31-4

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「俺は……自由が、欲しい。誰にも縛られない、とびきりの自由が」


俺の答えに、セカンドは一層笑みを深くした。


「はんっ、そうだろ?やっぱお前は、オレと同じだ」


セカンドが差し出した手を、こちらに向ける。傷も、しわもない。きれいな、少年のような手だった。俺はため息をつく。


「だけどな……やっぱり俺、あんたが正しいとは思えないんだ」


「……あん?」


セカンドの表情が、ぴりっと凍り付いた。


「あんたのやってることは、自由じゃないよ」


「おめー、何言ってんだ?」


「自由な奴が、こんなところで、こんなことしてるわけないだろ」


「バカかお前?自由だったからここに来れたんだ。オレがこうしてんのは、テメーらと違ったからだ」


「違うよ。あんたのやり方が間違ってたから、こんなことになったんだ」


セカンドは、俺の言っていることが何一つ理解できないという顔をしている。だけど、これくらい分かりそうなもんだがな……それこそ、俺にだって分かるくらいなんだから。


「自由な奴が、こんなに大勢につけ狙われるのか?大軍を差し向けられるのか?そんなはずない。あんたは、自由にやろうとして、結果的に不自由ばかり取っちまったんだ」


「……黙れよ」


「あんた、本当にこれがしたかったのか?こんなことが?だって俺、正直この戦争で、楽しかったことなんて一つもないぜ。あんたの言ってることは、矛盾してるよ」


「黙れっつってんだろカスが!!!」


突如突風が吹き付け、俺を薙ぎ倒した。地面に強かに打ち付けられて、心臓が止まりそうになる。


「かっ……!」


「ほらよ、おめーはザコだから、そうやって這いつくばることになるんだ。どっちが自由だって?偉そうに説教垂れやがってよ」


セカンドはつかつかと俺のもとまでやってくると、俺の胸を踏み付けた。


「ま、そんなにお望みなら止めやしねえさ。テメェが信じる連中と同じ道を辿れよ」


セカンドが腕を伸ばすと、奴の手に黒い炎が集まっていく。それはやがて、黒い輝きを放つ槍となった。後ろの方で叫び声が聞こえた気がして、俺はなけなしの力を振り絞って叫ぶ。


「来るな!俺の戦いだ!」


「あ?おーおー、カッコいいねえ」


セカンドはニヤニヤ笑いながら、槍を突き付ける。


「お前、一億分の一でも、勝てると思ってたのか?オレがこの姿になったら、もう誰だってオレには勝てねーよ。オレが、この世で最強なんだからなぁ」


ぐりぐりと、俺に乗せた足を食い込ませてくる。肺が潰されて、息もできない……


「で、テメェは満足か?王サマのために死ねてよ、ん?」


くそ……!これだけは、はっきりさせてやる。


「……王のため、じゃねーよ」


「あ?」


喉が震える。息ができなくて、ほとんど声が出せない。それでも、これだけは言ってやる。


「俺がしたいから……って、いつもなら答えるとこだけどな……」


「うっせ。興味もねーわ。とっとと死ね」


セカンドが槍を振り上げる。そろそろ、幕引きのようだ。だけど、後悔は残さない!


「仲間のためだ!俺を主と認めてくれたみんなのために、俺は戦う!それで死ぬことになってもだ!」


短剣に魔力を込める。俺はありったけの力を振り絞って、魔力の剣を振り回した。セカンドは俺の紅色の剣にぎょっとして、一瞬力を緩めた。俺は死に物狂いでもがいて、何とか奴の足から抜け出す。


「はっ、それが何だ!コケ脅ししやがって!」


その通り、これが奴の致命傷になることはないだろう。だけど、最期まで!


「戦ってやる!こい、セカンドッ!」


「上等だァ!死ねやカスがああああぁぁぁぁぁ!!!」


漆黒の槍の切っ先が、俺の心臓目掛けてまっすぐ突き進んでくる。俺は震える腕に力を籠めると、大きく振り上げた。




ガキィン!


「なっ……なんだ!?」


セカンドが声をあげるのと同時に、俺も驚きの声をあげた。セカンドは、槍を弾かれたから。そして俺は、自分が槍を弾いたからだ……だけど、意味が分からない。俺は、自分の腕をそういう風に動かした覚えはない。けど、“腕が勝手に”動いたんだ。


「なんだ、これ……」


どうして、こんなことが……?その時。俺の耳元で、ガシャリと、金属同士が擦れるような音がした。


(―――桜下殿。助太刀いたす―――)


え……

そんな、馬鹿な。でもこの声は、確かに……

そして、俺の目の前に。白く輝く鎧を身にまとった、熟練の騎士が現れた。


「………………エラ、ゼム…………」




つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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