いざ行かん!ドラゴンの国へ 12
「あの~…ところでなぜ、ここでティータイムをするのですか?」
私たちは空中庭園?のような場所にあるガゼボに移動していた。
「ああ、この場所は下界の様子が良く見える場所なのでな。余興を楽しむには最適な場所なのだよ」
丸いテーブルに向き合って座った長老様はニコニコしている。すると長老様のお隣に座っていたミラージュが痺れを切らしたかのように言った。
「そんなことよりもおじい様。私の父はどこですの?私はお父様に会う為にここへやってきたんですのよ?」
「ああ、そういえばお前は私の孫だったな?え~と、名前はミラーだったか?いや、ミレージュ?だったかのう?」
「ミラージュですわ。おじい様。それで?いつになったら私のお父様に会わせていただけますの?」
「ああ、じきにやってくるはずだからもう少し待っておれ」
何とも呑気な話し方をする長老様。案の定、ミラージュも同じことを考えていたようで…。
「ま、まぁっ!何って呑気なおじい様なのでしょうっ!私たちはレベッカ様と共に苦難の旅を乗り越えて…時にはモンスターと、時には悪党どもから追われるレベッカ様をお守りしながら、ようやくこの『ドラゴンパラダイス』までやってきたというのに!」
ミラージュはよほど『ドラゴン王国』というネーミングが気に入らなかったのか、勝手に改名して呼んでいる。しかも話もかなり歪曲しているような…?
まぁ、追われているのは間違いないのだけどね。
「レベッカさん、今のネーミング…お聞きになりましたか?」
私の隣に座るナージャさんがこっそり耳打ちしてきた。
「ええ、しかと聞いたわ」
「よほど、ミラージュさんは国名が気に入らなかったのでしょうね…」
「そのようね。勝手に改名しているもの。ほら、みて。長老様も驚いているわ」
見ると長老様は目を見開いてミラージュを見つめている。が、しかし…。
「素晴らしい!よし、本日から国名を変えることにしよう。今からこの国は『ドラゴンパラダイス』だ!」
「嘘っ!そんな簡単に変えていいのですかっ?!」
まさかの長老の発言に驚きだ。
「でも私も『ドラゴンパラダイス』のほうがよほどネーミングセンスがあると思いますけどね」
大雑把な性格のナージャさん。ミラージュとどこか性格が似ているような気がする。
「分かりましたわ。では『ドラゴンパラダイス』でも何でも構いませんが、それよりも早くお父様に会わせて下さい」
ミラージュはイライラしたように言う。
「勿論分かっておる。まずはお茶だ。ほら、ちょうどお茶を持ってきてくれたようだ」
長老さんの視線の先を見ると、こちらへワゴンを押しながら近づいてくる人物が見えた。
ワゴンを押しているのはどうやら子供のようである。
やがてその人物はどんどんこちらに近づき…私たちのいるガゼボに辿りついた。
「皆さん、ようこそおいで下さいました」
丁寧にあいさつをした子供は黒髪のとても美しい少年だった。人間の年齢に例えるなら10歳頃かもしれない。けれど、彼らは全員ドラゴン。外見上の見た目と実年齢は全く異なる可能性もある。
「随分遅かったな、セネカ」
長老様が少年に声を掛けた。
「はい、申し訳ございません。何しろ娘が会いに来たとなればそれなりの準備も色々ありまして…」
「「「え?」」」
少年の言葉に、私たちの声がハモる。
「ま、ま、まさか…?」
ミラージュが震えながら、セネカと呼ばれた少年を見る。するとたちまち少年の顔に笑みが浮かぶ。それはまるで天使のような微笑だ。
「お前が私の娘だな?うん…ヘレンにそっくりだ…会いたかったよ。私の娘」
そして、どう見ても少年にしか見えないミラージュのお父さん?は頬を赤く染めて笑みを浮かべた。
「「「ええ~っ!!うっそーっ!!」」」
…私たちの声が全員ハモったのは、言うまでも無かった―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます