第67話 苦悩と願い


俺はその言葉を聞いて足を進めた。これ以上は本当に聞いてはいけないことだとそう感じたからだ。モルテの方を見ると何か考え込んでいる。迷っているのか。ただ、もうここまで来たのだ。もう止まることはできない。



「モルテ。迷うな。」



そう一言だけ告げた。



「わかってますよ。わかってますけど・・・」



俺はそのあと何も言葉を掛けなかった。整理する時間も必要だろう。もし、モルテが寸でのところで断った場合、俺は一人でも探しに行こうと考えながら玉座へと向かった。






玉座に入るとすでに王様が座って待っていた。



「ほう、そうか。そうなったか。」



王様はモルテの方を見てそう言い放った。王様はどちらにかけていたのか。まあ、どちらにせよ、変わることはないのだが。



「お待たせして申し訳ありません。」



「いや、そんなに待っておらんよ。それに、ここまで来るのに時間がかかった理由もわかっておる。あまり気にするな。・・・さて、それでモルテにはどこまで話しているのだ?」



「具体的にはまだ何も話していません。旅に出る了承は得ましたが、他の者の目もありましたので話していませんでした。ここで話すのが得策と思いましたので。もし、時間をいただければ俺から話します。」



王様は間髪入れずに答えた。



「よい。その責任は私が負おう。」



王様は俺からモルテに視線を変え話始める。あの時の俺に問うたように。



「モルテよ。今から話すことは他言無用だ。もし今から話すことを聞いて、気持ちが変わったら言ってくれ。受け入れよう。・・・それでいいな?ビス。」



王様は俺の方を一瞥した。俺はすでに答えが決まっていたのでスムーズに進む。



「はい。」



「ただ、そんなもの抱えきれないというのであれば、今の内だぞ。話を進めてよいか?」



モルテもさっきの出来事で何が起きているかなんとなく把握はしているだろう。モルテは何と答えるのだろうか。正直に言えば聞いたうえで着いてきて欲しい。


モルテの返答は頷くであった。言葉には出さず、ゆっくりと頭を前後に一回振ったのだ。声が出なかったのか、それともわざと声を出さなかったのか。



「うむ。お前の気持ちは分かった。では話そう。」



本来であれば王様に対して失礼に値するだろう。ただ、モルテの目は覚悟を決めたようにまっすぐに王様を見つめていた。それを鑑みてか王様は何も注意はしなかった。




王様は話し始めた。

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