エピソード1:エデンの煙-7
店に戻ったのは丁度日付が変わった頃、日曜は翌日から仕事の人間が多く客の引きが早いので、店内は落ち着き始めていた。裏口からバックヤードへ入ると、沙良が事務スペースの椅子で休憩しているところだった。
「おかえり。早かったのね」
「まあな、収穫もしっかりあったぞ。そっちはどうだった?」
首尾よく運んだという意味だろうか、普段見せないようなくしゃくしゃにした笑顔で返事をされた。
「ん……、どうした?」
反応を間違えたようだ、沙良は少し顔が赤くなっている。怒らせたのであれば非常にマズイ。不機嫌になった沙良はなかなか面倒なのだ。
「な、なんでもない!こっちも、藍ちゃんがちゃんと聞いてくれたよ」
「そりゃ良かった」
セーフだったのだろうか。とにかく上手くいったのであれば問題ない。
沙良が記憶した会話の内容を聞き、こちらの情報と掛け合わせる。どうやら、もう殆どピースは揃っている。もう一つだけ確認を終えたら、今度はこちらが仕掛ける番だ。
最後の一組が退店し、接客していた藍と菜々がバックヤードに入ってきた。
「二人ともお疲れさん」
「あ、オーナーだ!なんでいるんですか?」
「いや、ここ俺の店な」
菜々の頓珍漢な質問はとりあえず流し、沙良、藍、菜々に今回の事件概要と自分の推測を話しておく。関わってもらった以上、説明する義務があると思ったからだ。指示した通りに動いてくれるのは非常に有難い事ではあるものの、その意味や顛末を知らされずに消化不良のまま事を終える程ストレスな事はない。背中で語れだの、言わずとも察しろだの時代遅れの考えだ。その内疑念が生まれ、いずれ信用も無くしてしまうだろう。しっかり言葉にして伝える事が大切なのだ。
「そんで菜々、2つお願い聞いてくれるか?」
簡単な確認作業と、もう一つは後日指示を出す事を伝える。
「アイアイサー!」
こいつ、酔ってやがるな………。一抹の不安を抱えつつも、俺は俺自身の役割と実行スケジュールを確認する。
翌日、菜々から最後のピースである川越さんの情報を受け、行動開始。水曜にはもう一つの指示を出し、木曜日その結果が報告される。あとは下準備を進め、決戦は予想通りの金曜日になった。
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