第60話 決断


「ビスさんもお風呂入ってきたらどうです?さっぱりしますよ。」



俺は一瞬入ろうと思ったが、どうせまた汗だくになると思い断る。



「いや、今はいいや。終わってからゆっくり入るよ。」



「そうですか。・・・それより剣なんて出してどうしたんですか?まさか⁉」



モルテは驚いた表情をしているがなんだか嘘くさい感じがする。



「お前、聞いてたな。」



「ははっ。ばれましたか。というか同じ部屋の中なんですよ。あんな大きな声聞こえないわけないじゃないですか。まあ、はっきり聞こえたのは最初の方だけでしたけど。」



ああ、だからベルがやっぱりと言っていたのか。納得が言った。



「ベルを引き留めるの大変だったんですからね。」



「済まない。ありがとう。」



「それよりいつ行くんですか?」



「ん?ああ、ベルが寝終わったあとに行こうと思ってた。それでいいか?」



モルテはもう覚悟が決まっているのか。まっすぐ俺を見つめ答えてくる。



「僕はいつでも大丈夫ですよ。ビスさんがそれでいいならそれで。」



それだと俺は覚悟が決まっていないみたいじゃないか。まあ、今は何もいうまい。それよりも考えなければいけないことがある。モルテに相談するわけにはいかない。俺一人で決めなくては。



「じゃあ、決まりだ。」



髪を乾かし終わったのかベルとリベが戻ってくる。



「ベルも混ぜて、混ぜて。」



どうやらベルは俺たちが遊んでいるように見えたらしい。



「ダメよ、ベル。お兄ちゃんたちは忙しいの。それにベルはもう寝る時間よ。」



「ええ、まだいいじゃん‼」



「じゃあ、横になるだけでいいから、ほらベッドに入って。」



「うん。わかった。」



ベルは納得いかない様子でしぶしぶリベの言う通りにする。そのあとの光景がすごかった。ベルは遊びたくて眠気と必死に戦っていたが、リベの叩くリズムが心地良かったのかすぐに眠りについていた。正直もうちょっと考える時間が欲しかった。俺が下を向いているとリベが小声で声を掛けてくる。



「だから言ったじゃない。”時間はないわよ”って。」



「いや、言いましたけど。ここまでないとは思いませんでしたよ。」



「ふふふっ。二児の母を舐めるんじゃないわよ。」



リベは勝ち誇った顔をしている。別に舐めていたわけではないのだけれど。



「で、どうする?もうちょっと考える?」



その必要はない。さっきので俺の答えは決まっていた。



「いえ、大丈夫です。もう決まりましたから。・・・」




俺は出した答えを告げ、重い腰をあげハウの待っている部屋へと足を進めた。

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