いざ行かん!ドラゴンの国へ 2
「それではジャスパーさんがこの漁船…もとい、観光船の船長なのですね?」
「ああ、そうだ」
言いながらジャスパーさんはいちいち、その筋肉を見せつける為か、ポージングを取る。その度に大胸筋をピクピクさせるものだから気持ち悪いったらありゃしない。
「すみません、それでは私達もこのぎょ…観光船に乗せて貰えますか?」
「ああ、いいぜ」
そんなやり取りをしているうちに続々とこの漁船…ではなく観光船に乗り込んでくる人々。
「本当に私達も乗せてもらえますよね?」
念の為に再確認した。
「ああ、いいぜ」
またまたジャスパーさんは大胸筋をピクピクさせる。全く気持ち悪いったらありゃしない。露骨に嫌そうな目で見ると、ジャスパーさんは何を勘違いしたか、気分を害するようなことを言ってきた。
「お?よく見れば随分べっぴんな姉ちゃんだな?そんなにこの俺の大胸筋が気に入ったのかい?いいぜ、あんたにだけ特別だ。ほら、好きなだけ触りな?」
言いながら大胸筋をピクピクさせつつ私にじりじり近づいてきた。ジャスパーさんは胸にオイルでも塗っているのか、テカテカ光る大胸筋を見せつけて来る。
うえええっ!!気持ち悪っ!
「い、いえっ!結構ですっ!」
するとそこへサミュエル皇子がジャスパーさんの前に立ちはだかると言った。
「おいっ!お前っ!俺のレベッカに気安く近付くんじゃないっ」
私は俺のレベッカになったつもりはありませんけど…。
「ええ、そうですわ!大体レベッカ様は脳筋バカ男は好きじゃないんですのよっ!」
ミラージュが叫ぶ。ちょ、ちょっと!能筋バカ男なんて一言も言ってないでしょう?!
「ああぁ~ん…何っだとぉ~っ!!」
ジャスパーさんがすごんでくる。
「何だ、やる気か?」
「いつでもかかって来やがれ。ですわ」
対峙するサミュエル皇子とミラージュ。そこへナージャさんがロミオとレティオを連れて漁船に乗り込んできた。あ、観光船だったっけ。
「はーい、失礼しますよ」
ナージャさんはヒヒヒンといななくロミオとレティオを連れて乗り込んできたのを見てジャスパーさんが大げさに喚いた。
「おわぁあっ!!何だよっ!何っで馬を乗せて来るんだよっ?!」
「あら?いけませんか?」
ナージャさんが不思議そうに尋ねる。
「さっき、私達も乗せてもらえますよね?って尋ねたら、『ああ、いいぜ』って答えましたよね?」
私はジャスパーさんとの会話を復唱した。
「ああ、言った。確かに言ったが…馬なんて許可した覚えは無いっ!」
「それはおかしいでしょう?ロミオとレティオは私達の大切な仲間ですよ?家族も同然なんです」
「あん?何だ?誰だ、ロミオとレティオって?」
ジャスパーさんが首を傾げる。
「ほら、こっちがロミオでこっちがレティオです。」
ナージャさんが紹介する。ちなみにこの2頭はそっくりなので見分け方にコツがある。まぁ、私とミラージュは彼らと会話が出来るから問題ないけど。
「くっそ~…確かに乗せていいって許可出しちまったからな…仕方ない!乗せてやるよっ!だがもうこれで定員オーバーだから出港するぞっ!」
ジャスパーさんが悔しそうに言う。おおっ!まさか本当に乗せてくれるとは!やはり彼はミラージュの言う通り、能筋バカ男なのかもしれない。
「よーしっ!出港だっ!」
ジャスパーさんが舵を握りしめ、汽笛を鳴らした。
ボーッ…!
そして観光船は『ユーロス』の港を出向した―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます