笑う写真
小学生の頃、いつも元気でハツラツとしていた女の先輩がいました。
確か、年齢は三つほど上だったのですが、イマイチ顔は思い出せません。
年下の男子たちにからかわれても、いつもニッコリと笑顔を見せる先輩だったので、その笑顔だけは印象的でした。
学校の4階から落下して亡くなるまでは。
卒業アルバムの作成中に、一緒にいたメンバーと悪ふざけをして窓の外に出たそうです。
窓の外側には20cm程度のコンクリートがあり、そこを足場にしていたそうなのですが、あろうことか、悪ふざけをしていたメンバーの一人が窓をしめてしまったそうです。
バランスを崩したのか、急に持ち手を奪われたからなのか……。
いずれにせよ、彼女はそこから落下して地面に叩きつけられ、息を引き取りました。
つい最近まで元気に話していた彼女を見かけていた私は、その呆気ない生涯の閉じ方に放心するしかありませんでした。
それからしばらくして、噂話が立つようになりました。
「ねぇ……知ってる?」
「あぁ……あの話……?」
「そう、……さんの写真の話」
「俺、怖いから神社に持って行って焼いてもらった」
「私も、そうしようかな……なんだか……」
「――どうしたの?」
「ぁぁ、――くん。この写真見た?」
「どの写真?」
「この、始業式で撮った集合写真……」
「まだ見てないけど、何かあったの?」
「ほら、ここ……」
「……? 普通の集合写真だと思うけど」
「よく見て。普通さ、集合写真て最初は真面目な顔して撮るよね?」
「……」
「……さんの顔……なんでこんなに――笑っているの?」
その集合写真の彼女の表情は、とても笑顔でした。
亡くなった方なので、こんなことを言うのは失礼ではありますが……。
ただ、なんと言うか……。
とても表情が、歪んでいるのです。
彼女は今でも自分が亡くなったことに気づいていないのでしょうか。
なんとなく、あの先輩の笑い声が、耳元で聞こえたような気がしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます