”神時空術”の類は安定しない。
それに仮にここでアリシアが良ければ、アリシアの国である”アーリア王国”だけではなく地球とかも跡形もなく消えるだろう。
こんな事が最近の地獄では毎日のように行われており、アリシアは昨日もその処理に追われていた。
なので、昨日と同じように対応する。
アリシアは”来の蒼陽”を鞘に納め、抜刀した。
「絶剣!100式飛影斬!」
居合の型から入る必殺の斬撃が放たれた。
刀身から形成されたアリシアのWNの圧縮刃が”ブラスト・ノヴァ”に飛翔する。
刹那……圧縮刃は”ブラスト・ノヴァ”に激突するとまるでチーズでも裂くようにWNの圧縮砲を両断し、易々と斬り裂いていく。
龍はハッとなったような顔を僅かに覗かせたが、それも一瞬の事だった。
斬撃が駆け抜けたかと思うと龍の胴体を過ぎ去った。
それと共に龍の胴体が正中線から裂け、宇宙空間に落ちていく。
そして、まるで死んだウナギのように宇宙空間に漂う。
普通のヘルビーストは倒せば、霞となり消えるが、今回は意図してそのようにしなかった。
アリシアは”来の蒼陽”を鞘に戻して、宇宙空間を歩きながらゆっくりと死体に近づく。
そして、ドアをノックするように龍の頭部をトントンと叩く。
「中々、悪くない素材だね」
正直、目利きのアリシアからしてもこの龍の素材は良かった。
強大な龍だけあり、鱗も強靭で加工すれば、神術アイテムとしても高い品質を出すだろう。
ただ、元々”魔”を司るヘルビーストや偽神のアイテムはそのままでは使えない。
基本的に鎧を手に入れても、加工や改造は出来ない……と言うのが通例だったが、1年ほど前に革新的な技術が出来た。
アリシアを自分の髪を1本取り、龍に当てる。
「融合」
そのように唱えると髪の毛が龍に溶け、全身に行き渡る。
外見上の変化などはないが、これによりアリシアが加工できる形となった。
アカリ・ライトロードが齎した”神融合術”と言うモノであり、2つ以上のモノの概念や性質を合わせる事で別の性質に変異させる神術だ。
難しい説明をすると長くなので省くが、要は+*-=-になるのと同じで”魔”と”神”を混ぜれば(掛け算すれば)必ず”神”となるのだ。
この方法の革新的な所は従来なら、素材を10分の1にして使える素材にしていたのを10分の9のロス無しでフルに素材が使えるようになった事が大きい。
これによりアリシアが持っている偽神の鎧も欠損等をさせずに強化改造が可能となり、アリシアが最初に手に入れた”戦神の蒼輝具”も既に何度も改造を施され、”超神”となったアリシアに追従する性能を得ており、近年アーリア王国では兵士達にこの”戦神の蒼輝具”の量産モデルを配備する運びとなっており、これによりPSGを使ってネクシル等の機体に破格の防御性と性能向上と生存性を得る事で強化に繋がると期待されている。
流石にフルスペックでアリシアが使う”戦神の蒼輝具”を使うのは熟練度やWNの消費量的に一般兵士では非現実的ではあるが、それでも”超神”の鎧をデチューンする鎧だけあり、その辺の偽神にまず、殺される事がない程度の性能は確保されている。
「さてと……」
アリシアは”空間収納”に”ヘル・セイリュウ”の死体を収納した。
「何を造ろうかな……」
特に考えがあって、”ヘル・セイリュウ”の素材を手に入れた訳ではない。
襲って来た敵が偶々、良い素材だっただけに過ぎない。
具体的に何を造るか……までは考えていなかったが、それでも用途は多彩だ。
鎧にしても良い、剣や投擲槍を造るのも悪くはない。
ライフルを造るのも捨てがたい。
思い切って、機体を自作するのも良いかもだが、相棒である”アスト”がいる限りはアスト以外に浮気はしないと言うのがアリシアのポリシーなので機体と言う選択肢は基本的にない。
その”アスト”はと言えば、アリシアの魂の空間収納の中で”TS”稼働状態で世界に異変等が起きていないか見張っている。
この地獄ではアカシックレコードのデータを受信する事ができないので、それに匹敵する情報収集能力を持ち、かつ機械的な支援システムを搭載した”アスト”に頼むのが最適解だ。
時に”アスト”は地獄でアリシアが対応不可能な状況になった時にアリシアが搭乗する為に常に一緒にいる。
具体的にアリシアが対応できない存在となると……”ヘル・セイリュウ”10兆匹が集団で襲い掛かった時くらいだが、そんな事は滅多に起きない。
1度、2度起きたが、その際の余波で並行世界が何個かが消滅してしまった。
だが、それでも今でも複数の並行世界が存続しているのだから、頻度としては少ない方だ。
アリシアにとって、地獄での日々は新たな日常となりつつあった。
確かに世界一辛く、苦しい場所ではあるが、それでも己の限界に挑み続け、懸命に生を噛み締めるこの生き方が無性に好きであり、そう言った日常を新たに送っていたとも言える。
しかし……どんな時も災いとは意図せず、唐突に起きるモノであるとこの直後、アリシアは思い出す事になる。
『アリ……シ……ア』
「アスト?」
魂を通じてアストから連絡が入った。
だが、何か妙だった。
まるでノイズが奔っているかのように聞き取り難い。
魂を仲介している以上、そんな事は本来起きないはずなのだ。
それだけで少なからず、以上さが伺える。
『0次元……干渉……歴史改変……アリ……シアが消える」
魂を通じて分かる。
アストはかなり切迫しており、少ない言葉数で現状を伝えようとしている。
そして、アリシアはかなり頭が良いのでアストの断片的な言葉からアストの伝えたい内容を読み取る。
(0次元に何者かが干渉して歴史改変を行って……その結果、わたしが消える!!)
