レベッカ一行の世界漫遊の旅 1 (カタルパ編 9)
「「「え・・・?」」」
エプロン男の話を聞き終えた私は激しい怒りが込み上げてきた。
「酷いっ!そんな・・・得体の知れない魔物が・・しょ、触手で触れた香辛料を使った料理を仮にも客に提供するなんて・・一体何考えているんですかっ!!」
私は立ち上がると激しく抗議した。
「ああ、そうだ!レベッカの言う通りだっ!よくも貴様ら・・俺達に得体の知れない食べ物を食べさせたなっ?!この外道めっ!」
サミュエル皇子は腰から剣を引き抜くとブンブン振り回した。うわっ!危ないっ!
「ええっ!許すわけにはいきませんわっ!この店を破壊しないと私の気は収まりませんっ!」
興奮したレベッカはとうとう、軽く超音波を発動してしまった。
キイイイイイーンッ!!
辺りに響き渡る金属音。そこにいる人々はサミュエル皇子を含め、耳を押さえてのたうち回り、窓ガラスはバリンバリンと音を立てて割れてゆき、テーブルの上に置かれた水の入ったグラスは木っ端みじんに割れて水が辺りに飛び散る。
流石にこれはたまらない。
「ストーップ!!ミラージュッ!!ストップよっ!!」
私の声にようやく落ち着きを取り戻したのか、ミラージュは我に返ると私を見た。
「すみません・・・レベッカ様・・私、またやってしまったみたいです・・。」
シュンとした様子でミラージュは言う。でも超音波を発動した事でミラージュの気は収まったようだった。
「いいのよ・・ミラージュ。誰にでも・・・間違いはあるわ。」
私は床に伸びたハゲマッチョとその手下達・・そしてサミュエル皇子と女将さんにエプロン男を眺めると言った。
「ねえ・・・ミラージュ。私に考えがあるのだけど・・・。」
「はい、何でしょう?レベッカ様。」
「どうせ皆床の上に伸びているし・・いっそのこと私達だけで魔物退治にいかない?魔物退治に同行者がいると私達の力を遺憾なく発揮する事が出来ないじゃない。」
「レベッカ様・・・私も今、それを考えていた処です。」
ミラージュはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。流石は私の侍女兼、相棒ミラージュ。私達は息がぴったりだ。
「そうとなれば、早速行きますか?」
「ええ、でもその前に・・・。」
私は周囲を見渡すと言った。
「まずはこの状況を何とかしないとね?」
そして私は『力』を使って、部屋の時間をミラージュが暴れる前の時間に戻し、元通りにした。そしてついでに私はこの村の時間を止めた―。
「うわあ・・・やっぱり何度見ても異様な光景ですね。」
店を出るとミラージュは目を見張ると言った。
村の中は全ての時が止まっていた。人々はまるで人形の様にピタリと止まっているし、中には走っていたのだろうか、空中に浮かんでいる人もいる。空を飛ぶ鳥は空中で止っているし、何故かお皿も空中で止っている。・・・誰かが投げたのだろうか?
「ミラージュ。確か魔物は森に住んでいると言っていたわね?」
「ええ、そうですね。」
「なら、森に行ってみましょう。ミラージュなら魔物の気配が分るものね?」
「ええ、お任せください。レベッカ様。魔物の1匹や2匹・・レベッカ様のお手を煩わす事も無く退治して見せますよ。」
何とも頼もしい事を言ってくれるミラージュ。
「よし、そうと決まれば・・森を目指して出発よ。ミラージュ!」
「はい、レベッカ様!」
ミラージュの身体が一瞬眩しく光り輝くと、そこには青く光り輝く鱗を持つ、ドラゴンの姿になったミラージュが現れた。
< さあ、背中にお乗りください。 >
ミラージュの声が頭の中に響いて来る。
「ええ、そうね。」
ミラージュの背中に乗ると私は言った。
「さぁ!出発よ!ミラージュッ!」
私の言葉にミラージュが翼を広げてフワリと浮かび上がった―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます