32-2

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「ククク……クハーハッハッハ!」


手の甲を額に当て、セカンドはわざとらしい高笑いを上げた。


「オレを討つだと?ザコが一匹から二匹になっただけで、本当にそんなことができると思ってんのか?ああ!?」


セカンドは後ろに手を伸ばすと、見えない何かを投げつけるように腕を振りかぶった。途端、猛烈な風がこちらに吹き付ける。


「ぐうっ……!」


さすがに風は避けられん。某とフランは、風に煽られもんどりうった。


「馬鹿が!ゼロはいくつ集めてもゼロなんだよ!」


そのまま二人ごと刺し貫こうと、セカンドが風に乗って、槍と共に飛んでくる。


(桜下殿!)


耳元でエラゼムの声が響く。ここで共倒れするわけには行くまい!

某はフランの肩に手を置くと、彼女を空高くへかち上げた。骨だけの体は軽く、造作もないことだ。即座に剣を構えると、剣の腹に手を添えて迎え撃つ。

ガキィン!ギャリギャリギャリ!激しいつばぜり合い。剣からは紅色の火花が散る。


「どうしたどうしたぁ!仲間が増えて強くなったんじゃないのかよ!」


セカンドは突進の全エネルギーを槍に掛けてくる。これは……少しでも力を抜くと、獲られるのはこちらの方だ。いなしや受け流しといった小技でごまかそうとすれば、その瞬間心臓を穿たれる。


「おらぁ……!まずはテメェから殺してやる……!どうだ、怖いか?えぇ!」


セカンドは狂気を顔に張り付けて、ギラギラと目を光らせる。自分の勝ちを疑っていない、絶対的な強者の発言。しかし……今の某には、分かる。


「違うな……」


「なに……?」


「恐れているのはそちらだろう。セカンド」


セカンドの顔から一瞬、表情が消えた。


「は……ハハハハァ!苦し紛れに、何を言い出すかと思えば!くだらねえな!」


「いいや。貴様は、恐れていたはずだ。勇者の力を。某たちの力を、な」


「チッ、この……!」


今だ。上空に飛び上がっていたフランが、セカンドの真上へ落下してきた。フランは重力の加速も利用して、鉤爪を断頭台のごとく振り下ろす。ギィン!


「ぐあっ……!」


その一撃は、セカンドの鎧を砕くまでは行かなかったものの、数瞬だけよろけさせることには成功した。その隙に槍をはじき飛ばし、さらにきゃつに一太刀を浴びせる。


「くそっ……!うっぜぇなぁ!何度やっても無駄だろうが!テメェの剣じゃ、傷一つ付かねーんだよ!」


まさしくその通りで、セカンドは怪我一つ負っていない。そのまま槍を振り回して、こちらに襲い掛かろうとする。だが、そろそろ効いてくるはずだ……

がくんっ。


「なっ……!?」


来た!

セカンドが、つまずいた。今まで息切れ一つ起こさなかったセカンドが、急に力が抜けたかのように、かくっとふらついたのだ。


(逃さぬよう!)


「おぉ!破あぁ!」


すかさず二の太刀を浴びせかける。だが、それ以上の追撃は入れさせてはくれなかった。素早く後ろに下がって距離を取られる。


(惜しい。常人であれば、あそこでもう二発は入れられていたでしょう)


「敵も尋常ならざると言うわけだ。しかし……ようやく効果が出てきたようだな」


某の剣の、本当の効果が。セカンドは何が起こったのか分からないという顔で、自分の足を見つめている。


「何が起きた……?いや、なにもされちゃいねえ。どこも切られていない……だったら、なんでだ!」


「どうした。さっきまでの余裕はどこに行った?」


某が紅色の刀をびゅっと振ると、セカンドの目が細くなった。


「……そうか。テメェの剣、なんかカラクリがあるな。傷も付けられねえ攻撃を、無駄に繰り返すわけがねえ」


なかなかいい勘だ。どのみち、ここらが潮時だろう。これ以上隠す必要もない。


「その通り。某の剣は、肉を絶たず。代わりに魂を斬るのみ」


「魂だと……?まさか、テメェ……オレの魔力を!」


ご明察。某の剣は、魂の力……魔力を斬る。これが、エラゼムの魂と融合して得た、新たな力だ。


「そうか、そういうことか……分かったぞ!だから、オレの槍も折れんだな。要は、さっきと同じだ。オレの魔法を、一時的に消すことができる。そしてオレを直接斬れば、魔力を削る……こんなとろか」


きゃつは一人で納得して、ぶつぶつとしきりに呟いている。


「だったら、もう同じ手は食らわなけりゃいいだけだ……チッ!結局姿が変わっても、やってることは同じじゃねえか。一つしか芸の無いクズがよ!」


「そうとも。某にできることはこれのみ。そして貴様は、これまで四度斬られた。あと何度斬れば、貴様の魔力は底となろうな?」


魔力が底を尽きれば……当然、きゃつの鎧は消えてなくなる。あの鎧はあくまで、きゃつの魔法によって生み出されたもの。


「何度でも斬ってやろう。貴様が力尽きるその時まで!」




つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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