第100話 理由
何とか魔物たちから逃げ仰せ、今休憩地点にいる。ここもアイン村と同じように忽然と魔物たちが姿を消す安全地帯であった。そして前に言ったような状況に陥っているのだ。
「何でこの人たちと一緒に旅をするんですか?僕は納得できません。」
「なんだよ。一人だけそんなにムスッとして。飯がまずくなるじゃねえか。そんなに魔法を使うものは悪か?オレはそうは思わないね。」
モルテが言った言葉が聞こえていたのか駄々をこねるようにアシオンはそんなことを言った。
「アシオンが気にしなくても、周りには気にする人は少なからずいるの。わかりなさい。」
メイユはアシオンに諭すように言った。なんだか立場が逆な気がする。
「へっ。お前だって魔法使ってたじゃないか。それにそうだとしても、オレには関係ないね。」
ムスッとしているやつが一人増えた。てっきりアシオンなら笑い飛ばすと思っていたが、そうはならなかった。アシオンにとって地雷だったらしい。それにメイユが魔法を使っていたことは気が付かなかった。
「ちょっとモルテ。あっちで話そう。」
「わかりました。」
モルテはあっさりと了承する。モルテも何か俺に言いたいようだ。何を言われても動じないようにしなくては。ここで向き合わなければ後悔するどころでは済まないだろう。
「あと、頼むな。メイユ。」
「わかっています。この馬鹿に言って聞かせます。」
「ははっ。」
なんだかメイユの方が親なのではないかと思えてくる。この時そんな風格が感じられた。それにモルテよりいや、俺より年上にさえ感じた。下手をしたら、アシオンよりも。まあ、それはないか。アシオンが父親だとすると、それはおかしい。変な思いを巡らせてしまったか。そんなことより、今はモルテのことが先決だ。さてどうしたものか。
あの二人と見えなくなるくらいまで離れたところでモルテが止まる。辺りは何もなく風だけが流れていた。モルテが小声で話そうが全部俺のところに流れてきそうだ。その静けさの中先に言葉を発したのはモルテだった。
「率直に言います。僕はあの二人と一緒に旅をすることに反対です‼」
「落ち着けって。冷静になって話そう。」
「何でビスさんは落ち着いてられるんですか⁉あの魔物の大群もしかしたら、あの二人の差し金かもしれないんですよ。足止めのために魔物を発生させた、その可能性があるんです。」
モルテの言い分には無理がある。なぜなら、あの二人は魔物を待ち伏せさせる必要がない。何かしらの理由で送れたとしても、焦る必要などどこにもない。あの二人はいつでも俺たちをどうにかできるのだから。
それに俺は行先を告げている。追ってくることなど容易いだろう。それにもしモルテの言うことが本当であるならば、俺たちに攻撃せずなぜ魔物を攻撃した?俺たちを仲間だと信じ込ませるため?そんなややこしいことをするだろうか。それをモルテはわかっているだろう。何かがモルテに無理矢理理由を作らせたのだと思う。
「アシオンが魔法を使うからか?」
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