レベッカ一行の世界漫遊の旅 3 (ノマード王国の旅 28)
カランカラン
酒場のドアを開けて、私達はナージャさんとの待ち合わせの酒場へとやってきた。店の中は結構な人で賑わっておリ、中でもカウンター席には人だかりが出来ていた。
「あら?ナージャさんが見当たらないわね?」
私は店内をキョロキョロ見渡した。
「ええ、そうですわね。確かに待ち合わせ場所はこの酒場でまちがいないはずですのに」
するとサミュエル皇子が言った。
「そうだ!ミラージュ!君はドラゴンで鼻が利くだろう?彼女の匂いは感じないかい?」
「サミュエル皇子、私は犬ではありませんわよ?大体、様々な食べ物と飲み物、それに汗臭い体臭が入り混じっているのでナージャさんの匂いなどかき消されてしまいますわ」
「「うっ…」」
私とサミュエル皇子はミラージュの言葉に気分が悪くなり、胸を押さえてしまった。知らなかった…ミラージュがそこまで匂いに苦しめられているとは思わなかった。
「あら?どうされましたか?」
しれっと言うミラージュ。
「ミラージュ…」
「君は苦労していたんだな…」
私とサミュエル皇子はミラージュの肩に手を置いて頷きあったその時、カウンターでざわめきが起こった。
「おおっ!すっげー!」
「当たってるよ!姉ちゃん!」
「流石占い師だな!」
「え?占い師?」
私はカウンターの方を見た。相変わらず人だかりだが、先程よりも人々が興奮している。
「ひょっとしてあの人だかりの中にナージャがいるんじゃないかい?」
サミュエル王子が言う。
「ええ、間違いなさそうですわね」
「ひょっとして占ってあげているのかしら?」」
「よし、あの人だかりの場所へ行ってみよう」
サミュエル皇子の言葉に私とミラージュは頷き、3人で人だかりが出来ているカウンターへ向かった。
すると…。
「さぁ!次は誰が占って貰いたいのかしら?今ならおおまけにまけて、占い1人につき、銅貨5枚で占ってあげるわよ!」
ナージャさんはテーブルの上に水晶玉を置いて、ワインを飲んでいる。
「うわっ!また飲んでるわ!」
人混みに紛れながらナージャさんの様子を観察しながら、私は驚いてしまった。こっちはもう今日はお酒は勘弁してほしいくらいなのに。
「彼女は完全な酒豪だな、間違いない」
サミュエル王子は妙に感心している。
「ナージャさんは恐らく身体の半分はアルコールで出来ているのでしょうね」
ミラージュは納得したかのように頷いている。
でも…私は思った。
ひょっとするとナージャさんはこれから路銀を稼いでくれるのではないかと―。
****
それから約1時間後―
「フフフ…いや〜儲かりましたよ、皆さん」
麻袋に銅貨をジャラジャラさせながらナージャさんが嬉しそうに私達のテーブル席へとやってきた。
「え?ひょっとして私達がここにいること、気がついていたの?」
早めの夕食を食べていた私達の元へナージャさんがやってきた。
「あら?お食事中でしたか?美味しそうですね?」
ナージャさんが羨ましそうにテーブルの上に乗ったオードブル料理を見ながら言う。
「勿論、ナージャ。君の分だってちゃんとあるからね」
サミュエル王子に言われて、にっこり笑いながらナージャさんは空いている席に座ると朝袋をドンとテーブルの上に置いた。
「皆さん。たった2時間で銀貨5枚分の稼ぎはありましたよ!今夜はここで飲み明かしましょう!」
当然私達の返事は…。
「「「却下!」」」
だった―。
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