再び・滅亡したオーランド王国の国王と王女たちの物語 5 <完>

 結局、中年女からはそれ以上の情報を得ることが出来なかった。3人が空中に吸い込まれていった先の事は何も見ていないそうだ。


全く使えない女だ。


「よし!娘たちよ!これよりレベッカの行方を探す為、徹底的に聞き込み調査を開始するのだっ!何としても次の行く先を探すぞっ!」


3人の娘たちを見渡した私は叫んだ。


「イヤよ、何でこの私がそんなことしないとならないの?ここまで来るだけでどれだけ疲れたと思ってるのよ」


親不孝のエミリーは首を振った。


「は?冗談じゃないわよ。こんな暑いところで聞き込みなんかやってられないわ。私は絶対にやらないからね。エミリー、行きましょう」


エリザベスはエミリーに声を掛けた。


「ええ、そうね。お姉さま」


そして2人は連れ立って何処かへ歩き去って行く。


「お、おいっ?!2人とも、一体何処へ行くのだっ?!聞き込みはどうするっ?!」


するとエミリーが振り返った。


「何言ってるの?するわけ無いでしょう?私達は何処か涼しい木陰で休んでいるから勝手に聞き込みでも物乞いでもすればいいでしょう?」


そしてそのまま歩き去っていく。


「おい、エミリーッ!今、何と言った?物乞いだと?!良いか、私はもう働いておるのだぞっ?!二度と物乞いなどするものかっ!」


私は遠ざかっていく冷たい2人の娘たちに向って叫んだ…が、2人は振り返ることも無く、人混みに紛れて見えなくなってしまった。


「な、な、なんて冷たい娘たちなのだ…まるで氷のような娘たちだ…」


すると、ただ1人背後で佇む長女のジョセフィーヌが言った。


「いいのよ、お父様。妹たちの事は放っておきましょう」


「ジョセフィーヌ…」


「役立たずは足手まといなだけよ。私達2人で聞き込み始めましょう」


「よ、よし。そうだな…なら行くぞっ!我等2人でレベッカの足取りを掴む為に聞きこみをするのだっ!」


「ええっ!」


そして我等2人の聞き込み捜査が開始された―。




****


「何?ドラゴンの国へ行った金髪美少女?そんな人物知るかよ」


「ドラゴンの国の行き方を教えろ?知っていたらとっくに行ってるさ!」


「何?客じゃない?からかいなら帰ってくんなっ!」


聞き込みを初めてはや2時時間…少しも足取りが掴めない。



「何ということだ…ひょっとするとまだドラゴンの国にいるのだろうか?それとも既に何処かに行ってしまったか…」


頭を抱えて座り込んでしまった。


いいや、でも諦めては駄目だ。私が諦めればレベッカはあの変態家族の毒牙にかかってしまうかもしれないっ!


私はレベッカの父だ!娘を守るのが父親としての私の役割なのだっ!


「休んではいられないっ!聞き込みを再開しようっ!」


そして私は立ち上がった―。



**


 最後に行き当たったのは若い頃、占いを生業としている老婆だった。その占い師は神殿の片隅で占いの露店を開いていた。


「え?娘を探している?」


「ああ、そうなのだ。恐らく娘は侍女の家族に会いに行ったのだろうと思うが…その先が分からなくてな…」


私はいつの間にか、占い師の用意した椅子に腰掛け、客のようになっていた。


「それなら娘さんも大切な人に会いに行ったのかも知れないねぇ…」


老婆は遠い目をする。


「何っ?!大切な人…だとっ?!」


勢いよく椅子から立上った。


「う、うわっ?!何だいっ?!突然立ち上がったりして!」


驚く老婆。


そうだ…何故今迄気付かなかったのだ?

レベッカの大切な人…それはきっと生き別れとなった母親に違いない。


「お客さん。悩みが解決したならお代を払ってくださいよっ!」


老婆の言葉を無視し、私は指輪を見つめた。


レベッカはレイラに会いに行ったに違いない…。


「そうだ…間違いない。レベッカはレイラを探して旅をしていたのだ…なら我々の目的地は決まった…先回りしてレベッカをあの場所で待てばよいのだっ!ついでに我が妻レイラを迎えに行こうっ!アーハッハッハッハッ…!」


レベッカ!先回りしてお前をあの場所で待っているからな。


私の高笑いが空に響き渡った―。




<完>

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