本来、そんな事は不可能だ。
0次元に干渉できる者はこの世界でアリシアとゼロだけだ。
だが、ゼロがアリシアを裏切るような真似をするとは思えない。
アリシアはこれでも”弟”だと今でも思っており、彼の事は信頼している。
だからこそ、それはないと確信している。
第一、もしこれがゼロの仕業ならゼロと繋がっているアリシアが気づかないはずがないのだ。
客観的に見てもアリシアにとってゼロとは、その気になれば片手間で滅ぼせる程度の存在なのだ。
彼はアリシア以外には滅ぼされないが、逆にアリシアなら滅ぼせる存在だからだ。
そこからして、この件にゼロが関与している可能性は皆無だと判断した。
(なら、一体誰が……)
そんな事を考えていると事態は急変する。
アリシアの体が薄れ始め、魂の量子情報が消失し始めた。
つまり、”存在”が消えかかっていた。
「仕方ないな……何者かは知らないけど、0次元に干渉できるなら……創造の書」
アリシアは”創造の書”を展開した。
アリシアは”創造の書”を使わなくても創造する力はある。
しかし、”創造の書”を使わない場合、どうしても創造物の完成度と次元が落ちてしまう。
最近、異世界転生を司る邪神が転生者に”創造”の能力を渡す事があるが、あんなモノはアリシアからすれば、劣化品に過ぎない。
彼らはお手軽に”創造”の力を行使し、最強ムーブを気取っているだろうが、実際その創造も未完成品に過ぎない。
アリシアほどの相手になれば、未完成品の創造物が発動した術を簡単に妨害したり、破壊したり、逆に魂に取り込んだその術式諸共、使用者の魂を破壊する等の芸当もできる。
創造とは、言う程単純なモノではなく”完成度””強度””次元””妨害対策”等々を緻密に計算し構築しないとならない。
それを即興で行うには相応の修練が必要であり、アリシアであっても練習した。
今回、行い創造は単純なモノではない。
本来、”不干渉次元”と呼ばれる0次元に干渉する神術の創造であり、アリシアの半0次元生命体としての特性を解析し、それを基に構成するのだ。
「術式構築……0次元干渉触媒……ゼロマテリアル形成……増幅増幅増幅……起源の改変よ!その無の時と共に止まれ!ゼロ・プレリュード!」
こうして、世界の改変は止まり、アリシアの歴史改変による存在消失も停止し、魂の量子情報も元に戻った。
「……なんとか、食い止めたけど……神力の消費が凄いな……」
今のアリシアの毎秒で発生するエネルギーは10*10^1466037736Wを優に超えている。
アカリと剣や拳をぶつけ合えば、新たな宇宙を軽く創造できるくらいの力だ。
その内、アリシアの”ゼロ・プレリュード”の発動維持には毎秒で神力生産量の90%以上を使っている。
そして、現状”ゼロ・プレリュード”を解除した場合、アリシアは歴史改変の影響で存在を消滅させないとならない状況にあった。
「それにしても……誰がこんな……」
「知りたいか?」
アリシアは咄嗟に後ろを振り向いた。
そこには顔にモザイクがかかった紅蓮のダイレクトスーツを着た女体の女が立っていた。
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